荒廃のカルテ 少年鑑別番号1589 (追跡ルポルタージュ シリーズ「少年たちの未来」1)

著者 :
  • 駒草出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905447016

作品紹介・あらすじ

ずっと乳児院で育てられた彼は、親に無条件で抱きしめられ、信頼して甘えるという体験を知らなかった。それどころか、保母からの虐待やいじめを受け続けていた。1983年に発生した「女子大生暴行殺人事件」の少年犯の生い立ちを追跡。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館本

    古き時代の乳児院、児童養護施設で育った彼は、母の愛情だけでなく、人から受ける愛情もわからないまま成長した。
    施設でのイジメや虐待が追い討ちをかけた。
    自分から求めることの出来かった彼は、いつも一番後ろで静かに鼻を垂らしている子で、扱いやすい子だった。
    思春期の性への興味は増大し、そのすべとして、失神させればうまくいくとの考えが暴走した。母の愛情と混在していたが、その違いを誰が指摘してくれたろうか。
    失神と殺めてしまうことは紙一重で、表面上それは分かっていたのだが、前に進む以外の選択肢はなかった。
    彼には信頼する大人の存在がなかった。
    彼には、心の声をカタチにできるほどの言葉がなかった。
    彼は、物事を少しでも深く考え行動するという環境下で成長してこなかった。

    人を殺めることは許されない。だめ。
    ただ彼のもつ背景、殺めるに至った道筋を、私たちは受け入れて、社会が子どもたちを育てる意識を持たねばならないのではないかと感じた。
    個人感想。

  • 娘が読んで感銘を受けたということで僕も読んでみました。強姦殺人事件を起こして無期懲役になった少年の、幼児期からの虐待の生育歴を克明に取材、レポートした本で、読んでいてかなりきついものがありましたが、たしかに感銘を受けました。
    この犯人は、たしかに非常に不幸でかわいそうだったことはよく理解できましたが、だからといってこれくらい矯正が難しく再犯可能性の高い人間を、そうなったのが本人の責任ではないからといって減刑するというのも、非常に怖いものがあります。やはり無期懲役は妥当と考えざるを得ません。
    難しすぎる問題です。

  • 彼が自分の息子だったら、彼が更生することを無根拠に信じて、更生後の彼の人生に明るい希望を持つ気がする。彼に殺された女子大生が自分の娘だったら、三族皆殺しでも怒りはおさまらない。

  • 旧版を同僚に借りました。実家にもあったような。壮絶な生い立ちの犯人と、似たような境遇の子を育てる施設、社会の矛盾と福祉の不備…色々考えさせられました。子育てにおける母親の役割というのはやはり大きく、まずは自分がしっかり3人の子育てやりとげようと思いました。

  • 悪いのは本人か社会か。

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著者プロフィール

横川和夫(よこかわ・かずお)
1937年生まれ。ジャーナリスト。元共同通信編集論説委員。
教育や子ども・若者・家族問題を中心に、日本社会の矛盾が表出する
現場を一貫して追いつづけてきた。1993年、日本新聞協会賞受賞。
浦河べてるの家を描いた『降りていく生き方』をはじめ、
『不思議なアトムの子育て』(以上、太郎次郎社)、『もうひとつの道』
『心を癒す場』『大切な忘れもの』『仮面の家』『かげろうの家』
『荒廃のカルテ』『熱い鼓動』(以上、共同通信社)など著書多数。

「2004年 『その手は命づな』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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