どこにでもあるケーキ

著者 :
  • ナナロク社
3.89
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本棚登録 : 180
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904292952

作品紹介・あらすじ

詩集『よいひかり』(小社)に続く、三角みづ紀の第8詩集は、詩人の記憶を重ねた13歳を描く33篇の書き下ろしです。
誰もが感じてきた変わっていく心と身体と家族との関係性、教室の疎外感や世界の美しさを、失った記憶が蘇るように描きだします。

タイトルの『どこにでもあるケーキ』をはじめ、一見すると否定的な言葉に、どこかそうありたいとも願う繊細な感情が見事に詩となっています。
すべて一人の目線で描かれるため、主人公のいる短い物語としても読め、しばらく詩から離れていたなという方にも、親しみやすい一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 三角みづ紀さんの詩集はレビューはしていませんが、以前に何冊か図書館で借りて拝読したことがあります。

    以前に読んだのは、なんてヒリヒリするような、繊細な心が描かれているんだろうと思うものが多く、若さゆえに、生きづらさを感じているのかもしれないと思いました。

    この「どこにでもあるケーキ」は38歳になった、三角みづ紀さんが、13歳の三角みづ紀さんになって詩を書こうとしたものだそうです。
    「13歳のわたしは繊細で、ひどく図太くて、ひどく鋭敏だった。38歳のわたしが13歳になって詩を書こうとしたら、同じく繊細で、ひどく図太くて、ひどく鋭敏だったので、驚いた。ひとってそんなに変わらない」
    とあとがきで述べられていますが、今、以前の詩集は手元にないので、はっきりとは言えませんが、この詩集には、明るさとか、優しさ、おおらかさなどが加わったような気が私はしました。
    読んでいて気持ちがやわらぐような詩が多かった気がします。

    巻頭詩の「森の生活」は、この詩集を読む前日に、ヘンリー・D・ソローの『森の生活』を読んでいたので、そこからとったのかと思ったりしましたが、内容は全く関係なさそうです。

    「森の生活」
    ひとりでは
    三つ編みが結えなくて
    母にゆだねている日々を

    あたらしい制服は大きい
    すぐにぴったりになると
    皆が口をそろえて言った

    膨らんでいく身体は
    焼きあがるのを待つ、
    どこにでもあるケーキ。
    ほっといても、
    育っていくヒヤシンス。

    でも わたしはそんなに簡単じゃない
    でも わたしはそんなに複雑でもなくて

    わたしが貼りつく名前を
    剥がしてみたら
    なにものでもなくなって

    三つ編みを揺らして
    ひとりで俯いて
    学校へ向かう

    濃い緑のスカートを震わせて
    三つ編みを揺らして

    とてもよく晴れた日に
    一本の木になって
    森の中にまぎれこんでいくのだ



    「春と獣」「光を放つものたち」「アイボリー」「春分の日」「ソワレ」もよかったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      皆、自分のコトを忘れて若い人の言動に眉をひそめますが、皆が通る道なのにね、、、
      今日UPした「病と障害と、傍らにあった本。」に三...
      まことさん
      皆、自分のコトを忘れて若い人の言動に眉をひそめますが、皆が通る道なのにね、、、
      今日UPした「病と障害と、傍らにあった本。」に三角みづ紀の名が、、、病気されたのか?

      身体は、無理のないように鍛えたいですね。瞬発力も持久力もないと生き残るのが難しい世の中ですから、、、
      2020/11/05
    • まことさん
      猫丸さん

      三角みづ紀さん、病気されていたのは知りませんでした。

      今年は特に、コロナで運動不足になっていて、私は、捻挫だのなんだの...
      猫丸さん

      三角みづ紀さん、病気されていたのは知りませんでした。

      今年は特に、コロナで運動不足になっていて、私は、捻挫だのなんだのって、大変でした。
      猫丸さんも十分気を付けて、雪が降っても転ばないようにしてください(*^^*)
      2020/11/06
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      猫は、雪が降ったら炬燵で丸くなっています!

      あっ運動不足解消には、一駅分歩くか、自転車に乗る。。。
      まことさん
      猫は、雪が降ったら炬燵で丸くなっています!

      あっ運動不足解消には、一駅分歩くか、自転車に乗る。。。
      2020/11/06
  • 2020年注目の詩集3冊 初々しくおいしい、言葉の感触 詩人・蜂飼耳さん|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13871200

    三角みづ紀
    http://misumimizuki.com/

    Izumi Shiokawa
    http://shiokawaizumi.com/

    どこにでもあるケーキ | ナナロク社の店
    https://nanarokusha.shop/items/5f2d228bd7e1d814dd291d6d

  • めちゃくちゃ良かった。
    すうっーと13歳になれた。
    汗まで甘ったるい、でも心にちっちゃいトゲがいっぱいだったあの頃を思い出して胸がぎゅっとなりました。
    そういう"いま"を生きている、あのこやあのこのことも思って。
    薄いグラシン紙に包まれたお菓子みたいな装丁が、脆くて優しくてちょっとめんどくさい少女そのもので。
    ずっとそばに置いて、何度も開くことでしょう。

  • すみれの砂糖がけといっしょに食べてしまいたい詩集。

  • するすると読めた。三角さんの詩は、「よいひかり」のころからどんどん読みやすく、誰にも書けない透明感をたたえたものになってきている気がする。なぜ読んでいてこんなに爽やかな気分になるのだろう。

    本のたたずまいも愛らしい。

  • 子どもの頃のシンプルな心の動きを思い出した。
    大人になるにつれて、どうも複雑に考えすぎる。
    初心に帰る意味でここに戻ってくるのもいいかもしれない。

  • 2022.11.01

  • つらい気持ちのときに読んだせいか、
    なんだか苦しい。
    少女の孤独。

  • 学生だった、あの頃の風景がひろがる。
    13歳のあの日。

  • 三角みづ紀さんの物語のような連詩。
    少し尖った、感情の揺れやすい女の子を描いている。詩の特別さは、青くさいまだ幼い女の子の感情の部分だけを掬い取ってみせてくれる。感情の動きだけで、その知らない女の子の1年間の様子を想像する。

    放っておいても、どんどんと成長していく年齢、日々は止まってくれないし、覚えることも増えていく。いろんな感情を知ることになる。

    彼女がこれを書いていたというホテルヌプカはいつか行きたいホテルのひとつだ。北海道のどこまでも広がる景色は、13歳の女の子の小さく淡い悩みや尖った感情を優しく包み込んでくれているような気がする。
    そこからみえる景色をみたら、またこの本を読み返してみたい。

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著者プロフィール

北海道札幌市在住。一九八一年鹿児島生まれ。大学在学中に現代詩手帖賞、第一詩集で中原中也賞を受賞。第二詩集で南日本文学賞を受賞。執筆の他、朗読活動も精力的に行い、多くの国際詩祭に招聘される。一カ月の間、欧州を旅して執筆した第五詩集『隣人のいない部屋』で萩原朔太郎賞を受賞。代表詩篇は翻訳されアメリカ、メキシコ、フランスをはじめ他国でも紹介されている。二〇二〇年に第八詩集『どこにでもあるケーキ』をナナロク社より刊行。

「2022年 『空気の日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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