現代アメリカ文学全集〈第1〉シャーウッド・アンダスン,ソーントン・ワイルダー (1957年)

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  • アンダーソン『貧乏白人』のみ。

    「貧乏白人」と呼ばれたのらくら者の町出身の男の子が成長していくさまを描いた物語。プロットが弱いといわれるアンダーソンの長編なので、どんなものだろうと危ぶみながら読んだのだけれど、意外なほど面白かった。主人公のヒューは「貧乏白人でいてはだめなんだ」とひたむきに努力するのだけれど、彼もまたアンダーソンの小説の常連である「いびつ/グロテスクなひとびと」のひとり。人と親しい関係を作れなくて苦しそうで、この子はどうなっちゃうんだろうと思って読みやめられなかった。

    第二の主人公といえそうなクララからも目が離せなかった。アンダーソンは女性の良い要素として母性を持ち出し過ぎなのがちょっと気の毒というか残念なところなのだけれど、彼女の腹がすわるまでの葛藤は、とても率直で(ほかのだれもと同じように)自己中心的で、読んでいて気持ちがよかった。女の人を妙にクニャクニャさせないのはアンダーソンのいいところだと思う。みんな生き残るために大変なのだ、だからちょっとくらい言動がおかしくてもいいじゃないかという気持ち。

    『貧乏白人』は、ヒューの人生の物語であると同時にビドウェルの町の発展の物語でもあって、町が育つ話が好きな者としてはそこも読みごたえがあった。アンダ―ソンはインガルス・ワイルダーの10歳年下で、ほぼ同世代。『貧乏白人』は『大きな森』シリーズと時代的には連続していて、同じように誇り高い職人が登場したり、パーティでは人々が「ジッグ」を踊ったりするのだ。「あの人たちがこんなに急激な変化に飲み込まれたのか」と、町や周辺の農園の人たちの言動のひとつひとつが興味深かった。反産業主義のアンダーソンなので、畑や自然の描写に作者の意地と技量が決まっていたのもポイント。ミシシッピ川の四季や広大なキャベツ畑が実に美しいものとして表わされていた。Googleで検索して出てきた画像では感じ取れない美しさがあった。

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