フィヒテ全集 (第16巻)

  • 晢書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (539ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915922459

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  • イエナの戦い(1806)で、プロイセンはナポ1に大敗。ティルジット条約でエルベ川左岸とポーランドを奪われる。ドイツは未だに領邦に分かれてバラバラ。そこで、フィヒテ。ドイツ民族は同じ国民(ネーション)。団結せよ。ドイツ国民の基礎は、言語・大地・共通の記憶・慣習・ルターの宗教・ドイツ特有の教育・文学作品。▼階級を超えた国民全体の教育が必要。教育こそ国家の中心的な機能。ヨハン・フィヒテFichte『ドイツ国民に告ぐ』1808
    ※カントからの影響。自由とは好き勝手することではない。欲望に従って快楽を求めるのは自然の生理に支配されているから自由ではない。自然の生理に服することなく、自分の決めたことをする、それが自由。

    国民は種族ではない。純血の種族なんて存在しない。フランス。ゲルマン人に侵略され混血した過去。言語ではない。宗教ではない。共通の利害ではない。利害を超えた感情がある。▼ネーションは記憶を共有する人びと。歴史の偉人や英雄を共有。つらい出来事の共有は喜びの共有よりも人々を結び付ける。ネーションは他の成員のために自分を犠牲にする感情をもつ。大いなる連帯心。▼ネーションは主体的に形成され続ける。変化し続ける。たとえば、アルザス=ロレーヌは長年、独(神聖ロ)が支配していたが、1700年代に仏に編入。普仏戦争(1871)でドイツにまた奪われた。ドイツ文化の色彩が強い地域だが、その所属は現在の住民の意思(投票)によるべき。エルネスト・ ルナンRenan『国民とは何か』1882
    ※アルザス=ロレーヌ。9割の住民はドイツ系。言語・宗教を強調すると、ドイツ領としての正当性を持ってしまうので、住民投票を主張したのでは。
    ※仏では言語や文化を共有する国民国家がすでに成立していたため、言語や文化をあえて強調する必要がなかった。一方、独は領邦に分かれていて国ですらなかったため、言語や文化による「まとまり」が求められた。

    私がここで、フランス語の授業をするのは、これが最後です。普仏戦争(1871)でフランスが負けたため、アルザスはプロイセン領になり、ドイツ語しか教えてはいけないことになりました。これが、私のフランス語の、最後の授業です。フランス語は世界でいちばん美しく、一番明晰な言葉です。そして、ある民族(フランス)が奴隸となっても、その国語を保っている限り、牢獄の鍵を握っているようなものなのです。フランス万歳! アルフォンス・ドーデ『最後の授業』1873

    違和感と敵意をもつ、自分は所属しない別の集団out-group。こうした集団との関係は、協定で緩和されない限り、戦争と略奪の関係。自分たちの共同体のメンバー以外は潜在的な敵。自分の属する民族集団を優秀とみなし、無意識に自民族の価値観を基準にする。▼法律で公式に制度化されているわけでもなく、道徳として抽象的に一般化されているわけでもないが、人々の間に共有されている慣習的な行動様式で、違反者に厳しい制裁が加えられる規範・習律がある(モーレス)。ウィリアム・サムナーSumner『フォークウェイズ』1906

    法による結びつきに基づくネーション(西欧)。習慣・方言・血による結びつきに基づくネーション(東欧)。ハンス・コーンKohn『ナショナリズムの理念』1944

    ナショナリズムは1800年代初めに生まれた邪悪な教義だ。この教義では、人間はネーションに分けられ、政府の唯一の正当なかたちはナショナルな決定だと考える。国家の権力行使の正当化、社会を組織化するために利用される。教義・イデオロギー。▼邪悪な教義であるナショナリズムの起源は『ドイツ国民に告ぐ』フィヒテからだ。種族を強調した。ドイツ民族。▼フィヒテの基礎になったのがカントの人間理解。個人が自由であるためには、意志の自律や自己決定の自由が実現されていないといけない。個人が自分自身だけで完成されることはあり得ない。個人は全体の一部であり、全体から個人の意味が引き出される。個人は自らを国家の意志に没入させることによって自由を見出す、とされた。エリ・ケドゥーリKedourie『ナショナリズム』1960
    ※ドイツの個別事例、ナショナリズムの一側面を記述したに過ぎないとの批判。
    ※ユダヤ人。バグダード生まれ。英国籍。LSE。

    従来、ドイツの市民は共通の言語・文化・歴史を基礎とするナショナリズムで結びついていた。しかしナチズムの苦い経験。これからは自由で民主的な法や制度への愛着によって結びつこう。民主的な憲法がもたらす自由への愛着を通じて、ドイツの民主主義を維持しよう。憲法ペイトリオティズム。ドルフ・シュテルンベルガーSternberger1970 →ハーバマス

    国民の属性を人種・言語・血統に求める。排他的。エスニック・ナショナリズム。▼国民の属性を自立した個人の政治参加意欲に求める。包摂的。シヴィック・ナショナリズム。マイケル・イグナティエフIgnatieff『民族はなぜ殺し合うのか』1993
    →リベラル・ナショナリズム

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