- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784915881282
作品紹介・あらすじ
北行伝説、その生成と変容の過程を注視する。そこから見えてくるものとは-郷土・地域の歴史を虚妄の伝説・物語から解き放ちたい…
感想・レビュー・書評
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源義経主従が生き延び北海道へ(後にはさらに大陸へ)渡ったという「義経北行伝説」の生成・伝播過程を検証した論文集。若き義経が蝦夷地で先住民から秘中の「虎の巻」を略取して本州へ帰還するという中世の『御伽草子』が伝える説話と、義経が衣川では死なずに蝦夷地を征服した(さらには大陸に渡り女真族の祖となった)という北行伝説の間には飛躍があり、その原因をシャクシャイン蜂起に求めている(シャクシャイン=義経子孫説の流布、義経の「蝦夷征服」過程とシャクシャイン蜂起鎮圧過程の相似)。北行伝説は東北・北海道の在地の伝承には元来存在せず、18世紀後半期以降に中央(三都)の知識人によって(幕藩体制を擁護する政治性を帯びて)創作されたものが、中世以来の「嶋渡」伝説と混在しつつ現地に受容されていったものとみなす。本書では近世東北地方の由緒・縁起が北行伝説によって変質していく過程を具体的に明らかにする一方、当時から北行伝説を虚偽と批判する考証が存在したことも示し、特に仙台藩の儒者・医者の相原友直の実証的な北行伝説批判を評価している。また、幕末維新期の松浦武四郎が義経北行伝説の拡大に果たした役割を明示し、その対外危機感によるナショナリズムと伝説の連動を批判的に捉えている。
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源義経蝦夷渡り伝説の生成と発展の研究です。
江戸時代に生成されたこの伝説の変容過程、政治的な役割などを明らかにします。
伝説の分析と解体作業を丁寧に行い、地域の歴史意識や地域アイデンティティーを読み解いていきます。