- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784908184376
作品紹介・あらすじ
もっと話せばよかった...時代を超えて読みたい家族の物語
少女の死をきっかけに家族の抱えていた秘密が語られ、一家の深い闇が暴かれる
舞台は1977年、オハイオ州の架空の田舎町。16歳の少女が行方不明になり、数日後に湖で遺体で発見される。
物語はリー一家を中心に進んでいく。父親ジェームズ・リーは中国系アメリカ人の大学教授。ハーバード大学を卒業したものの、教職に就いてからも周囲になじめずにいる。そんなコンプレックスから、ジェームズはリディアに「友達と同じように」「周囲にとけこむように」という夢を託し、プレッシャーをかけ続ける。
妻のマリリンは南部出身のブロンドヘアーの白人。医師を志していたが、ジェームズと出会って恋に落ち、妊娠・結婚。夢をあきらめることになる。マリリンもまた、あきらめきれなかった夢を、自分と同じ青い目をもつリディアに託し、知らず知らずのうちにリディアを追い詰めていた。
長女のリディアは母親によく似た容姿で両親に溺愛される。青い目であっても、黒髪であること、父親がアジア系であることから、周囲にはなじめずにいる。
一方、長男のネイスと次女のハンナは父親ゆずりのアジア人顔だ。ネイスは、父から疎まれ、母から無視をされ、鬱屈した生活を送っていた。ただ大学入学を機に、ついに家を出ることが決まっていた。しかし、このことで、お互いを支えとしていたネイスとリディアの関係が変化し、リディアに決定的な暗い影を落とす。
妹のハンナは、家族から相手にされず、常に部屋の隅、机の下に隠れている。だが、誰よりも客観的に家族を観察し、事件の真相に迫っているキーパーソンでもある。
本書では、章ごとに1950年代の両親のなれそめ、1970年代の現代を行き来し、家族が徐々に崩壊していく様子が語られる。その語り手も、リー一家が章によって入れ替わり、それぞれの秘密を静かに暴露していく。終盤ではリディアの語りによって、死の真相が明らかになる。
感想・レビュー・書評
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読み終わってから、最近の本だったという事に驚いた。翻訳者の後書きを踏まえると、まだアジア人差別のようなものが残っているのだなと感じた。まあでも、この本の主題はそうでは無いので、一旦置いておこう。
この本を読んでいて、コンプレックスの克服とは、なかなかうまくいかないものだなと、強く感じた。コンプレックスをバネに成功した人の話は、何度か聞いたことがあるのに。
親はやっぱり、自分のようになってほしく無いとか、こういうふうに育って欲しいという願望が捨てきれないのだろうな。表面的には成り立っている様に見える家族ではあるが、それは子供の協力があってこそ。むしろ、子供の共感力がなければ、早くに家庭崩壊していただろう。その方がもしかしたら良かったのだろうか。
大人でも子供でも、誰にでも自分自身に関する秘密はあり、そして誰かの秘密もまた人は知ってしまう。その巡り合わせが上手くいかなかった1つの結果だな、この本は。なんだか哀しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやー、なかなかしんどかったな。
家族とは言え(家族だからこそ?)誰にでも何らかの秘密はあるものだけれど、もうちょっと共有し合えていればよかったのに、とは思う。人種、女性として生きる道、両親から過剰な期待をされること、あるいはまるで期待されないこと…何もかもがあまりにも重くて。
作家の力量はひしひし感じる。この人の作品はもっと読みたい。 -
本を読まない人にこの内容を話すとしたら「異民族間結婚の難問題 アッパーインテリ層の嘆き 女性特有のガラスの天井 銀の匙を咥えて生まれた悲哀」そして女性であるがゆえに苦しむ自分の歩きたい路、目指す頂上、そして結婚、家庭、子供・・だろうか。
最初はマリリンの苦悩 生き辛さ 米社会での東洋人の立ち位置に共感を持ちつつ読み進めるが ひりひり感が増す一方で苦しくなっていった~思った通り、家庭はバラバラ、岸辺のアルバム的空気感が募り リディア・ネイス・そしてハンナ(この子だけ、余りに空気感が薄く、だからこその幸せを見つけられそうな気配が)のそれぞれの立場と相互関係、それは両親との其々の関係にも微妙に絡まり 逆にねじれて行ったように思える。
原題「わたしがあなたに語らなかったことのすべて」の意すら、ひとによりかなりの温度差が生まれると思う。
日本的感覚でか、「口について出た一言」で全てが瓦解する事態もある。言ったところで、それを言われた方が受けとめられるか否かは霧の中。難しい。
筆者の文才は素晴らしく、これは感激感銘の作品になるかと読んで行ったが空しくなって最後まで読み切るのはあちこちの擦過傷が出来てしまう痛さだった。
スイスの氷河内で見つかった死体の人は・・南アの「遠い夜明け」に登場した無意味に殺戮されて、或いは夭折した人々、第二次大戦末ナチスの毒牙に石ころ以下の価値もなく抹殺された人々・・私が既知の事実は人類史のひとかけらもないが、余りにこの作品で訴える痛みは空しさだけがこだましている。
自分自身、生きた年代で求める価値感が変容して行くことを実感する・・赤子の様な30歳まで、家庭問題で懊悩した50歳まで、そして今、周囲の温かさに感謝できるからだと認識力を保持できている自分、なりたかった目標は男女差があった当時 社会の壁で門を閉じられたし 他のジャンルは自分が受け取ったギフトの容量の少なさで諦めた‥だが得たものがどれだけあるか。
或るモノに感謝し、時間をはんでいく・・言う事が矮小すぎるかな。 -
人種差別や女性差別をからませながら、失踪の謎のミステリー要素も。だが、深き愛情ゆえの親の呪縛、子の渇望に対する繊細な描写にぐらんぐらん揺さぶられた。自分にも思い当たる節があり、かさぶたをめくられたように、心がヒリヒリした。
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重苦しい作品だった。
一人の少女、彼女の死をきっかけに明らかになる事とは。
差別や偏見は目に見えてわかりやすくあるのではない。それは空気のようにそこにあり続けて知らぬ間に生活に浸透しているのだ。劇中に出てくる新聞の一節は彼らの抱える孤独を百分の一も理解していなくて言葉を失った。 -
言い回しに分かりづらさを感じる部分があり、読み始めは戸惑った。娘の死は既に確定しており、家族それぞれに抱えた思いやすれ違いがどうにもならないところまで捻れていく様は耐え難いものがあった。
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長女のリディアが生きていた時と亡くなった後の時間がごちゃまぜに話が進んでゆき、なぜ自殺するに至ったのかを家族メンバーの視点を替えて複眼的に語られる。
途中ダラダラと冗長な話の展開だったが頑張って読み切った。アメリカでのアジアンヘイトや女性の生き方、浮気するお父さんと秀才の兄、崩壊していく家族の様子は小さな火の手がそこいらじゅうだが、次の小説のタイトルはLittle Fires Everywhereとのこと。 -
家族は難しいねー。