明日泥棒 (ハルキ文庫 こ 1-20)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 63
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894566279

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  • 【「おーい、でてこーい。」と聞こえる日がすぐそこまで】

    最後に問いかけられた台詞に対して私は、なんと答えるだろうと雨の日の朝。飲んでいたコーヒーがぬるくなるまでの間、うんうんと考えてしまった。そもそも今、人間が作り出している文明とは一体なんなのだろうか。戦争が盛んだったあの頃と比べても、時代が令和になっても平和とは程遠い場所にいるように思えた。人が人を殺さない。人が環境を壊さない。人が地球の明日を奪わない。目指すべきものはこんなにも簡単にわかるのに、それを具体的に達成する選択を世界はそして個人は拒絶している。昨今サスティナビリティという言葉が蔓延しているが、お終いにはマイナスイオンと同じようにただの流行りになりさがるのではと思ってしまう。それはあまりにも悲しすぎる。

    ただ、終わることはそんなに悪いことなのだろうかとも私は悩んだ。私達はよく終わらない物はないと、死は平等だという。地球もまたいつか死ぬと心のどこかで理解しているのではないだろうか。確かに地球の死は我々の死と直結している。でもそれもまた人の言う摂理なのではないかと。細く長く生きろと本書にはメッセージが書かれているように思ったが、果たしてそれが素晴らしいことなのか私は疑問だ。今世界が掲げている持続可能な社会とは、再生と破壊のバランスが均等で無限に続く社会のことではないはずだ。だってそんなことは、誰にもわからないし誰にもなしえない。もちろん、過度の破壊行為を推奨するという意味ではない。ただ、長く続けばそれでいいという話でもないという点でも、作中の最後の問について考えたいと思った。

    最初はダラダラとした印象でページをめくるのが億劫だったが、話の意図が見えてきた中盤から終盤まで一気に読み終えてしまった。あなたなら最後の問にどうこたえるのか。今はそれが少し気になっている。

  • このSF小説では、主人公の前に「ゴエモン」が出現したので、主人公が驚いて声を出したがその声が無くなっていてその事が機縁で、いろんな事件が起き。

  •  描写から察するにハンプティ・ダンプティのような容姿をした「ゴエモン」という奇人が日本に現れる。
    どう見ても人類ではない「彼」の能力に目をつけた一人の野心家によって地球上の全ての爆発物が無効化されてしまう。

     一見「日本国憲法9条」を具現化したような理想的世界だが、それによって地球上から争いが無くなるほど人類は賢くなかった。
    人類の文明と社会を鋭く批判した小松左京「らしい」SF。
    ラストはとても笑いどころではない。

  • 地球なんかめじゃないような科学技術を持つところから来た宇宙人ゴエモンによってしっちゃかめっちゃかにされる日本
    明日泥棒の意は最後の最後に分かる
    SFというよりは科学技術や政治、人間の在り方を批判するような作品

  • 後の「首都消失」へと受け継がれる失う事への脅威。

    痛烈な文明批判。

    氏は何を問い、何を決断させたかったのか?


    珍妙極まるゴエモンが巻き起こす大騒動は、今に通じる課題点を私達に指し示しています。


    今だからこそ読み返したい、SF界の巨人の初期大作をお勧め致します。

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著者プロフィール

昭和6年(1931年)大阪生まれ。旧制神戸一中、三校、京大イタリア文学卒業。経済誌『アトム』記者、ラジオ大阪「いとしこいしの新聞展望」台本書きなどをしながら、1961年〈SFマガジン〉主催の第一回空想科学小説コンテストで「地には平和」が選外努力賞受賞。以後SF作家となり、1973年発表の『日本沈没』は空前のベストセラーとなる。70年万博など幅広く活躍。

「2019年 『小松左京全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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