鏡の中を数える

  • タイフーン・ブックス・ジャパン
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784990362102

感想・レビュー・書評

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  • 視覚の錯誤.認識の齟齬.わたしがあなたである誤作動.
    しかし視線は交差している.直線ではないが.
    鏡を正面から覗いた時,鏡が逆転させているのは左右ではなく前後であるから,私の目から放射された点線状で途切れ途切れになっている,あるいはくにゃくにゃ歪曲した視線は周囲を旋回し,後頭部を目掛けて飛んでくるのだ.奇妙な視線に刺され曝され攫われる十二篇.

    印象に残ったのは【あゆみは独り言を言ったことはない】.あゆみ/AYUMI/A YOU ME.完璧なまでの不完全さを備えた女の名.わたしであり,あなたであるが,誰でもない者.

  • 最初の二篇が秀逸。小説を構造で遊ぶ。タイのポストモダン、というのも珍しい感触。渇いているようで、内省的な印象。

  • タイの作家の短編集。
    「存在のあり得た可能性」を読みましたが、珠玉の一編です。言語や文化の相違を超えて、強烈に思いを伝えられる文学というものの存在意義を、改めて感じました。これから社会に出て大人になっていく同年代の人たちに、ぜひ読んでもらいたいです。15分くらいで読めるので。ライオンのくだりとか、もう部屋に大きくコピーした文章を貼っておきたいくらいだ。戒めとして。
    あと訳者がすごい。めちゃくちゃ読みやすいです。タイ文学なんて~と敬遠しないでください、絶対おもしろいから!と自信を持っておすすめできます。

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著者プロフィール

1973年、バンコクに生まれる。14歳までタイ国内で育ち、教育を受けたあと、アメリカに渡航し、現地で学ぶ。ニューヨーク、クーパー・ユニオンの美術学科で学士号を取得して、短期間だけグラフィック・デザイナーとして働く。26歳のとき、タイの法律にのっとり、帰国して兵役に服する。6ヶ月の軍事教練を終了して、本格的に執筆活動をはじめる。2002年に、短編集『可能性』が東南アジア文学賞の短編部門を受賞する。この受賞によって同作品集はベストセラーとなり、作品がタイ社会で広く読まれ、批評されるようになる。

現在まで短編、長編、エッセイ、論考の執筆を続けており、Studio VoiceやEsquireといった日本の雑誌に寄稿したこともある。また、日本では短編集『鏡の中を数える』(宇戸清治訳、タイフーン・ブックス・ジャパン、2007年)や長編小説『パンダ』(宇戸清治訳、東京外国語大学出版会、2011年)などが出版されている。2016年には、短編集がはじめて英訳され、英国で出版された。さらに、作品が中国語やイタリア語でも翻訳出版されている。

執筆活動に加えて、バンコクで小規模な独立系出版社Typhoon Booksを経営している。デザイナーとしても活動するかたわら、さまざまなアート作品や映画作品も発表している。2017年には、社会的に認知され、優れた中堅のクリエイターにタイ文化省が与えるシンラパートーン賞の文学部門を受賞した。

「2020年 『新しい目の旅立ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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