「心理学化する社会」の臨床社会学 (愛知大学文學会叢書 8)

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  • 世織書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902163001

作品紹介・あらすじ

社会の脱制度化や再帰化が進行し、伝統や価値、規範に代わって"心理学的言説"や"技術"がわれわれを支配し始めている。-一社会のすべての成員が周辺化し、排除されていく現代社会の危機を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 「これはアロマテラピーの日常的な流行のような現象とニューエイジの世界との境界を明らかにする点でも必要である。アロマテラピーやリフレクソロジーの消費者のすべてがニューエイジャーではない。またユタのニューエイジャーへの通いがあり逆がないように、ニューエイジの領域は他から流用されやすいと同時に自分自身は他の領野へは流れず両者の流れは不可逆的でありここに明確な境界があることをここでは確認しておきたい」

    ニューエイジとかスピリチュアリティ界隈の定義付けは三者三様なわけなのだけど、著者のように「一般的な消費者」までニューエイジャーとしてしまって良いのか、それをスピリチュアリティとしてしまってよいのか?というのは感覚的にはすごくよくわかる。

    「社会がスピリチュアル化してるんだ!」といってしまえば良いのかもしれないが、しかしそもそもこういう神秘的なものを消費するという傾向はスピリチュアルうんぬんが出てくる前からあったはずのものだ。

    仮にも戦後ニューエイジの流れを引き継いで「スピリチュアリティ」という分析概念が流行り、定着したのだから、いくら「スピリチュアリティが消費文化に接触している」といっても、すでに一般化とまで言えるものを「スピリチュアリティ」という分析概念で括るのには、ちょっと限界があるような実感がある。これは僕のイメージの中の「スピリチュアリティ」が、どうも島薗先生の「新霊性運動=文化」を引き継いでしまっていて、スピリチュアリティとは社会のマイノリティであるべきであるというバイアスがかかりすぎているからかもしれないが。

    あと、「女性性とスピリチュアリティ」というテーマをとってみても、そもそもここで想定されている女性性に「スピリチュアリティ」というものが多少なりとも内包されているのは見てとれるし(それは男性性がオタクを内包しているように)、単なる言い換えのマイナーバージョンにすぎないのではないかとか、色々と「スピリチュアリティ」に関しては思うことはあるのだけど、このへんはまだ頭のなかでまとまっておらず。このへんを自分の中だけでも解きほぐす作業が、自分の修論になるのかなと思ったり。


    あと、内容に関してもう少し触れると、精神分析をやっている人に多いのだが、精神分析をやったことがない人がちょっと置いて行かれる感じになっていて、なかなか読み進めるのが難しかった。精神分析に対して肯定的すぎるのでは、という素朴な感想を持ったことも付記しておきたい。

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著者プロフィール

1958年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科社会学専攻博士課程満期退学。現在、愛知大学文学部人文社会学科社会学コース教授。専門は社会学・精神分析(ラカン派精神分析の枠組みによる現代社会・文化分析)。著書に、『「心理学化する社会」の臨床社会学』『ラカン派社会学入門――現代社会の危機における臨床社会学』(以上、世織書房)、『ネオリベラリズムの精神分析――なぜ伝統や文化が求められるのか』(光文社新書)、『臨床社会学ならこう考える――生き延びるための理論と実践』(青土社)など。

「2019年 『この社会で働くのはなぜ苦しいのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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