武学探究 (巻之2)

  • 冬弓舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784925220187

感想・レビュー・書評

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  • ・甲野: 人間の眼は容易に騙されますからね。たとえばゴキブリが物の隙間から隙間に走りこむと、とても速いように見えます。それは狭いところで見るからそう感じるのであって、広いところで落ち着いて見れば、人間が歩く時速4kmの速さにも及ばないほどなのです。

    ・光岡: 「形」から学んでしまうと、形は同じでも中身が違っていることがある、では何を信じればいいかというと、それは「感覚」です。しかし感覚は自分を騙すものでもあります。なぜなら、感覚を判断するのは平面的な意識だからです。どうしても自分に都合のよい感覚だけを取り込もうとするわけですね。ですから、感覚は完全に信用することはできない。では何を基準にすればいいかといえば、そこでまた「形」に戻るのです。「形」にはたしかに構造的な原理原則が存在していますから。

    ・光岡: 僕の頭には常に、韓老師の「百分一(パイフェンイー=1%)という言葉があるのです。韓老師は僕にこう言われたのです。「あなたの持っているすべてのものは、そのそれぞれが、あなたの能力を構成する要素のうち1%でしかない。感覚も思考も力も構造も、あなたのすべての能力のうちの1%にすぎない。それらすべてを合わせて、あなたという人間がここに存在するのだ」。

    ・光岡: 韓氏意拳では、現象としての「果」に対してその「因」を修正するという、単一的なことを求めるわけではありません。「果」に対する「因」をも超えた根源的な「能力」そのものを求めます。技術や方法を求めるのではありません。韓競辰老師は「具体的なものを求めるのならば、学べば学ぶほど囚われてしまうだろう。しかし能力については、学べば学ぶほど自由になる」と言われます。

    ・光岡: 韓氏意拳には、「標準行為」と「典型行為」という考え方があります。「標準行為」とは、各人各様の能力の形をある標準的な形に当てはめてしまうことです。我々は自分自身でも知らないうちに、この行為を行っています。たとえばある自然な動作ができたとして、「なるほど、これが自然な動作か」と意識化した瞬間に、標準化が行われているわけです。
    …もう一つの「典型行為」とは、自分がある行動を行うとき、その特性や個性がそのまま表現され、空間的、時間的、構造的に最も適した状態が自然と表れた行為のことをいいます。

    ・光岡: 「技の寄せ集めよりも、もっと意味のないものがある。それは能力の寄せ集めである」

    ・光岡: 考えないといけないんですよ。しかし実際に行動しているときには、考えてはいけないのです。

    ・光岡: 「間違った方法で行った結果、失敗してしまうのはかまわない。しかし間違った方法で成功してしまうのが最も危うい」

  • 巻之一から巻之ニへ。その内容の進化と深化のありようを武学「探究」と名付けられたのだと思う。

  • 帯表
    さらに深く、さらに先へ−
    進化する術理と身体の哲学

    もし私が敗れることがあれば、
    それは中国四千年の思想、哲学すべてが
    破り去られるのと同じことだ
    しかし、もし私が破れることがあれば、
    それはそれですばらしいことだ
    なぜならばそれは、それ以上に本質的で
    すばらしい思想、哲学があるということだからだ
    (意拳創始人 王薌齋)
    帯背
    身体は知っている

  • 何の運動であれ、稽古する人には、大きなヒントが記されていると思う

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著者プロフィール

1972年岡山県生まれ。日本韓氏意拳学会(http://hsyq-j.blogspot.jp/)代表、および国際
武学研究会(http://bugakutokyo.blogspot.jp/)代表。多くの武道・武術を学び11年間ハ
ワイで武術指導。2003年2月、意拳の創始者、王向斎の高弟であった韓星橋先師と、その四
男である韓競辰老師に出会い、日本人として初の入室弟子となる。 現在、日本における韓
氏意拳に関わる指導・会運営の一切を任されている。共著に内田樹氏との『荒天の武学』
『生存教室』(集英社新書)、甲野善紀氏との『武学探究』『武学探究 巻之二』(冬弓舎)等。


「2017年 『退歩のススメ 失われた身体観を取り戻す』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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