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感想・レビュー・書評
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著者は小説家だが、この本は秋田マタギの里(阿仁・根子の近傍)に足繁く通って、一緒に山に入ったり飲み交わしたりしつつ、マタギの来歴や文化習俗、狩りの作法などなどについて綿密に取材し書き記したものである。
中でも著者自身が撮影した豊富な写真--刊行当時の集落のようす、かれらの生活ぶり、伝統的なマタギ装束の目をみはるカッコ良さ、そしてなにより、とてもいい表情をした当時のマタギたちの顔--は、二度と撮られ得ない大変貴重な資料であろう。
といってもこの本が刊行された昭和37年頃には、すでにマタギのみで生計を立てる者はなく、独特の山ことばや厳しい禁忌、伝統は既に失われていたという。痛ましいことである。
いや単に伝統が無くなってもったいない、という話ではない。そうしたシキタリが山や動物などの自然を畏れ敬い、厳格な統率と常なる緊張感とで相対したところから生まれたと思われるだけに、押し寄せる時代の波(目先の便利さや儲けや娯楽)に洗われて、ニホンの人間力そのものが衰退していることと重なってしょうがないのである。
…そういう話はともかく、大らかな通過儀礼や狩小屋での料理の話など驚きのエピソードもテンコ盛りだし、小説家らしいこなれた文章の心地よさもあって、たいへん面白い本であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マタギは普通の狩人とは違う
山岳宗教に凝り固まり、獲物は山神様からの授かり物として敬い、酷しい狩人作法を守って生きてきた、東北地方の特殊な伝統を持つ狩人なのだ
マタギたちの態度は、アイヌ猟師の山岳や狩猟獣に対する考え方と一脈通じる
狩人として難しいことはどう討つかではなく、どうして討たないようにするか、獲物を滅亡させないように獲らなければならないのだから・・・