雨の朝巴里に死す―他二篇 (1955年) (角川文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • 「グレート・ギャツビー」を書いたフィツジェラルドの短編集。

    「雨の朝パリに死す」とは映画の邦題。映画の題名がすばらしくて中身はそれほどじゃない(題のつけ方がうまい?)という一時期があったね。これもどうだったのだろうか。

    「ふたたび訪れたバビロン」が原題で、悪徳の都バビロン(ここではパリ)にて酒乱の末、妻を死なせた苦い思い出がある。ふたたび訪れて悔恨かられるが、過ぎ去った日々は帰らずとも、幼い娘とともにまともな生活を求めそれに希望を見出す。

    と書くとしごく道徳的に思えるが、いやいや、その悪徳の魅惑的な描き方が冴えている。フィツジェラルドのフィツジェラルドたるゆえんといえようか。

    フィツジェラルドのこの短編集に収められている短編はみな、登場人物がお金持か、お金を稼ぐのがうまくて、富と享楽の明け暮れ、お酒と恋の逸楽三昧。きらびやかな世俗への誘惑、そして凋落。あるいはいくら楽しく過ごし暮らしても、移ろっていく人生の悲哀。

    ちょうど80年代の日本のバブル期とその後のはじけて「あれは何だったのだろうか」と思うのにに似ているのか、私は残念ながら経験しなかったが…。


    「カットグラスの鉢」

    高価で美しく繊細なカットグラスの数々。18世紀末アメリカの中西部に嫁入り道具として流行っていた。あろうことか、振った元恋人の男から贈られた大きなカットグラスのポンス酒用の鉢。

    『あなたのように硬くて、美しくて、空虚でやすやすと中を見通せる贈り物を上げましょう』

    浮気性な美しい人妻の人生を狂わせていく。赤や青や緑のプリズム、虹にきらきらと輝く鉢。美しいものの影のうつろい、たゆたい。フィツジェラルドの得意とするところ。

    「冬の夢」
    「罪の赦し」
    「金持ちの青年」

    3篇とも主題は同じ。
    どうしてフィツジェラルドは青春と老成、隆盛と凋落、光と影をこんなにもうまく描くのだろうか。

  • 数年前に読んだのは確か角川版だったはず。

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著者プロフィール

1896年ミネソタ生まれ。ヘミングウェイとともに「失われた世代」の作家として知られる。大学在学中から小説を書きはじめ、『グレート・ギャツビー』を刊行して一躍時代の寵児となる。激しい恋愛の末、美貌の女性ゼルダと結婚、贅をつくした生活を送る。しかし、夜ごとの饗宴を支えるため乱作をはじめ、次第に人気を失い、ハリウッドの台本書きへと転落の道を辿る。1940年、再起をかけて執筆していた『ラスト・タイクーン』が未完のまま、心臓発作で逝去。

「2022年 『グレート・ギャツビー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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