歴史の〈はじまり〉

  • 左右社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903500096

作品紹介・あらすじ

私と現在はどうつながっているのか。
格差社会からアメリカ問題まで、二人の社会学者による新しい歴史対談集。

感想・レビュー・書評

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  • 一番納得いったのは、最近のナショナリズムの興隆を分析しているところ。
    “価値の源泉・基盤を、右派は過去から、左派は未来から呼び出してきた。が、今は未来から呼び出すという方法が成立しなくなっている。右派のいう過去は、実際には捏造された物語であることの方が多い。しかし明確に、望ましいイメージを人々に提供できている。”
    “左派は普遍主義的な立場から、現実社会を批判してきた。しかし、日本社会は普遍的な理念に対する信頼を失い、むしろ普遍的=欺瞞的という価値観が広がっている。そうした状況では、普遍性を侮辱・拒否する態度が一番誠実に見える。そして、ナショナリズムは明示的に普遍性に反しているからこそ選ばれている。”
    “彼らにとって前衛とか啓蒙と見えれば即、敵となる。それは相手に前衛意識があるかどうかにはかかわらない。”
    ああその通りだなあ、と思える。普遍性という垂直に伸ばしていった観念を、未来へ投影していくことが啓蒙運動なのだろうから、その三つがセットで拒否されるということか。ドイツのネオナチも同じメカニズムなら、それこそ普遍的な現象といえるが。一定程度の知識を持ち言語操作のできる中産階級は、勃興期には普遍と啓蒙かの主要な担い手になるが、没落しつつある(またはその予兆におびえている)時代には過激ナショナリズムの温床になる、のかもしれない。
    未来からの呼び出しが成立しなくなったこと、普遍性への拒否感情が広がっていることの原因は、あまり分析されてはいない。ソヴィエトの崩壊が引き金だったと指摘はしているが、それだけで広範な人間の気分を動かすことは無理だと思う。地道なフィールドワークが必要なのだろうから、まだデータができていないのかもしれない。分析できてできなくても、取りあえずそういう現状を前提にせざるを得ないのだが

  • 途中まで読んで放置。
    しばらくぶりに読み直したら、意外とすいすい読めた。
    ナショナリズムに関する対談がなかなかおもしろかった。
    でも、用語をもう少し何とかしてほしい。
    ちょっと「業界用語」が多くて、一般向けではない感じがした。

  • 本の題名には「歴史」と書かれているが、内容的には現代社会の抱える様々な問題を論じた対談集である。非常に面白い内容の本であり、また興味深い指摘も多々あったと思う。

  • 日本を代表する社会学者の対談集。タイトルからして歴史について語っている…と思ったら、歴史について語っているのは4章のうちおもに第3章だけだった。

    それでも右派・左派がともに構築主義に陥っているという北田の指摘は「あ、そうかもしれない」と思った。じゃあその状況を打破するにはどうしたらいいのか。大澤はダントを手がかりに「真理の問題系と正しさの問題系のいずれに還元できない位相に歴史はある」(p166)と語る。でも僕にはぱっとそのことが理解できない。つまり「それって要するにどこ?」という疑問が湧いてしまうのだ。

  • 北田と真幸
    中盤がむずかった

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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