コレット花: 28のエッセイ (花の図書館)

  • 八坂書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896947533

感想・レビュー・書評

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  • <ふくらみ、ほころび、よろこびに……>


    『青い麦』や『シェリ』といったタイトルが思い浮かぶ、シドニー・ガブリエル・コレットは、やはり小説を紡ぐひとなのだなと感じました。実際の形態ではなく、本質的な問題として。
     この本には、はっきり「エッセイ」と明記されているのですが、開けると小説の芽がびっしりとつまっているのが見えるのです。そして、何かを待っている感じ。ちょっと水をやりさえすれば、つぼみはふくらみ、ほころび、よろこびに咲きほこるのでしょう。物語が育ちそうな気配ばかりだ☆

     水彩画のようにやさしく、油絵のようにゆたかに、とりどりに、花々を語る表現。恋愛を描いていなくても、恋愛のやり方を感じさせる文章。

     クチナシのモノローグ。
    「人間を混乱させる役目を負っている私たち白い花にとって、昼のあいだは退屈などしていられない罠を張る時間だ」
     こういう女、ずるいですね…。

     蘭。
    「落ち着け、落ち着け。海のむこうの花に何て興奮しているのだろう」
     時々、コレットは意図的に錯乱するのです。

     藤の習性。
    「私はこの木の行状を見て、圧倒するような美がもたらす殺傷力がいかなるものかを知った」
     ひとたびからまれたら、柵だって逆らえやしない。

     バラには、すべてが許されていると言います。
    「輝き、香りの陰謀、鼻腔や唇、歯を誘う花びらの肉感……」
     全身どこでも、人を誘惑できますね★
     黒いバラも
    「孤独な女と、尽きることのない花は頬と頬を寄せ合い、一方は色艶を失い、他方は黒く、そして罪のような緋色を呈しながら互いにうっとりとしている……」
    と、何とも罪深すぎる美しさで描き抜かれています。

     軽い読み物のような風をよそおいながら、花の香りとともに濃密な知性の気配のする本。すこし窓を開けて読みたいような。でも、何だか気持ちいいような気もして、くるしいのにうっとりするような?
     結局、美しいものに抗うのはむずかしいのです★

  • ブックオフを散策しているときにたまたま発見した。ずっと読みたいと思い続けていた本だったので、まさかこんなところで手に入るとは思わず、大変驚いた。
    コレットといえば工藤さんのやわらかな印象の日本語で紡がれる翻訳本を多く読んでいたので、この本のきっちりとした翻訳には少々戸惑ったが、読み進めるうちにすぐ慣れた。

    論文を作成する際に私の恩師が仰っていた「サボテンを巡るコレットと母シドのエピソード」がずっと心に残っていていつか読みたいと気にかけていたのだが、どの本に収録されているのかも、タイトルすらもわからず……。そしたらこの本に翻訳が収録されていて、ああこれか!ととても嬉しくなった。

    コレットの豊かな感性や女性らしい心遣いが花という小さなモチーフにぎゅっと凝縮された、とても華やかで愛らしいエッセイです。

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