グレー・ラビットいたちにつかまる (1979年) (児童図書館・絵本の部屋―グレー・ラビットシリーズ4)

4.00
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  『グレー・ラビット・シリーズ』は、大うさぎの「ヘアー」と、りすの「スキレル」と、一緒に暮らしている、灰色うさぎの「グレー・ラビット」を中心とした、人間のように洋服を着て二本足で歩く動物たちの、電気もガスも無い、ささやかな生活であるからこそ実感できる幸せを瑞々しく描いており(マーガレット・テンペストの絵が、更にその幸せを上乗せしてくれる)、その舞台は、作家「アリスン・アトリー」が幼い頃に体験した、自然に囲まれたイギリスの田舎暮らし、そのものの素晴らしさを描いているのだが、今回のお話は、いつも以上にちょっとシリアスモードかも。


     ここ最近、急に増えだしたという盗難事件は、気が付いたら既に盗まれた後であり、誰もが皆、犯行の瞬間を見ていないものの、盗まれた場所は共通しており、その小さな谷間はジギタリスの花が多く、誰かが通ると釣り鐘が揺れて音を立てるのである。

     そして、その音が呼び鈴であるかのように知らせとなって、ひっそりと花の陰から嬉しそうに覗いている者が、全部で・・・三匹。実はこの谷間には、石垣に小さくぴったりとくっつき、花に紛れて巧妙に隠されている、いたちの家があって、彼らの忍び足と手先の器用さにより、これまで誰にも気付かれることなく盗みを働いていたのであり、その横暴ぶりは酷く、とうとう被害に遭っていないのは、グレー・ラビットと「ふくろうはかせ(彼に盗みを働く、命知らずな者はいないだろうが)」だけとなった。

     しかし、そんな危険な「あやしい小道(命名者ヘアー)」を、グレー・ラビットは市場に行って帰りが遅くなったことで、仕方なく近道として通ることになり、案の定、彼女はいたち達にさらわれてしまい、何故、そのような愚かな事をしたと思うかもしれないが、彼女はお腹を空かせているヘアーとスキレルの為に急いでいたのであり、こうした彼女の揺るぎない思いは、後々の場面に於いても実感出来る。

     その頃、ヘアーとスキレルは、一向に帰ってこないグレー・ラビットを大騒ぎで探し回るが、当然見付からず、意を決したヘアーは怖いのを何とか我慢して、ふくろうはかせに助けを求めながら、あやしい小道にも思い切って行ってみるが、逆にハンカチを盗まれてしまい、為す術なしとなるものの、この場面はグレー・ラビットにとって、ヘアーが探しに来てくれたことを知ることによって、友情の素晴らしさを実感出来るエピソードであるし、彼女は彼女で、いたちが手に取るハンカチを見て、彼のお気に入りであることを心配している、優しい心の持ち主なのである。

     そして、私が最も印象的だったのは、物語の終わり方よりも、グレー・ラビットの持つ、その心の気高さであり、確かに彼女は、いたちたちに捕まり、家事を強制的にやらされて辛い思いも味わったが、それでも、いたちたちに歌を歌ってほしいと頼まれたときの、『わたしのお友だちに乱暴したり、ものをとったりしないと約束するなら、うたってあげます』には、いたちたちからどんなに責められても決して妥協しなかった、その芯の強さに、彼女にとっては、それくらいのかけがえのない大切なものが、友だちだったのだと実感させられて、そのストレートな思いに心を打たれたのは、原題の『LITTLE GREY RABBIT & THE WEASELS』の、彼女といたち三匹の天秤に於いて、どう見ても彼女に分が悪いと思われるのに、大切なものが係わってくると、そんなことは全く関係なくなり、普段はとてもおっとりとした優しい彼女が見せる、これだけは絶対に譲りたくない、わたしはこうなんだという美しい気高さを持ち続けているからこそ、周りの友だちも皆、彼女に惹かれるものがあるのだろう。


    《おまけ》
     今回、もぐらの「モールディ」は、盗まれたのが幸いして、初めてグレー・ラビットの家にお泊まり出来た上に、新しいチョッキを彼女が編んでくれて、まあ嬉しそうなこと。そういえば、盗まれる前に『はいいろさんを、うっとりさせよう』なんて鼻歌も歌ってたっけね♡

     しかし、うかうかしてられないかもよ。なんといっても、『よく知っているかわいい声』からの、『あのうたを、ちょっとうたってくれんかね』の、この一連の流れは、もしかしたら、「新たなライバル出現か!?」って感じで、彼女を巡る恋の行方も見逃せません(こんな見方してるのは、私だけかもしれないが)。

    • たださん
      111108さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(^^)

      そうなんですよ。
      思っていた以上に、話が繋がっている部分はあるのかな...
      111108さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(^^)

      そうなんですよ。
      思っていた以上に、話が繋がっている部分はあるのかなと感じまして、モールディがちょっとずつ、本音を出しつつあるのもそうだと思います♡

      また、いたちについては、岩波少年文庫の最初の話を思い出しまして、あの頃は、まだヘアーやスキレルがグレー・ラビットに冷たく当たっていた時期で、それでも彼女は彼らの為に・・・と思うと、あの頃から、彼女の心の清らかさは変わっていないんだなって、感慨深い気持ちになりました。
      2023/11/02
    • 111108さん
      たださん、こんにちは。
      お返事ありがとうございます♪

      なんとなく落ち着いて達観してるように見えたモールディにもそんな部分があるのですね。変...
      たださん、こんにちは。
      お返事ありがとうございます♪

      なんとなく落ち着いて達観してるように見えたモールディにもそんな部分があるのですね。変化楽しみです!
      グレー・ラビットをたださんのレビューから読み始めて、はじめは何故こんなに人のために尽くすのかしらと思ったのですが、そこは変わらないのですね。私も読んで彼女の理解を深めたくなりました♪
      2023/11/03
    • たださん
      111108さん、こんばんは♪
      更なるお返事ありがとうございます。

      決してメインストーリーではありませんが、ある意味、モールディの物語であ...
      111108さん、こんばんは♪
      更なるお返事ありがとうございます。

      決してメインストーリーではありませんが、ある意味、モールディの物語であったのかもしれませんので、是非お確かめ下さい。思わず、クスッとさせられる微笑ましさがあると思います(^^)

      それから、主役のグレー・ラビットのブレの無さも、作家「アリスン・アトリー」の伝えたい事が込められているようで、やはり、彼女が安定しているからこそ、ヘアーやスキレルが、より伸び伸びと描けるのだろうなと感じました(^o^)
      2023/11/03
  • クライムノベルに近い不穏なトーン。三匹のいたちの隠れ家の前を通る者は皆追い剥ぎ被害に遭っていたが、ある日グレーラビットはいたち達に拉致監禁されて奴隷のような状態に。歌の披露とフクロウの背に乗って脱出する所だけが救いかな。

    • たださん
      111108さん、こんにちは♪

      そうですよね。普段と違うムードを漂わせながらも、そうした世界で暮らしている現実感も与えてくれて、彼女たちが...
      111108さん、こんにちは♪

      そうですよね。普段と違うムードを漂わせながらも、そうした世界で暮らしている現実感も与えてくれて、彼女たちが暮らしている世界は、決して単なるファンタジーではないことを、111108さんのレビューから感じられました。

      それでも、自分を譲らないで生きていく、グレーラビットは凄いと思います(^^)
      2023/11/25
    • 111108さん
      たださん
      今回はグレーラビットに対する酷い仕打ちのあまりの生々しい描写に、いたち達に恐怖すら覚えてちっとも和めずにいました。
      でもたださんの...
      たださん
      今回はグレーラビットに対する酷い仕打ちのあまりの生々しい描写に、いたち達に恐怖すら覚えてちっとも和めずにいました。
      でもたださんのレビューの時恋バナ的なお話したのを思い出して、やっとクスッとできました。今回モールディは呑気過ぎかも?というか、ママに甘える坊や的雰囲気でした。やっぱり「あのうたを、ちょっとうたってくれんかね」のあの人?がなんと言ってもカッコよかったですよね!ライバル現るですね♪
      2023/11/25
    • たださん
      111108さん
      確かに恋バナが、ひとつの和みになっていましたよね♪
      モールディは、基本的に素直な性格だと思うのですが、それとはまた対照的な...
      111108さん
      確かに恋バナが、ひとつの和みになっていましたよね♪
      モールディは、基本的に素直な性格だと思うのですが、それとはまた対照的な、強面の裏に潜ませた歌声に惚れるという、あの人の意外な一面と、前から空を飛んでみたかった彼女の満足度が気になり、今後もその行方を見守りたいです(^^)
      2023/11/25
  • 8歳 娘と一緒に
    夕ご飯が終わってソファですぐ読んで欲しいとお願いされました。

    さらっと一人で目を通していたみたいで、
    いたちがこわい~!
    グレイラビットがかわいそう!シンデレラみたいになっちゃってる。
    と次女が言いました。

    読んでみるとぞっくっとするほど。
    かしこいふくろうが助けに来てくれた時は歓喜!
    もう大興奮でした♡
    とってもよかった~!

    一人で小道を歩くのが怖くなるほど・・・
    友達って大切!
    グレイラビットの日頃の行いの良さが
    人が集まる理由だと勉強になりました♪

全3件中 1 - 3件を表示

アリスン・アトリーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×