- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909394576
感想・レビュー・書評
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人類学者による「国家なき社会の研究」による国家論・アナーキー論。生活者が自ら政治をすることが「くらしのためのアナキズム」であるとしている。
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「未開社会」や日本の伝統的な意思決定、コミュニティによる問題解決の一部を取り上げて美化しすぎてる気もした。それによって疎外されてしまう人もいると思う。ただ、多数決によって勝敗が明確にきまってしまうことの弊害やくらしにアナキズムの視点を取り入れる、自ら工夫することの重要性には納得した。
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おー。そっかー。
アナキズムの、
というか、
ずっと心を奪われているアジールの、
一番わかんないところである
「法的拘束力や警察権力のないところで、トラブルが起こったときにどうするか」という問題のヒント。
それは、実際に、国家権力とはあまり関係のないところで生きてる人たちに学ぶといい。
文化人類学を、そういう風な目で見たことはなかったけれど、考えてみれば、文化人類学のステキなところは、異文化に学んで、自分が当然だと思っている価値観を相対化するってとこだもん。
「権力とは何か」にじっと目を凝らしてみるという意味でも、文化人類学の研究に学ぶところはあるよね。
タンザニアのインフォーマルセクターについて調査し重慶大厦のアフリカ人について書かれた小川さやかさんの本にしても、
先日読んだプナンの社会について書かれた本にしても
古くは、パパラギにしても。
そして、本だけじゃなくて、
わたしが日本から脱出する大きな理由の一つが「わたしが日常生活を送っているこの社会の常識を疑う」ということだったよね、昔は。
さて。アナキズム。
読後感としては、うむむ〜、国家権力の力を借りずにやっていくのは、なかなか面倒でストレスフルだな〜、という…。
だってそれ、いにしえの村社会そのものやん。
…うぐぐ。
とはいえ、この人は都会育ちなのか、それを希望に満ちて書かれているので、わたしも希望を持って読み、付箋貼りまくりだったのでした。 -
本書には、『目の前の他者を大事にしよう』という空気に溢れている。
だからこその、ともすれば混沌をもたらしてしまいそうに聞こえる『アナキズム』に深い洞察と共感を与えてくれるのだろう。
翻って、「現代の政治や私たちの思想は、意見の異なる人がやっていけるように、知恵をシボレているか、小異を棚上げ出来ているか」、と問い掛けてくるようだった。 -
かつての「国家なき社会」を研究してきた人類学の視点から現代の国家を再考することを「くらしのアナキズム」と捉え、目の前の苦しい現実を改善するのは「偉い人」ではなく生活者である自分たちの自覚であると説いた本。
勝敗民主主義である多数決はコミュニティを破壊しかねない。自分の意見が無視されたと感じる人がいないような「コンセンサスに基づく政治」こそが民主主義である。コンセンサスを築くために、トップダウンの意思決定を行うのではなく、かつての「寄り合い」のような対話の姿勢を個々人が持つことが重要である。
「対話」の姿勢を尊重するアナキズム的な視点を個々人が暮らしの中で大切にしようという主張はまさに大切な観点と感じた一方、コミュニティの規模が大きければ大きいほどコンセンサスを築くのは難しい。誰もが対話の姿勢を持っているわけではないし、立場や能力が異なれば同じレベルでの対話は実現されない。そういった意味で真の民主主義の実現は難しいと感じてしまった。 -
鶴見俊輔はアナキズムは「権力による強制なしに人間がたがいに助け合って生きてゆくことを理想とする思想」と述べた。デヴィッド・グレーバーが考えた「アナキズム」は「無政府主義」から連想される破壊的なカオスではなく、より民主的な政治が可能になる社会形態を目指す理念と述べた。多数決は民主主義ではなく、可能ながぎり合意が得られるほど対話を繰り返すことが民主主義であり、古いといわれるものや未開と言われる地に、実はヒントがあることを文化人類学者である著者は言う。コロナ禍で多様性が強調され出したのは偶然ではないかも知れず、これからの国家や民主主義を考える契機になると思われる。同時に行政とは別の「まちづくり」にそのヒントは隠されているかもしれないという発想が湧いた。
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暮らしに根付いたアナキズムをいかに実践していくかを平易な文章で示している本で面白い。グレーバーやジェームズ・スコットなど当代でもっとも有名なアナキズム思想家たちの言葉も引用されていて、アナキズムの誤解を解く本としても適している。アナキズムとは何かを知りたい、アナキズム入門したい人にぜひおすすめしたい良書である。またアナキズムに興味がない人でも、国家という存在に違和感がある、国家にすがりたくない人たちにも是非読んでほしい本である。
ちなみに著者の松村圭一郎氏は、文化人類学者であるが、文學界(2022年4月号) によると栗原康氏や森元斎の本でアナキズムを知ったそうである。 -
多数決ありきの現代民主主義。
多数決を取る前に出来ることがある。
対話を通じて、全会一致を図ること。
時間をかけて、関係や場を「耕す」こと。
「茶飲みに行く家の数が
へってしまうかあねえもの」
我々はただ、茶飲み友達を減らしたくない
だけなのだ。
国家に甘え、国家に主権を全て渡しては
いけない。
我々のくらしを我々のもとに、引き戻す。 -