クトゥルー 5 (暗黒神話大系シリーズ)

制作 : 大瀧 啓裕 
  • 青心社
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本棚登録 : 125
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915333583

作品紹介・あらすじ

マサチューセッツ州、アーカム近くの谷間の古い家をおとずれた画家が経験するクトゥルー恐怖を描く「谷間の家」。ヒューペルボリア第一の都コモリオムを襲った、クニガティン・ザウムの恐怖を語る「アタマウスの遣言」。ナイアーラトテップの恐怖を描いた「臨終の看護」等。さまざまな時と空間を舞台に、ラヴクラフト&ダーレス、C・A・スミス、R・E・ハワードなどの作家達が描く、クトゥルー神話連作集成。

感想・レビュー・書評

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  • 巻末の付録で、皆さんがわちゃわちゃやってる身内のネタとして、HPLさんの一族が、ありがたい神様の有難味がない悍ましい婚姻に告ぐ婚姻でできた、てふ有難味の無い家系図があったが、そこのグウィネドさんは、「11世紀ころ渡米したウェールズ人王子」のパパであるといふ謎トンデモ説の有名なのがある、と知り、ははーんと思った。
     かういふかっこいいネタが満載らしいの。ラヴクラフト先生は。
     そんで、青心社は、大阪の出版社で、装丁がアレだったりナニだったりさらにHPLとか出版してるのに、
     長野の図書館でも入れてゐる
     てふ凄い本屋さんなのである。

  •  "cthulhu"をクトゥルーともクルウルウとも表現するのは、"What time is it now ?"を「ホワッタイムイズイットナウ?」とも「ホッタイモイジルナ?」とも表現するようなもので、未知の言語をそのように聞こえたからそのように表現しただけのこと。一般的な表現を使っていいし、読み手を誤導させるためにあえて別の表現を使ってもいいし、自身で新たな読み方を考案してもいい。これはそういう「遊び」でもあるのだから――。
     5集は有名な異次元の怪物のデビュー作であるロングの『ティンダロスの猟犬』やエイボンの書で有名な魔術師であるエイボンが登場するスミスの『魔道士エイボン(土星への扉)』など10篇を収録。
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    『ピーバディ家の遺産』(ラヴクラフト&ダーレス/1957)
     曽祖父の屋敷を相続したわたしは、隠し部屋を見つけたことを機に冒涜的な悪夢に魘されることに――。(ラヴクラフトの『魔女の家の夢』をリメイク。神話色が抜けて、よくあるような妖術師ものに落ち着いている。)

    『ティンダロスの猟犬』(ロング/1929)
     作家のチャーマズは、麻薬が人間の意識を拡大するという持論から、ある東洋由来の麻薬を服用して意識を過去へと遡上させる実験を試みることに。時間を遡り続け、「この世のものではない角度」を通り抜けた先にいたモノとは――。(外見のインパクトと使い勝手の良さから、TRPGでは敵役として登用されることの多いティンダロスの猟犬のデビュー作。設定や表現の大半がこの作品で既に出ていて、神話系ホラーとしても良質なのでTRPG経験者にも神話初心者にもお薦めできる一作。)

    『墓はいらない』(ハワード/1937)
     オカルティストのグリムランは今際の際に、遺言が入った封筒を破り捨ててくれとコンラッドに言い残す。その遺言には隅に妙な文句が書きつけられていた。『墓を掘るな。必要ではない。』と――。(妖術師ものに連なる一篇。ハワードの作風と、彼のオリジナルだが神話特有の怪異性が見事に融合していて読み応えのある作品に仕上がっている。)

    『臨終の看護』(ケイヴ/1939)
     死んだ弟を生き返らせてほしいと邪神に願う妻を心配する夫。彼女を説得したい彼にわたしは、話し合うためにはまず彼女が学んだものと同じものを学ばなければ、とアドバイスする。やがて彼が専門的な無線装置や機械をいくつも買い込んでいるという話を聞いて夫妻の元を訪れてみると、彼は見たこともない無線装置を製作していて――。(魔術ではなく技術による邪神との交信という設定が斬新。確かに邪神や旧支配者の多くは星々の世界にいるのだから合理である。)

    『闇の魔神』(ブロック/1936)
     皆はゴードンが失踪したと思っている。しかし真相は違うのだ。わたしが綴る、ゴードン失踪事件の真相とは――。(ランドルフ・カーターに続く夢見人(ドリーマー)をメインとする物語。幻夢境(ドリーム・ランド)の行き来だけではない、夢見人の、神話寄りのもう一つの側面を創作した点で素晴らしい作品。)

    『無貌の神』(ブロック/1936)
     冒涜的な未知の神像が発見されたという話を聞いて、一儲けを企む山師のカーノティは、密かに関係者を拷問して詳細を聞き出す。迷信に怯える現地人を脅して神像の発掘にこぎつけたカーノティだったが――。(強欲者の典型的な因果応報譚だが、ナイアルラトホテップの邪神としての威光を絡めた自然の猛威にカノーティが甚振られる表現は必読。)

    『戸口の彼方へ』(ダーレス/1941)
     従兄に呼ばれたわたしは久方ぶりに祖父と対面する。祖父は大叔父の暗号めいた遺言の解読を試みており、大叔父が何か超常的な存在と通じていたと仮説を立てていた。その晩、外から妙に美しい音楽の調べが聞こえてきて――。(イタカ物語群の一。結末は予想しやすいが、そこに至るまでの、登場人物をじわじわと追い詰める表現が良い。)

    『谷間の家』(ダーレス/1953)
     絵描きであるわたしは友人の協力で、ダニッチの近くの谷間にある、求めていた条件に合う家を借りることに成功する。以前の住人の持ち物であろうオカルティックな書物を見つけたその晩、わたしは巨大な無定形の生物の夢を見てしまう――。(妖術師ものだが、時系列的にはインスマスで起きた事件の後日談ともなっている。TRPGのシナリオにも流用できそう。)

    『魔道士エイボン』(スミス/1932)
     邪神崇拝の科で追われる身となったエイボンは、邪神から賜ったアイテムで別世界へ逃げ出す。追う側のモルギも同じアイテムを使って彼に追いつくが、そのアイテムは移動はできるが元の場所には戻れない一方通行のものだった。行くあてもないまま歩を進めるエイボンとやむなく行動を共にすることになったモルギ。二人の道中の結末はいかに――?(これもスミス流のユーモアたっぷりの一作。異郷を旅する二人と現地の知的生命体とのやり取りのすれ違いがなんともおかしい。探索者を導く先導者NPCがエイボンのようなキャラクターのTRPGシナリオも面白いかも知れない。)

    『アタマウスの遺言』(スミス/1932)
     かつて隆盛していた都市コモリオム。そこの処刑人だったアタマウスが語る、コモリオムが放棄された経緯とは――? (殺しても生き返る悪人が登場するファンタジーホラー。復活する様は悍ましいという言葉が相応しく、TRPGには「ツァトゥグアの無形の落とし子」というクリーチャーが存在するが、それにこの設定を追加してもいいかもしれない。すなわち、「落とし子と人間はまぐわって子を成すことができ、その子孫は殺されても生き返る」。)

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