子どもと子どもの本に捧げた生涯: 講演録瀬田貞二先生について

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  • キッズメイト
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907822026

作品紹介・あらすじ

本書では、子どもと子どもの本にいのちを賭けた稀有な人、瀬田貞二について、瀬田貞二の姿を縦糸、日本の児童文学の歴史を横糸として、日本の絵本を語る言葉のはじまり、一九五〇年、日本の児童文学の夜明け、能力と時間のすべてを子どもたちに解放した生涯という三つの視点から語っている。

感想・レビュー・書評

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  • 瀬田貞二さんについての愛情あふれる講演録。
    瀬田さんやその業績についての他の人のエッセイなども巻末に収録してある。

    著者の斉藤さんがいかに瀬田さんを敬愛しているか、が分かりすぎるほどよく分かる。
    瀬田さんがいかに魅力的な人だったかが伝わってくるが、
    読み終わってみると、その敬愛の念の深さに一番力をもらったように思う。

  • 「指輪物語」や「ナルニア国ものがたり」の訳者として知られる児童文学作家・瀬田貞二について、アニメ「ガンバの冒険」の原作者・斎藤惇夫が、瀬田の死後に講演で語った内容を記録したもの。

    本の概要を説明するとこれで間違いない。でも大間違いです。100万分の一もこの本の価値と魅力が伝わっていない。
    僕ら日本の子どもで、このふたりのお世話になっていない者はおそらくいない。彼らの業績はそれほどに大きい。

    瀬田貞二は1979年に没した「過去の人」です。
    にもかかわらず、瀬田先生の言葉は今に生きる僕らの胸をうち、子どもへの敬意と大人としての責任と誇りを呼び覚まします。
    「価値とはいつ誰にとっても価値があるから価値なのだ。時代や場所、人によって価値のあるなしが変わるような程度のものを価値とは言わない」と言った、ある哲学者の言葉を思い出します。

    瀬田先生は膨大な量の、余人をもって代え難い業績を残しました。しかし僕たちが今それに触れることは難しい。出版年が古く数も少ないうえに高額だからです。
    ただ、瀬田先生は斎藤惇夫という絶好の語り部を得た。
    マンガ「バガボンド」で、老年となった本位田又八が宮本武蔵を語るように、斎藤惇夫は瀬田貞二を語る。

    そもそも、斎藤先生自体が素晴らしき子どものためのひとなのです。
    仕事で斎藤先生を講演講師として招いたことがあります。講師依頼が決まったとき、僕ははじめて(「冒険者たち」三部作以外の)斎藤先生の著作(※)を読みました。そこで僕は僕のために彼の話を聞くべきだと確信しました。それは正しかった。
    この出合いがなければ、子どもと絵本、文学について、僕は今も間違った道を進んでいる気がします。

    その斎藤先生が、さらに師と仰ぐ瀬田貞二のことを語る。すでに頂上に達していると思った先生が、まだ上があるぞと語るのです。もっと素晴らしき風景がひろがる高みがあるのだぞと。これは絶望だ。ゴールには永遠に手が届かない。しかし同時に、「もっと素晴らしき風景」が尽きることはないという絶対の希望でもある。
    先人は後進たちへ、自分よりさらに先人の遺業を語らねばならない。

    尊敬するひとがいると、人生が豊かになる。
    尊敬するひとがいると語ると、周囲のひとびとの力を呼び覚ます。
    わが子のために、僕はこの本を読んでよかった。

    「おとちゃんがすごいって? そうか。ありがとう。でも実はおとちゃんにも、すごいと思うひとがいてな・・・」

    てか子どもがまずおれを尊敬してくれるのかっちゅう話。

  • 読みやすかったです。瀬田先生の弟子を自負する著者の力量を感じました。多くの方に慕われてる方だというのが、切々と伝わってきます。

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著者プロフィール

斎藤惇夫 1940年新潟市生まれ。小学校一年から高校卒業まで長岡市ですごす。長年子どもの本の編集に携わり、現在は、著作と、子どもの本の普及活動を続ける。著書に『グリックの冒険』『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』『哲夫の春休み』(以上、岩波書店)、『おいで子どもたち』(日本聖公会)、『現在、子どもたちが求めているもの』『子どもと子どもの本に捧げた生涯』(以上、キッズメイト)、講演録に『わたしはなぜファンタジーに向かうのか』(教文館)などがある。

「2017年 『河童のユウタの冒険(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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