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感想・レビュー・書評
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つい先日物故した思想史家による啓蒙主義の研究書。本書解説では、カッシーラー、アザール、ギュスドルフ、フーコーによる同時代を扱った研究書と比較され、18世紀の知的世界の変化の担い手を具体的に叙述している点に本書の特徴が求められている。また同じく指摘されているように、本書では「神経の回復」がキーワードとなっている。すなわち、「神秘主義の衰退、生への希望の増大、努力に対する信頼の回復、探究と批判への積極的参加、社会的改革への関心、世俗主義の増大、あえて危険に立ち向かおうとする意志の増大」(4頁)といった傾向が18世紀精神史を貫いているというのがゲイの視座である。こうした傾向を18世紀の諸思想――自然科学、芸術論(美学)、社会科学――から丹念に読み取っているのが本書の強みであろう。その際頻繁に言及されるのはフランスの「フィロゾフ」――特にディドロとヴォルテール――であり、イギリスのヒューム、ギボン、ドイツのレッシングである。ゲイは啓蒙主義の世俗的側面を非常に評価しているが、これをドイツ啓蒙における宗教問題の比重の高さと比較して考えてみると面白いかもしれない。レッシングは本書で取り上げられるように、近代美学の重要な先駆者である。しかし、ドイツ啓蒙の中でも独特な宗教論・神学を展開した人物でもある。そのような宗教との関わり方をゲイの展開する啓蒙主義の歴史とどう関係させるのかを考えてみることも、ドイツ啓蒙を多少かじったことのある人々にとっては興味深い問題かもしれない。
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