- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784900963375
作品紹介・あらすじ
ジョー・サッコは1991‐92年にかけてイスラエルの占領地であるヨルダン川西岸地区やガザ地区で2か月間を過ごした。折しもパレスチナ人のあいだから自然に起きたといわれる第1次インティファーダ(民衆蜂起)の時である。紛争の最前線で彼は、拷問を受けたパレスチナ人から観光気分のイスラエル人まで、さまざまなインタビューをこころみる。そしてパレスチナ人から堰をきったように語られる苛酷な事実をリポートしていく。
感想・レビュー・書評
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コミック・ジャーナリズムという分野のパイオニアである著者が、1991年から1992年の間の2か月間、イスラエルの占領地であるヨルダン川西岸地区やガザ地区で過ごした様子を独特の絵と文章で描いた記録。
パレスチナ問題のことは恥ずかしいほど何も知らなかった。イスラム国やテロのイメージが強く、自分の生活の中に入ってきてほしくない、遠い世界であってほしいと思ってきた。けれど、知らないことは必要以上に恐れを増大させる。
コミックでは、実際に見たわけではない占領下の監獄や銃撃戦の様子が取材相手の話に基づいて描かれる。客観性よりも、体験者の生々しい感情やそれを受け取った著者の心象を大事にしているのだろう。
著者はエジプトからエルサレムに入り、ヨルダン川西岸地区の都市部、ついで難民キャンプを訪れる。都市部では、不穏な空気をまといつつ、一見普通に生活が営まれている様子だが、徐々に抑圧された難民社会に場面が移り、インタビューの内容は凄惨になっていく。
滞在が長くなるにつれ、著者の中でパレスチナのイメージが変化していく。終盤またエルサレムに戻ってきたとき、仲良くなった2人のイスラエル人女性たちと話す著者は、冒頭でどちらかというと懐疑的にパレスチナを見ていた著者とは違う。彼の中で確実に世界観が変わっていることが伝わってくる。
平和を望みながらもアラブ人の権利を認めることで自分たちの現在の生活が脅かされるのではないかと恐れるユダヤ人たち。イスラエルに住むユダヤ人には彼らの正義がある。けれども、パレスチナでの著者の体験が一つの事実であることは確かだ。
パレスチナに比べて日本はなんて平和なのだろう。もちろん平和が悪いわけではない。ただ、自分たちの小さな世界のことだけを考えて、広い世界の中でたくさんの人間がさまざまな生活や体験をしていることに思い至らなくなることが問題なのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やっと手にとれた一冊。漫画家でジャーナリストのジョー・サッコが、第一次インティファーダ後のパレスチナを訪れ市井の人々にインタビューして描いたコミック・ジャーナリズム。著者の目にうつったパレスチナ問題が、生なましく再現されていて、自分の50分の1くらいが一緒に取材に行ったような感覚にもなった。そんな作品自体も凄いし、かつ、自分は勇敢ではなく臆病で怖がりなんだ、と書き、怯える自分の姿を鮮明に描きながらも取材を続ける著者のパーソナリティにも興味を持った。他の作品も日本語で出版されないかな。
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勉強になります。他のシリーズも読んでみたい。
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漫画の形式をとったルポルタージュで、その名も「コミック・ジャーナリズム」という新しいジャンルなんだそう。確かにマンガスタイルはとっつき易いのだろうが、読み進めるのがちょっと…。個人的には、従来の写真+文字によるものの方が、客観的事実と主観的主張が明確で、落ち着きがいいかな。エドワード・サイードの前文が拾い物だった。サイードでもコミック読んだりしたんだ〜。
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--読書メモ 2015/10/19--
・著者のパレスチナ取材を著者自身が漫画化
・著者の体験ベース。考察はない -
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「パレスチナは遠く、僕はゆっくり行く
でも僕は急いだぜ
急いだ
もう着いた」
ビートニクが紡ぐ、第一次インティファーダ後のパレスチナ狂想曲。
(前説にはかのエドワード・サイード)
今でも、今夜もガザでは人が家畜のように殺されていく
だからあたしたちも急ぐとしよう