クコツキイの症例 下: ある医師の家族の物語 (群像社ライブラリー 31)
- 群像社 (2013年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903619439
作品紹介・あらすじ
社会主義国家ソ連のアングラ社会に足を踏み入れたターニャはジャズ・ミュージシャンと人生の喜びを見いだしていく。孤独なエレーナは徐々に精神に異常をきたしていき、パーヴェルはもはや家族とのつながりを取り戻すことができそうにない。ばらばらになった家族を娘のターニャはもう一度ひとつに織り合わせることはできるのか…。若者文化が非公式の世界で活気にあふれていたスターリン死後の社会のなかで、生と死の問題がひとつの結末を迎える。ロシア・ブッカー賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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ロシアだから描けた、ロシアで無ければ描けない‥そういう空気感。
登場する人物の姓名の凄さは有名だが、一族一家が煩雑に登場する為、はなから覚えるのは止めたとは言え、下巻では逆にそれが面白かった・・特異的としか言いようもない。
上巻では感情が全く入って行かず、読むのに嫌気すら覚えたがなぜか下巻では面白さが飛躍的。
ロシア語講座で紹介された有名作家の裏側を見ても「ロシア社会の男女間の性」の捉え方があっけらかんというか、扇情的。ターニャが夫を選ぶ時もゲームの様にする時点で驚かされるが、お腹に子供が入ったままで愛人を作り、激しく愛し合って・・。
それを許す、許されなくても平気という社会の異質感に口あんぐり。
第4部の展開は更に運命的なものを感じた・・なるべくしてなったと。誰が悪かったというのではなくターニャの「その時点」での歯車を動かす基が全て噛み合わなかった~と。それを運命というか、業というか。。
しかし、その後日で元夫を介抱しけりをつけた上で広大な土地を持つ将軍の元へ嫁いだ「最高に自堕落な」その妻~元バレリーナが一番の勝ち組・・これを描くことによって人生とは、を見せたかった、語りたかったのだろうか・・ウリツカヤは。
読み手がそれぞれに判断をつければいいのであって。。。 -
夫婦の根本的なところに問題があるのだけど、若者の話で散漫になってしまいなにか物足りないまま終了したようだった。しかし、後書きに訳者が「クコツキイ家の人々」にしようとして断られたとあったのが興味深い。トルストイがちらちら出てくる。「幸福な家庭は似ているが不幸な家庭はそれぞれ違っている」という名言を思い浮かべながら読んだ。ゆえに症例(ケース)というタイトルにしたのかななど深読みできたり、ありきたりの年代記とは違う読後感だった。