高安国世の手紙 (塔21世紀叢書 第 231篇)

著者 :
  • 六花書林
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903480893

作品紹介・あらすじ

ドイツ文学者であり歌人である高安国世。残された数多の手紙を手掛かりに、友人たちとの交流、家族とのふれあいの一端を描き取る。人間高安国世の素顔を浮き上がらせ、言葉と時代の関わりを見据えた更なる地平に到達する評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 一語一語声張り上げて区切り言ふ兵たりし苦しみの余韻の如く
     高安国世

     ドイツ語詩人リルケの翻訳者として知られる作者。松村正直による新刊で、その交友関係と、時代との接点をつぶさに知ることができた。
     1913年(大正2年)、大阪生まれ。母が歌人で、少年時代から雑誌に短歌を投稿。京大文学部に進学し、母と同じ「アララギ」に入会した。
     旧制高校では、後の経済学者内田義彦と親しくし、また、作家野間宏、富士正晴らとも長い交流があった。掲出歌は、野間宏の戦後の講演を聴いての連作「誠実の声」より。野間宏は「兵たりし苦しみ」を体験したが、ぜんそくの持病があった高安は、召集されても即日帰郷となり、「兵」とは距離のある戦中を生きていた。
     だが、生活者としての「苦しみ」は味わっていた。3歳の長男が突然の病で急死したのだ。動揺する心を救ったのは、リルケの「死者は我らを必要としないが、我らは死者を必要とする」という思想だった。
     54年に歌誌「塔」を創刊。後続世代を育て、還暦目前に初めて自動車の運転免許を取得。生活にも短歌にも変化が生まれた。

      限りなく道を走りて何せんに新しき道は我をいざなう

     なるほど、ドライブ詠がそのまま境涯詠となっている。それまではやや受け身で、世界の傍観者であった高安だが、運転によって「世界と直接関わるようになった」という松村正直の分析も興味深い。
     84年に病没。貴重な蔵書は現在、県立長野図書館「高安国世文庫」となっている。

    (2013年9月15日掲載)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「還暦目前に初めて自動車の運転免許を取得。」
      凄い!
      「還暦目前に初めて自動車の運転免許を取得。」
      凄い!
      2014/03/03
  • 先日、ゴソゴソ探していたらカフカの翻訳が出てきた。多分リルケもある筈なのですが(探さなきゃ)、、、短歌は読んだコトがないので、手頃そうなのを図書館に予約予定。それから読もう。

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    「ドイツ文学者であり歌人である高安国世。
    残された数多の手紙を手掛かりに、
    友人たちとの交流、
    家族とのふれあいの一端を描き取る。
    人間高安国世の素顔を浮き上がらせ、
    言葉と時代の関わりを見据えた更なる地平に到達する評伝。

    「塔」の3年間にわたる連載を大幅加筆。
    高安国世生誕100年記念出版!」
    http://rikkasyorin.com/syuppan.html

    ※田中綾さんのレビューで知りました。

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著者プロフィール

1970年東京都町田市生まれ。東京大学文学部独文科卒業。歌誌「塔」編集長。
主要編著書は歌書『高安国世の手紙』(2013年 六花書林)歌集『午前3時を過ぎて』(2014年 六花書林)歌書『樺太を訪れた歌人たち』(2016年 ながらみ書房)歌集『風のおとうと』(2017年 六花書林)

「2018年 『戦争の歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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