ゴーストドラム (ゴーストシリーズ 1)

  • サウザンブックス社
3.92
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本棚登録 : 154
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909125033

作品紹介・あらすじ

救いやキレイごとがない、予定調和を期待すると裏切られる物語。 この物語は、金の鎖で木に繋がれた賢い黒猫によって語られる。一年の半分が雪で覆われる凍てつく北の国、高い塔に幽閉されて育った皇太子の名はサファという。皇子がいずれ自分を脅かす存在となるとの予言を信じた皇帝は、皇子を孕んだ后を 塔に閉じ込めてしまう。后は皇子を産み落とすと亡くなり、やがては乳母も処刑され、太陽や月の光も知らない皇子は、外への憧れを抱きながら孤独に成長する。 鶏の脚の生えた家で移動する、優秀な魔女のチンギスは、皇子の心の叫びに共鳴し、彼を塔から救い出す。聡明なチンギスは、人間の奴隷の子として生まれ、拾われた子として老婆に育てられたという宿命を背負っていた。 "魔法使いというものは、嘘をかぎわけることができる。それは美しい調べにまざった耳ざわりな音のようなものだ。(本文より)" ゴーストドラムはイタチの頭蓋骨を中央に載せた太鼓。ゴーストドラムを打ち鳴らせば頭蓋骨が文字の上を踊り、魔女に啓示を与える。 "サファはまばたきもせずに、頭蓋骨が文字から文字へとはねたり、すべったりするのを見つめていた。そして頭蓋骨がはねるたびに、それがなにを意味しているのか考えたが、どれ一つ意味がわからない。(本文より)" チンギスは果たしてサファを守り抜くことができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 北の国,魔法使いチンギスが幽閉された王子サファを救い出し,弟子にする所が一番幸福を感じる。一筋縄ではいかない復讐譚。ダークファンタジー(魔法使いクズマ)

  • 風と雪が物語の中から吹き付けてくるようだ。

    魔法使いは弟子が生まれてくることを心待ちにしている
    やがて見つけた弟子を大切に慈しみ、全てを与え、弟子はやがて魔法と世界を身につけていく

    チンギスは稀代の魔女として寿がれるが、一人の魔法使いにひそかに憎まれるようになる

    サファは父に恐れられ忘れられ、塔の小さな部屋に閉じこめられている

    やがてサファの叫びが聞こえたチンギスはサファを探しに行く

    〇バーバヤガー?的な
    〇冬と魔法と歌と色と、自然のあらぶる魂
    〇美しい絵巻物を見たような読後感
    〇氷のリンゴとか動物の足を持つ家帰るとか、ゴーストドラムとか、わくわくする
    〇カバーイラストに惹かれて手にとったんだけど、読み終えてシロクマを選択した画家さんのセンスが凄い!と思った。もちろん良い方で

  • 心さえ死んでなければ、どこへでも行ける。

  • 図書館の本 読了

    魔法使いにだけわかる言葉を伝える不思議な太鼓、ゴーストドラム。ニワトリの脚を持つ家に住む、若い女魔法使いチンギスは、ある日ゴーストドラムを通して救いを求める叫びを聞きつけた。叫んでいたのは皇子サファ。生まれてこのかた、父皇帝によってずっと塔の小部屋に閉じこめられていた……。チンギスはサファを救い出せるのか。荒涼とした北の国を舞台にくり広げられる、荒々しい魔法の物語。
    1987年、イギリス・カーネギー賞受賞作。

    魔法使いの物語。チンギスが中心かと思えばそうではなく、チンギス、クズマ、サファ、この3人が軸になって3つの物語が絡まって紡がれていく。金の鎖につながれた猫が語る、っていうのが魅惑的。シリーズ3まであるみたいなのでゆるゆる読めたら良いなと思う。

    The ghost drum by Susan Price

  • 雪原の静かで厳かなファンタジー

  • あまり心理描写がないので推測するしかないのだけど、できの悪いサファからも学びうるものがあったチンギスに対して、クズマは理解できなかった。わたしたちは300年も生きることはできないけれど、やっぱりチンギスと同じように、ささいな寄り道をつづけた方が、実りの多い人生を歩めるように思った。

  • 一気に読んでしまった。ダレンシャンぐらい暗い内容だったがゾクゾクした。児童書と侮るなかれ。

  • この小説の魔女・魔法使いは神話的で、悟った人を思わせる。
    チンギスもクズマも歌を用いて魔法を使う。今「神話の力」という本を読んでいるが、そこにアメリカ原住民の神話で殺された父を歌で蘇らせる話が紹介されていた。チンギスたちが用いているものと非常に近く感じる。ただしチンギスたちは死人をよみがえらせることはできないし、一度肉体的な死を迎えてしまったら死の世界から出るのも1人ではできない。
    チンギスは作中で死ぬ。そしてよみがえるが、その時に彼女はただの肉になった自分の身体にさして興味を示さない。捨て去っておおかみの餌にしてやるくらいだ。
    これはチンギスが肉体から解放されたことのように思える。元々精神世界を気ままに旅していたチンギスは一度死んで、肉体は執着すべきものではないと知ったのかもしれない。それは仏教でいう解脱に近いものではないか。
    そしてサファはそのチンギスから教えをうける弟子であり、作中で2人は対照的な描かれ方をしている。チンギスは生まれて1年で20歳ほどの肉体を得、しかもその間に精神は様々な世界を旅している。その後も師匠のおばあさんについて世界を見て回り知識を習得していった。サファは生まれる前から塔に閉じ込められ、チンギスに救われるまで世界を知ることがなかった。死に方も、赤い血を流して動的に死んでいったチンギスと、氷のリンゴを口にして死んでいったサファで対照だった。サファはチンギスに導かれ、肉体を捨てる。
    そう考えると、最後のチンギスたちは人間を見捨てたようで少し寂しい。苦しむ人々の声を聞き、助けていたチンギスは人間を見限ってしまったのだろうか。

    それにしても金原瑞人さんの訳は相変わらず頭にすっと文章が入ってきてすごい。翻訳家によってスタンスは違うが、日本語として自然な訳文は金原さんが一番だと個人的に思っている。

  • 今さらながらやっと読んだ。
    噂通りのダークファンタジーだったけど、思ったほど後味が悪くはない。猫の語り部が語るという形でワンクッションあって、少し遠くから俯瞰しているから、昔話ふうの淡々とした味わいが加わっているのかも。あの語り部の部分が、ゴーストドラムの音色さながら、心地よいリズムを響かせているのもいい。

    遠くから俯瞰と言ったけど、物語は、権力や支配者ってものをえぐりまくっているし、為政者が唱えがちな「魔法の言葉」というものもえぐっているし、その切っ先は鋭い。

    魂の旅路が何百年にもわたって描かれている壮大さもいい。

    続編と前日譚の出版資金をこれからクラウドファンディングで集めるみたい。クズマの話、読みたいのかどうか自分でもよくわからないけど。

  • 雑誌で、作家がすごい推していたので読んだ。
    ファンタジーらしく魔法使いが主人公で、偉大な魔法使いになる可能性がある。空想の国の病んだ国王がいる。
    しかし全体的に大きく違う。
    まずは案外あっけなく主人公が死んでしまう。主人公も大勢の魔法使いの1人にすぎず、取るに足らない扱われ方に驚く。
    とはいえ、主人公は不屈の精神で復活し(転生のような感じか)、次作に続く余地があったのに、成長物語としてシリーズ化されていない。2作目では敵役が主人公らしい。
    無敵のヒーローを作らない辺りが、最近のエンタメ本との一線を画す。

    あと、国王が徐々に病んでいくのを描くのに必要だったかもしれないが、国王の非道さが長々と書かれる。正直、もういいよと思う。女帝がいなくなった後についても、また非道な他の誰かが同じ地位につくだけだと言い放つ。
    何かこう、この本で書かれる温かさというのは、知恵のある人が、人道的と思われる行いをした時にだけ起こりうる、いわば奇跡のようなものである。
    逆にいえば、努力で得た知恵と、俯瞰した目線、そして目の前の人を大事にすることでしか、この世で救いが得られることがないという教えが説かれているようでもある。
    とにかく、自然も、心無い人の繋がりも、常に残酷で、世の中は救いようがなく無情に書かれて、突き放すような読後感に、ちょっとたじろぐ。

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著者プロフィール

イギリスのブラック・カントリー工業地帯に生まれる。14歳のとき短編小説のコンクールで入賞して以来物語を書き続け、1987年『ゴースト・ドラム北の魔法の物語』でカーネギー賞、1999年にThe Sterkarm Handshakeでガーディアン子どもの本賞を受賞。翻訳刊行された作品に『エルフギフト 上・下』(ポプラ社)、『12の怖い昔話』、『500年の恋人』『500年のトンネル』(ともに東京創元社)など。

「2020年 『ゴーストダンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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