- Amazon.co.jp ・本
感想・レビュー・書評
-
ウィリアム・グラッサー氏の「選択理論」を知ってから、その精神療法と心理療法へのアプローチである「現実療法(リアリティ・セラピー)」にも興味を持つようになった。そこで本書を読むことになった。
本書を読み始めてまず驚かされたことにうつ病や神経症、精神病は存在しないと言い切っていることである。精神病というものは当たり前に存在する病気であってそれが常識だと思っていた私は、精神病が存在しないなどと考えたこともなかった。
ウィリアム・グラッサー氏によれば、人間は現実の世界で欲求充足している存在であって、もし現実の世界で欲求充足できないと、現実を否定して嘘(虚構・空想・幻想)の世界で欲求充足するようになるというのである。そして、嘘(虚構・空想・幻想)の世界で欲求充足するようになった人間を精神病という病名でレッテルを貼っているだけなのだというのである。
ウィリアム・グラッサー氏によれば、欲求の中で最も重要なものは「愛される」ということと「認められる」ことの2つであるという。
嘘(虚構・空想・幻想)の世界で欲求充足して生きている人間に共通する特徴として現実に対する責任性の欠如があるというのである。
確かに、精神病者とされている人や犯罪者・非行者(不良少年・少女)などには、自分の世界に生きており無責任な言動が共通して目立つ。
現実療法(リアリティ・セラピー)の治療では、患者本人を現実に戻して責任性をもたせるように患者個人にかかわっていくという技法を取る。
また、現実療法(リアリティ・セラピー)は精神分析に代表される伝統的な精神療法を否定している。専門の精神分析医から無意識の抑圧や過去の心的外傷を暴き出しても治療効果はないというのである。それどころか、患者を病者とみなして自分に対して無責任にしてしまうので逆効果であるとさえいっている。これに関しては、私自身も精神分析関連の本を読んだとき、患者が自分の抑圧された葛藤を知ったとしてもそれだけで治るものだとうかという疑問をもったことがあるので頷ける。
現実療法(リアリティ・セラピー)の対象となるのは、うつ病や神経症、精神病とされる患者だけでなく犯罪者や非行者(不良少年・少女)、学校教育における学生・生徒・児童と広範囲に及ぶ。
心理学や精神療法に興味のある私としては非常に啓発されるところがあった本である。詳細をみるコメント0件をすべて表示