シダの扉: めくるめく葉めくりの世界

著者 :
  • 八坂書房
3.63
  • (3)
  • (5)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 71
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896949902

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「生き物屋」ではないので、シダの多様性自体には惹かれないのだけれど、生き物の歴史への視線には惹かれます。

    ・ハワイは海火山からできた島で、周囲の大陸からあまりの離れているから、人が多く移住する前は蝶が二種いる程度で、蟻も蚊もゴキブリもいなかった。

    ・(食べられるシダと食べられないシダがあると)僕はホノカに対して、そんな説明をした。すると、ホノカは、「ああ、そう。じゃあ、恐いから、シダは食べない方がいいや」とあっさり言った。
    この一言に、ハッとする。人々は、食べられないものが多いシダの中から、食べられるシダを見分け、食べられるように加工する文化を生み出し、歴史の中で伝えてきた。しかし、僕たちは豊かになった。食べられるシダをわざわざ見分ける必要もないほどに。
    「なんで、自然のことなんて、知る必要があるの?」
    その問いが、繰り返し、僕を問う。

  • シダの生態や分類など、シダそのものについての本かと思って読み始めたが、シダと人との関わり合いについての本だった。著者は、千葉県生まれで、今は沖縄大学の先生。常識とは相対的なものだということが、シダと人との関係を例に挙げて繰り返し書いてある。例えば、スギナは沖縄に分布していないので、著者が教えている学生は、ツクシが食べられるという、著者にとっての常識を知らないし、そもそもツクシの実物を見たことがない(155~157ページ)。カツオブシを木の皮だと思っていた学生がいたという話(24ページ)には少々呆れたが、所詮は程度問題か。ワラビを食べたことはあるし、わらび餅も好きだが、ワラビのことを知っているかというと、そんなことはない。その辺にワラビが生えていたとしても、見分けられるとは思えない。そもそも、ワラビってどこに生えるんだろう。クサソテツ(コゴミ)は、実家の庭に生えているなあ。そういう話を妻としていたら、上の娘が「シダってなあに?」と聞いてきた。やれやれ。2012年4月8日付け読売新聞書評欄。

著者プロフィール

沖縄大学人文学部教授

「2019年 『琉球列島の里山誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

盛口満の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×