草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー

制作 : 原正人  吉見義明  梁澄子 
  • ころから株式会社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907239459

作品紹介・あらすじ

韓国出身のグラフィックノベル作家、キム・ジェンドリ・グムスクが2017年に発表した作品を完訳。
日本軍「慰安婦」イ・オクソンのリビング・ヒストリーをベースにした480ページに及ぶ大作は、グラフィックノベルの傑作と称され、ニューヨークタイムズが「ベストコミック2019」に選定するなど欧米でも高く評価されている。
戦時性暴力、植民地支配下での女性の痛みを描いた本作の理解を深めるために、バンド・デシネ翻訳家、歴史学者らの解説を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 女の本屋 > 著者・編集者からの紹介 > キム・ジェンドリ・グムスク著『草』 「慰安婦」のリビング・ヒストリーを描くグラフィックノベル『草』 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
    https://wan.or.jp/article/show/8782#gsc.tab=0

    草|ころからの本|赤羽の小さな出版社 ころから
    http://www.korocolor.com/book/kusa.html

  • 映画 標的  を見て、ジャーナリスト、元朝日新聞記者・植村隆氏の話を聞いて本書を知った。
    日本で、日本語で刊行されたことを感謝する。
    苦難の人生、生涯に一つも良いことなどなかったと語るイオクソン氏。
    戸惑いながら丁寧に聞き取り、疑問も共感もありのままに伝える作者のキムジェンドリグムスク氏の真摯さ。
    イオクソン氏の不幸を超絶した生涯や、今や修正主義者により揉み消されようとしている事実、史実、人道上の犯罪といえることを伝えるのみならずふたりの心の行き交いがこの素晴らしい作品の素晴らしいところ。
    控えめなようで非常に意欲的に、挑戦的に、このテーマに、イオクソン氏はじめこのような苦い人生背負わされた人々、女性たちに、そのことを知ろうとする私たちに語りかけ見せつけ心に刻みつける力を感じる。
    手の描写、顔の、皺の、陰影のひとつひとつをあらわす黒い線、多くを語りすぎる真っ黒に塗りつぶされたコマ。
    2人で交わされる言葉、イオクソン氏がユーモアを持って笑い声を出すところ、回りの笑いを誘うところがあり、生命力、この人が偉大にも生き延び証言し家族との生活を未だ追い求めながら暮らしているこの人間性に驚嘆と共感を覚える。そして2017年近いこのときにもまだ上海にも延吉にも当時のおぞましい建物が残存しているとは。
    たくさんの人に読まれて欲しい。
    学校の図書館には配備されているのかな。


    この作者の他の作品も読んでみたい。

  • マクロの歴史に埋もれる個人の人生を丁寧にすくいとること。私がやりたいのもそういうことなんだよなぁと著者の姿勢に共感。

  • クラウドファンディングで日本語訳出版が決まったということを知りました。

  • 日本軍「慰安婦」の犠牲となった朝鮮人の女性が1990年代に実名告白し、元「慰安婦」達が「ナヌムの家」で暮らしている。本作品は、元「慰安婦」の元に何度も足を運び、ナラティブな聞き語りをグラフィックノベルで表現した新たな傑作。日本以上に貧しかった大日本帝国統治下の朝鮮。貧しい幼少期、貧しい家族のため人身売買され、突然日本人達に拉致され重労働と慰安婦としての筆舌に尽くしがたい青春期。そして、朝鮮では幸福(解放・日本の敗戦)後の更なる苦労の連続と現在のナヌムの家での生活を描写。
     2017年8月に韓国で出版され、諸外国でも翻訳出版、様々な賞を受賞し、日本語訳はクラウドファンディングで実現した。日本訳に際し、著者は「日本の民主主義と日本の未来はこのように志を持っている市民がいるからこそ暗くない」と思った、と記している。
    作品では「男尊女卑」、「家父長制」、「ミソジニー(女性蔑視)」、「男性の女性に対する支配欲」、どこかの国の官僚が今も引き継ぐ問題の根底を垣間見る作品でもあり、ジェンダー平等を進める作品として、日本軍「慰安婦」や今も続く世界での戦時性暴力に目を背けず、若い世代にも読んで欲しい作品です。

  • 日本軍「慰安婦」とされた女性たちの体験については、すでにドキュメンタリー映画や証言集など、多くの表現物がつくられてきた。グラフィックノベルという形式で何か新しいものが生み出せるのだろうか。
    そんな疑いは、この450ページ超にわたって展開される力強い絵の前に吹き飛んでしまう。けれども、描き手が語り手イ・オクソンの体験に接近するやり方は、ぐいぐいと肉薄するというよりも、やわらかで慎重だ。
    植民地支配と戦争、家父長制の下で、まさに筆舌に尽くしがたい苦しみを生き抜き、「母さんのお腹から出てきて以来いいことはひとつもなかった」という老女の体験に、外部の者はどのように接近しうるのか。語れないことをどのように聞いたらよいのか。そのひとつの答えを、この表現は示している。
    目の前にいるイ・オクソンというひとりの女性の顔は、ときに抱きしめたいほど愛おしく、ときには触れることのできない黒い影を宿して接近を拒む。その内側にある、すべてを語ることのできない経験を手探りしながら書きとめようとする筆もまた、ときには風のように軽やかで、ときには重油のような粘る重さだ。
    何度も、思わず息を止めるような表現に出会った。とりわけ印象深く刻まれるのは、少女の前に広がる広大な星空、草原、山々、木々だ。その自然は、小さな人間を絶望させる巨大な力でもあり、その中でもがく小さな存在を抱きとめてくれるものでもある。厳しい冬の時間をそれでも貫いて生きた一本の草のような人生がここにある。

  • 学習マンガリストから。海外の漫画作品は、どうしても日本のものと比べてしまい、どうしても彼我の差を感じてしまう。そんな中、本作は味わい深かった方。当事者が語る事実な訳だから真摯に向き合う必要があるし、遍く知られるために、漫画媒体は打ってつけとも言える。多くの国で翻訳されているのもむべなるかなだし、こと日本で翻訳されたのはファインプレー。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000054766

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著者プロフィール

1971年、韓国・高興生まれ。グラフィック・ノベル作家。韓国(世宗大学絵画科)とフランス(ストラスブール国立装飾美術学校)で絵画を学び、取材をもとにした作品を多数発表。2017年刊行の『草』は、フランス語、英語、イタリア語などに翻訳され、ニューヨークタイムズで「ベスト・コミック2019」に選ばれるなど高く評価されている。おもな作品に『チスル』、『ジュニ兄さん』、最新作『裸木』(いずれも未訳)など。

「2020年 『草』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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