発熱 (1970年)

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感想・レビュー・書評

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  • 物語が9ある。

  • デビュー長編作『調書』に続くル・クレジオの短編集。日常に潜む狂気が静かに流れだし、やがてイメージが奔流となり目眩くイリュージョンを醸し出す。光と闇の侵食が退いては押し寄せ景色を膠着させる。その瞬きの間に、自身の表皮がひっくり返り世界を内包する。ニースの街並や海岸を夜となく昼となく歩き回る青年の自意識からの浮遊からの混沌からの解体に、突然の痛みや発熱に襲われ自我が崩れるその先の反世界との調和に、感覚を過敏に尖らし夢中に読んだ。絶望を伴う危うい世界であるけれど、抗うことなどできやしない絶対的無垢の恍惚の世界。

  • 些細な症状からヒビが入り、剥落する「正気」。そして発露する始原の混沌。

  • ノーベル文学賞を受賞しつつも日本での知名度はイマイチなフランス人作家。
    どことなく神経症的な文体が印象的。
    歯痛を扱った珍しい短編『ボーモンが痛みを知った日』やシニカルな天才児を描いた『マルタン』が特に良かったな。

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著者プロフィール

(Jean-Marie Gustave Le Clézio)
1940年、南仏ニース生まれ。1963年のデビュー作『調書』でルノドー賞を受賞し、一躍時代の寵児となる。その後も話題作を次々と発表するかたわら、インディオの文化・神話研究など、文明の周縁に対する興味を深めていく。主な小説に、『大洪水』(1966)、『海を見たことがなかった少年』(1978)、『砂漠』(1980)、『黄金探索者』(1985)、『隔離の島』(1995)、『嵐』(2014)、『アルマ』(2017)など、評論・エッセイに、『物質的恍惚』(1967)、『地上の見知らぬ少年』(1978)、『ロドリゲス島への旅』(1986)、『ル・クレジオ、映画を語る』(2007)などがある。2008年、ノーベル文学賞受賞。

「2024年 『ブルターニュの歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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