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感想・レビュー・書評
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「ネット化された霊長類」はSNS、ネット全般への依存の警告。アメリカはこういう時に坑道のカナリアになってくれるので様子を見たい。個人的にはこの時代に子供じゃなくてよかったと思う。
「電子タバコは安全か?」では、電子タバコの蒸気に重金属や発がん性物質の可能性とのこと。ニコチン中毒者が他人に迷惑をかけずに自分だけで早死にする分には別に異存は無い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Scientific American日本版、12月号です。
先月号のレビューで、来月は多分、ノーベル賞特集だろう、なんて書いてしまったのですが、さらっと流してあったらどうしよう~とちょっと思っていました。よかった、ありましたw
日本人3人が受賞とのことで、件の青色LEDを中心として、緊急特集としてまとめられています。物理学賞は総計24ページ。うち10ページ分が、1994年に当時まだ日亜化学に在籍していた中村修二氏が寄稿した記事の再録です。青色高輝度発光ダイオードの開発に成功した当時のもので、熱っぽい語り口が印象的です。赤崎勇・天野浩両氏も合わせた受賞の談話や開発の経緯もあり、また、発光の原理に関する解説もあります。ごく単純に言ってしまうと、p型半導体とn型半導体の間の界面で電子が移動することにより、エネルギーが放出されてこの一部が光となって放出されることになります。光が何色であるかは半導体を作製する材料によりますが、青色の場合、選択肢は3つ。このうち、効率の問題から、セレン化亜鉛と窒化ガリウムに絞られました。多くの研究者は前者に着目していましたが、赤崎氏は扱いにくいけれども丈夫である後者に入れ込み、弟子の天野氏とともに、数々の難問に取り組んでいきます。中村氏は別のグループですが、効率がよくなる方法を求め、劇的な改良を成し遂げました。
青色ダイオードがなぜ大切かといえば、青色自体というよりも、これが開発されたことで、白色の光が得られるようになったことが大きいとのこと。
低エネルギーで発光し、寿命も長いLED。システィーナ礼拝堂の照明にLEDが導入されたというニュースもありましたが、今後、さらに利用が広まることでしょう。
生理学・医学賞と化学賞については、それぞれ見開き2ページ。
生理学・医学賞は空間認識のしくみの解明につながる研究です。グリッド(=格子)細胞と呼ばれる細胞は、それぞれが、空間をさまざまな大きさの格子で区切り、その頂点部分でシグナルを生じます。それを組み合わせて統合するのが場所細胞と呼ばれる細胞で、個体が空間のどの箇所にいるのかを判断します。なかなかおもしろい研究ですが、これが方向音痴や認知症の徘徊の解明に即、つながるかといえば、そう単純なものではなく、むしろ、空間把握のメカニズムについての研究は、端緒についたばかりといえそうです。
化学賞は高解像度の蛍光顕微鏡の開発で、化学というよりはむしろ物理に近い感じもします。生物を生きたまま、細かいところまで見るためには、画像がぼやけないようにすることがポイントです。1つの方策としては、周囲の余分なシグナルを消すレーザー光を当てて、中心を撮影し、スキャンしながらシグナルを拾っていきます。もう1つの方策としては、見たいものの一部の分子だけが分散して確率的に発光するようにして、多くの画像を撮影し、得られたものを統合して1つの図とします。こちらも今後の応用が期待される成果です。
STAPについても4ページ。理研上席研究員の会見、早稲田大学の会見ともに、総括されています。上席研究員の方の筋の通し方はもう本当にすごいなぁと思うのですが、何というか、個人の良心に負うところや、実際の時間的・労力的な負担があまりに大きすぎるようにも見え、こうした問題に関しては、長い目で見ると、やはり何らかの公的な機関が必要なのではないかと思えてきます。
さて、今号の本当の特集は、「人類進化」。かなり大きな特集です。
近年の研究で、現生人類のDNAにネアンデルタール人やデニソワ人と共有される部分があることもわかってきていますが、人類進化の系統樹は、分岐が多い、かなり複雑なもののようです。道具の使用や気候変化、人類が協力する力に関しての話題もあります。
個人的に一番インパクトがあったのは、「いまも続く進化」と題された記事。青い瞳やまっすぐな黒髪などは比較的新しい変化で、3万年以内に生じたものとのこと。
よく知られる鎌状赤血球症は、マラリアに抵抗するため、3000年以上前にアフリカで生じた変異ですが、実はアジアには鎌状赤血球症のデメリットを伴わない、マラリア抵抗性の変異があるのだそうです。優れた変異ではあるのですが、(少なくとも数千年で)鎌状赤血球の変異を駆逐するほどには優位性に差がなかったと考えられるようです。
コレステロール値や体型で出産率にわずかな差があることが観察されてきていますが、これが積み重ねられていくとどうなるか。長いスパンでは意外に大きな変化が生じていくのかもしれません。
私たちは決して終着点ではなく、まだ進化の旅の途上にいるのです。
さて、例によって長くなってしまいましたが、最後に私のお気に入りの連載コラムの紹介を。
S. マースキーの「ANTI GRAVITY」。毎回、ちょっぴりシニカルに笑わせてくれます。今月の話題は何だか、落語の「粗忽長屋」を思い出させる、ちょっと哲学的なジョークのお話。1冊読むのはちょっとしんどいかなーという方も、こちらは1ページだけです。書店で見かけたら立ち読みでも。 -
典型的な文系人間(高校時代は理系コースだったんだけどなあ)ですが,こういうのも好きってことで。