未来ちゃん

著者 :
  • ナナロク社
4.56
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本棚登録 : 1445
感想 : 249
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904292099

作品紹介・あらすじ

おまたせしました。みんなの明るい未来ちゃんです。

ひとりの女の子の一年間を撮りおろした、見ているだけで跳ねだすような、傑作写真集の誕生です。
人気デザイナー祖父江慎の装丁による、写真そのままを本にしたような造本も魅力的な一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 2、3年ぶりくらいにページを開いた。
    これが本名なのかどうかわからないけれど「未来ちゃん」。このひとりの女の子だけを被写体にしたスナップショット的写真集。ひょっとして、この子を見ていたら未来しかない、ということで未来ちゃんなのかもしれない。

    ともかく、見るたびに、よくもこんなキャラの立った子を見つけてきたな、という感想を抱く。おかっぱの、黒くて丸々した目の女の子。まわりに写っているものからして都会育ちではない。海辺で寒い地域なのかな。フィクションの中にしかいなさそうな、"ザ・田舎の子"。

    ともかく表情が良い。そして強い。ちょっとのことでは動じなさそう。どっしりと、足から根が生えて地中から養分をもらってる感じ。

    奈良美智が描く女の子のようでもあり、あるいは"こけし"が動き出したようでもあり、座敷わらしのようでもあり、あるいはアニメのキャラクターが実写化されたみたいだとも思った。

    たまにこちら(カメラ)に向かってサービスして変顔をしたりしているのだけど、基本、まるでカメラがそこにいないかのように素の顔をしている。きっとここがカメラマンの力量なのだろう。

    「未来ちゃん」はいっこうに照れる様子もなく、むすっとしていたり、鼻水垂らして泣いていたり、木に登ったり、降る雪に積もられたり、おじいちゃんやお坊さんの肩に立っていたり、無心に何かを食べていたりする。

    カメラ目線のときの眼力が何よりすごい。視線の圧でレンズをパリンと割ってしまいそう。

    好きな写真はたくさんあるけど、中でもお気に入りは、アイスクリームを口のまわりにいっぱいつけたまま、むすっと何かを見つめているショット。
    それから、狭い側溝の中に仰向けに寝そべったまま出られず、ちょっと不安げにしている未来ちゃん。
    鎌をもってススキのなかに立ち、何かたくらんでいそうな表情の未来ちゃんも微笑ましい。

    なんだか本書は定期的に見たくなる。また会おう未来ちゃん!

    • ouiさん
      goya626さん
      おっしゃるとおり、全部見透かしてますよ的な感じが魅力ですね。どうも贋作がけっこう出回ってるみたいです。いやはや、見分けら...
      goya626さん
      おっしゃるとおり、全部見透かしてますよ的な感じが魅力ですね。どうも贋作がけっこう出回ってるみたいです。いやはや、見分けられるかどうか。
      2022/09/28
    • goya626さん
      ouiさん
      おやおや、贋作とは。本人から買ったそうですから、まあ大丈夫でしょう。
      ouiさん
      おやおや、贋作とは。本人から買ったそうですから、まあ大丈夫でしょう。
      2022/09/29
    • ouiさん
      goya626さん
      や、失礼、私の審美眼の話です。さすがに美術館は大丈夫ですね笑 ネットオークションで贋作が出回っていると最近なにかで読んだ...
      goya626さん
      や、失礼、私の審美眼の話です。さすがに美術館は大丈夫ですね笑 ネットオークションで贋作が出回っていると最近なにかで読んだもので。
      2022/09/29
  • 久しぶりに写真集見たなぁ。

    私の中で、たぶん一番有名な写真集といえるこの『未来ちゃん』を、読んだことはありませんでした。

    表紙のインパクトなある写真だけが鮮明に記憶に残っていて、まぁ中を見てもこの子が写ってるんだろうなぁ(当たり前)と思うくらいでした。

    図書館で見つけた時、あ、今かもなと手に取り、
    なのに返す日を間近にしてやっと開きました。

    開いてびっくり。
    あれ?この子私かしら?というくらい、
    やってることが一緒でした。
    鼻水を垂らし、木の(うちの周りにはウロはなかったので)間にはいり、上り、木の葉に埋もれ、雪に埋もれ、花があればそこにうずくまり、布団があれば上り、押し入れに場所があれば上って暗闇を楽しみ(ひとりコールドスリープごっことかしてました)、猫がいれば覆いかぶさったり横に丸まったり(無視というやさしさをくれました)、溝があれば入り、きれいもきたないも一直線の世界で、私は生きていたことを思い出しました。
    すごく強烈に。

    こんなふうに真っ直ぐにカメラを見ることはできなかったけれど、この写真の中に、驚くほどあの頃の自分がいました。
    彼女はもう大人になって、この写真集を手に取るたびに様々に感じて来たのだろうなぁと思うと、
    それも含めてすごくいい写真集だと思います。
    この写真集がヒットしたことが納得の説得力のある写真たちでした。

  • 写真家 川島小鳥さんのブレイク作。書店で立ち読みしてモデルの子に心を鷲掴みにされてしまった。同じような人が多かっただろう。新潟の佐渡島に住む、知り合いの子どもだというその子は、だいたい(言い過ぎ)鼻水を出し、ワイルドで、時に喜怒哀楽のどれにもあてはまらないような何とも言えない表情をしている。テレビに出ている子役を見ていると、大人の要求を先取りして振舞うような仕草に少しかわいそうな気持ちになり、そうさせている大人にもそれでいいのかなと疑問を持ってしまう(本当はそのような固定観念の方がいけないのかもしれないけれど)。ぐんぐん風を切って草むらを歩いていく。この子を見ていると、ただ存在して、ありのままにそう在るだけ、という感じがする。それで十分ではないかと思う。子育てをしたことがない現実を知らない人の感想である。

  • 10年前から知っていて、その時から気になっていたけれど手にとらず、急に友人にプレゼントしたくなって。
    人にあげるつもりが自分も欲しくなって、自分用にも無事ゲット。
    10年越しに、ページをめくりました。

    はー、可愛いのです。
    困り眉が、たまらんのです。
    シャッターに目線が合っていない、生き生きとコロコロと変わるその表情が、たまらんのです。
    「量産型」ではない、良い意味で都会に洗練されていない、下手したら昭和を感じる彼女の装いと、生活の空気感が伝わる感じがたまらんのです。

    みんな、元気にしてるかな。
    わたしは何とか、生きています。

  • 侮っていた、自分ばか。梅佳代と混同していたくらい。
    新潟佐渡が舞台。
    本名は未来ではなく、写真家が未来ちゃんだと感じた瞬間にシャッターを切ったんだとか。
    結構作為的ということだ。
    とはいえここまで郷愁を掻き立てるものができるとは。
    谷内六郎を思い出す。

  • 愛おしさのつまった写真たち。
    川島小鳥さんは男性。未来ちゃんは友人のお子さん。3歳。

  • 生命力あふれる女の子に目が離せない一冊。こちらもつられて気持ちが浮上します。(あなたの一冊:図書館司書、えびさんよりメッセージ)

    ほおずりしたくなるくらい、愛おしい子。でもきっとみらいちゃんは、そんな大人を我関せず。子どもはきっと大人と少し違う時間の中を旅していると思う。「ハイチーズ!」の写真では撮れない表情が満載、眺めてにんまりの一冊。(ちいさな帆)

    むかしをおもいだしました。かわいいおんなの子でした。

  • かわいいじゃ言い足りないくらいかわいい。
    すべてかわいい。
    自然と頬が緩んでしまうそんな写真集でした。

  • まぁ、これを「読み終わった」とするのはいささか気が引けるのですが、美しい本だったので。

    青っ洟垂れてる写真とか、泣いてる写真が多いのな。

    この子がお年頃になったら、きっとこんな写真が残って!なんて思っちゃうのかもw

    でもさ、掛け値なしに真剣に泣くことの清々しさというかね。

    悲しいから泣く。
    悔しいから泣く。
    不快だから泣く。
    全力で、泣く。

    いつしかそんな姿を、人に見られまいとするようになり、
    涙の意味を考えるようになり、

    わたしの涙はきっと、この写真の子の涙とは違う。

    それが、羨ましかった。
    眩しくて、羨ましくて、哀しかった。

  • さすがです。

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著者プロフィール

1980年東京都出身。写真家。早稲田大学第一文学部仏文科卒業、沼田元氣氏に師事。2011年、写真集『未来ちゃん』(小社)刊行と同時に『BABY BABY』(学研)を復刊。2014年、『川島小鳥写真集 明星』(小社)刊行。2015年、同作にて第40回木村伊兵衛写真賞受賞。2017年、福井・金津創作の森にて、個展『境界線で遊ぶ 川島小鳥展』を開催。

「2011年 『未来ちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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