潜航指令: 証言-北朝鮮潜水艦ゲリラ事件

著者 :
  • ザ・マサダ
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915977626

感想・レビュー・書評

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  • 1998年出版。

    本書は1996年に韓国に侵入した北朝鮮の潜水艦が座礁し、乗員26名中25人が射殺、あるいは集団自決をした事件の唯一の生存者が書いたもの。

    1人が生け取りにされたことで、この事件の輪郭が少しはわかった・・・とはいうものの、著者は潜水艦の座礁後、かなり早い段階で仲間と別れているためにわかることは少ない。また、浸透作戦の目的についても本人は聞かされてないという。それは十分にあり得ることだが、少々物足りなさも感じる。
     
    著者を含む、作戦参加者らは北朝鮮ではいわゆる軍のエリートであり、将校でもあり、苦難の行軍時期にあたる当時にも普通の人は食べられない肉を食べ、牛肉すら日常的に食べることができ、お酒も海外製の高いものを十分に飲むことができる暮らしをしている。そうまでして育てた兵士らを南に送っておいて、極めて杜撰な作戦はラングーン事件を想起させる。
     
    彼らは韓国に浸透するため、韓国の一般人のような服を与えられているが、それは韓国人から見てもすぐに怪しまれるような「20年前」の服装だったという。また、海岸地域の地図を覚え込んでやってきたものの、山中にある農場小屋にも電話があるということすら聞かされておらず、著者はそうした小さなミスの積み重ねにより生け取りにされる(しかし、11人もの隊員が集団自爆をしているため、もしその中に彼がいれば彼も死亡しており、この事件について語れる人物は一人もいなくなったかも知れない)。
    敵地に兵士を送り込んでおきながら、この杜撰さはなんなんだろうか。失敗した兵士が自爆して作戦のことを漏らしさえしなければいいということなのだろうか。
     
    結局、唯一の生存者が作戦の目的を知らないため、なぜこの時期に北朝鮮が潜水艦を送り込んできたのかは現在もわからないままである。
    この事件の発覚も契機となり、北朝鮮に軽水炉を提供するという事業は停止され、北朝鮮はこの年の年末に謝罪の声明を発表することになる。それだけの危険をおかしてまで遂行しようとした作戦は一体なんだったのだろう。

  • これも「半島を出よ」の参考文献にあったんだと思う。なるほどこれ読んで村上龍はコリョの兵士たちの描写につなげたんだろうなあ。単純に北朝鮮の潜水艦の特殊部隊員について読むだけでもそこそこ興味深い。韓国の国民は貧困にあえいでいるはずなのに、農家に電話があるのか?とかこのあたりはとてもリアル。北朝鮮が用意したアメリカズボン(ジーンズ)の質が悪すぎてすぐに工作員だってバレたってのはすごい皮肉。

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