歩いても歩いても [DVD]

監督 : 是枝裕和 
出演 : 阿部寛  夏川結衣  YOU  高橋和也 
  • バンダイビジュアル
3.89
  • (164)
  • (250)
  • (185)
  • (19)
  • (3)
本棚登録 : 1248
感想 : 252
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4934569632746

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の大根や人参の皮を剥いたり、
    料理を作る
    手だけを映した場面を観ただけで

    「ああ〜この映画
    俺好きになるなぁ〜」

    って感じたんやけど、
    案の定予感的中でした(笑)



    子供たちが走り回り
    お父さんがおどけ、
    樹木希林とYOUの漫才のような絶妙なやりとりで

    ああ言えばこう言う(笑)
    台所での何気ない家族の風景に
    安心感と安らぎを覚えるのは

    やはり自分が
    日本人だからなのかな。
    (特にYOUと樹木希林の会話は演技してる感0で、
    本物の親子にしか見えません笑)



    トウモロコシのかき揚げを
    みんなで頬張るシーンは
    生つばゴクリだし、

    夏の終わりの田舎町の情景、
    縁側が見える畳の間での昼寝や、
    庭でのスイカ割り、
    家族揃っての記念撮影、
    父親との確執、
    姑と嫁の目には見えない攻防(笑)
    孫とおばあちゃんの会話など

    誰もの記憶に眠る
    あるあるネタのオンパレードに
    自然と頬も緩んで、

    この家族と同じ食卓に
    自分もまた参加して
    寛いでいる気分になってしまうから
    なんとも不思議です(笑)



    また是枝監督は
    子供たちの
    素な表情を撮るのが上手いこと上手いこと。


    何にも起こらない
    ある家族の
    とある一日を描いた、
    ただそれだけの話なのに
    どうしてこれだけ
    惹きつけられるんだろう。



    「俺が働いて建てたのに
    なぜおばあちゃんちなんだ!」
    と孫たちの何気ない一言にボヤく
    原田芳雄扮するおじいちゃんが
    なんとも可愛いのです(笑)


    娘の子供たちには厳しいのに
    血の繋がらない息子の嫁の連れ子である
    ちょっとクールな男の子には
    優しく話しかけたりするところは
    なぜか馬が合うってやつなのかな(笑)




    15年前の出来のいい長男の死を
    今もまだ引きずってる親たち。


    樹木希林がこっそり聴く
    「ブルーライトヨコハマ」が象徴する
    あたたかいだけではない
    家族だからこその
    執着を伴った「怖さ」と、

    それぞれが抱える
    家族にも言えない
    ひそやかな秘密。


    綺麗事だけで
    家族を描いてないところが
    本当にリアリティがあって
    少し恐ろしくなったし、

    人間の弱さや脆さを隠さない演出に
    心揺さぶられました。



    「人生は、いつも
    ちょっとだけ間にあわない」



    だからこそ後悔なきよう、
    伝えたい想いは
    残さず伝えていかなくちゃ。


    言えなかった言葉に
    あとの人生
    押し潰されないよう。

    • まろんさん
      「人生は、いつもちょっとだけ間に合わない」
      。。。胸に沁みる言葉ですね。
      間に合わなかったいろんなことを思い起こしてしまいました。

      是枝監...
      「人生は、いつもちょっとだけ間に合わない」
      。。。胸に沁みる言葉ですね。
      間に合わなかったいろんなことを思い起こしてしまいました。

      是枝監督に、原田芳雄に樹木希林、そして子供たち、と
      これはもう、観ずにはいられない映画ですね!

      いつどうなるかわからない人生の残り時間、
      私も伝えたい想いは、恥ずかしがらず、出し惜しみせず
      ちゃんと伝えていかなくちゃ、と
      円軌道の外さんらしいレビューに励まされました(*^_^*)
      2012/12/04
    • 円軌道の外さん

      まろんさん、ここにもコメント
      ありがとうございます!

      まろんさんの
      言う通りです(^O^)


      自分は阪神淡路大震災...

      まろんさん、ここにもコメント
      ありがとうございます!

      まろんさんの
      言う通りです(^O^)


      自分は阪神淡路大震災で沢山の仲間を失ってます。

      みんな今ある命は
      無限だって思って生きてるけど、
      本当は
      限られたもので
      いつ消えるか分からない危ういものなんですよね☆


      人間はいつか死ぬということを
      どこかで思っておかないと
      今伝えなきゃって
      なかなかなれないと思います。


      明日どうなるか
      分からないから
      今日会うみんなに
      精一杯の感謝を伝える。


      それが本来
      『一期一会』の意味やと思うし♪


      ボクサーという職業も
      いつ死ぬか分からない危険と隣り合わせやから
      生きてる今、
      今日を常に全力で
      伝えていきたいって
      俺は思うんですよね。


      間に合わなかったっていう悔しい思いは
      そう何度も
      味わいたくはないっスもんね(笑)


      2012/12/05
  • チクチクと傷つく感じが生々しい。帰省するのが心底嫌になる映画。
    でも底の方に温かいものが流れてる。人間讃歌的で好き。

  • 家族って、ときどき面倒くさい。

    家族だから許せること、言えること、あるけど、
    家族だから許せないこと、言えないこともある。

    お盆に家族が集まる、2日間を背景に、描かれる「家族」。
    笑えるけど、その裏には、怖い感情がうごめいていたりして。どこか、不思議な距離感を持っている。

    実家のごはん、台所、縁側。
    別に全部いっしょなわけじゃないのにね。なんでか、懐かしい。
    お盆に、みんなが集まる感じだとか、ごはんと食べ物がいっぱい次々とでてくる感じだとか、のんびりした午後だとか。

    初めは5人だったのが、4人になって、
    それからまた新しい家族ができて、
    形がどんどんかわっていって、
    歩くスピードも、距離も、かわっていくのだろう。
    そんなことが丁寧に描かれていた。

    淡々として、ゆっくり流れていく中で、
    ひとつひとつの言葉や、シーンが積み重なって、
    家族の内面や、かたちが見えてくる。

    こんなふうに日常のなにげないことから、
    家族を描く是枝監督。すばらしい作品だと思います!

    やさしい涙が流れる作品。
    じーんときて、緑がにじむ!

    ***

    2008.08.05

  • 何年かぶりで再鑑賞しました。
    家族を描かせたら是枝監督だな〜
    全ての家族にあると思える風景であり心情ですね。
    お互いに相手を思いやっていても時としてまるで逆に受け取ってしまったり。
    愛憎含めて家族なんだなと。

  • 本当に 歩いても歩いても…の世界観を感じる あるお盆の日常風景を切り取った感じの映画でした

    監督 是枝裕和
    家族の情景を鋭くとらえ、しんみりと描いたホームドラマ。15年前に死んだ兄と比較されて育ち、実家に居心地の悪さを抱いている男を阿部寛がユーモアと悲哀を込めて演じる。そのほか、夏川結衣、樹木希林、原田芳雄などが家族にふんし、家族の何でもない会話や日常を絶妙な間合いで表現する。怖いくらいリアルであるけど…。

    あらすじ
    夏のある日、横山良多(阿部寛)は妻のゆかり(夏川結衣)と息子のあつし(田中祥平)とともに実家に帰省した。この日は、15年前に他界した兄の命日。しかし、失業していることを口に出せない良多にとって、両親(原田芳雄、樹木希林)との再会は苦痛でしかなかったが…。
    この家族の歴史を語らずして だんだん見えてくるところがいいですね。
    阿部寛扮する 良多が「あ、後少しのところで いつも そうなんだよ 後で思い出すんだ!」って言うの すごく共感出来た。 人命を救って亡くなった兄(息子)の法要に お盆に毎回 救われた人が家の仏壇に参りに来ることに 「もう、いいんじゃないか?かわいそう 彼のせいでもないのに…」って言う 良多に対して 母親役の樹木希林の「10年やそこらで 命を救われた者に命を救った者(息子 兄)の事を忘れてもらっちゃ困るんだよ だから 絶対 毎年来てもらう!」という 母親の息子を思う気持ちは鬼気迫るものがありました
    個人的には「海よりもまだ深く」の作品の方が好きだが 淡々としてる中に チクリと本当に実際の家族の思いをリアルに描き出していたと思う。
    「そのうちに いつか…」なんて言葉ほどあてにならない ものはないなぁと教訓になった。

  • どこにでもあるような「家族の風景」です。個人的には似たようなキャストで作られる「海よりまだ深く」の方がストーリー展開があって好き。でも、大した事件が起こるわけでもなく、ほぼ家族の会話だけで映画一本見せてしまう是枝監督の手腕には唸らされます。

    ひとくちに「家族」といっても、家父長制の権現ような父(原田芳雄)と、血の繋がらない妻の連れ子と親子関係を築こうとする主人公(阿部寛)との対称性は興味深い。是枝監作品に通底する「血縁神話への疑義」がここにも見られますね。そういう観点からすれば、主人公夫妻に娘が生まれるというエピローグは不要とも思えますが 、家族の姿は常に変わりゆくといことかもしれません。

    そうか、この映画のテーマはそれなのかしれないですね。子どもたちが帰省して賑やかになった家族の様子中にも、主人公の兄と妻の前夫という2人の死者の存在が影を落とします。家族が変わっていく契機が「死」なのでしょう。

  • 身内にほど 本音は言えないもの。

    誰でも なにかしらの後悔を持って
    それでも 人は生きている。

    スリリングなナニカが起こるわけでもなく
    いわゆる ‘ フツー’ に物語は 進んでいく。

    けど ジワジワと沁み入る映画だった。
    どこからだろ?
    口から? おへそから?笑

  • 友人から数年前に勧められてようやく観ましたが、映画とは何なのだろうと考えさせられました。いわゆる「普通の映画」ではなく、まるでホームビデオのようで、初めは何を見せられているのだろうという気分になりました。

    姉夫婦と揃っての帰省。いつ帰るのかで揉めたり、次々に手際よく食事が出てきたり、いつまでも息子のパジャマを用意していたり、いらないロデオマシンや昭和歌謡CD集が増えてたり笑。よくぞここまで日本の家族の「あるある」を再現できるものだ。

    一見なんてことのない家族に見えるが、兄を亡くした悲しみ、父親との確執、両親の老い、嫁・姑の関係、目には見えない感情のうずまきが本当によく表現されている。

    樹木希林扮する母の「忘れてもらっちゃ困るのよ、だから毎年来てもらわないとね、ずーっと」「もう子供は作らない方がいいかもねぇ」は心底ゾッとさせられる。しかし、これは単なる意地悪などではなく、息子たちへの深い愛情から滲み出たものであり、家族という繋がりの深さ・湿っぽさをまざまざと見せつけられる。

    キャストや演技も素晴らしく、質の高い映画だとは思いますが、正直観ていてあまり気分は良くなかった(すっげー実家に帰りたくなくなる笑)ので3点で。

  • お盆に観るのにいい映画。
    セリフの中にあるほんの少しの毒が夏に合う。

  • 是枝監督の作品は、何本かは観ているのですが、一番好きです。俳優さんが、凄い演技を見せてくれます。何気ない会話が深いです。親との関係を考えさせられました。樹木希林さんが、やっぱり凄いなあ。とにかく、好きです。

  • リアル…。
    たまらない。
    みんな上手すぎて怖いくらい。

    会話の中に本音がにじむ。
    わざとにじませてるのか…。
    気づかないふりをしても、もやもやはどんどん積もる。
    夏川結衣が背中で語る。

    人の家を覗いてるみたいで、少し居心地が悪い。

    死がところどころで見え隠れ。
    お兄さんの死
    妻の前の旦那の死

  • 命日という静かな一日をめぐる、
    家族の大いなる物語。

    それぞれの悪意なき一言が、
    たまらなくイラッとするけれど、
    そのもどかしさが、
    家族というリアリティを映しだしており、
    誰しもが体験したことのあるような情景なのに、
    母親という強さと脆さが、
    非常に文学的に表現されていて、
    作品をぐぐっと高みに昇華させている。

    どこかにあるようで、
    どこにもないような、夏の日。

  • 夏休み初日、自宅でゴロゴロしながら観る。ゆうべも一方的に文句言われたな…今年の盆も里には行かないと言うんだろうな…なんて思いながら、樹木希林と原田芳雄の老夫婦ぶりに田舎の両親を想わずにはいられなかった。家族を考えることが出来る良作でした。

  • 料理をして,おしゃべりして,冗談言って,笑って。

    どこにでもいるありきたりな家族の日常をビデオカメラで撮っている。


    のかと思いきや。
    ふとした瞬間に,「時間のとまる一瞬」が顔を見せる。

    慣れ親しんだ家族のはずなのに,
    自分の知らない顔をして,こちらを見ている瞬間が。

    そして再び,ありきたりな日常へと戻ってゆく。
    僅かな雑音を抱えながら。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「僅かな雑音を抱えながら。」
      是枝裕和は丁寧な仕事をするので、好きな監督。
      「僅かな雑音を抱えながら。」
      是枝裕和は丁寧な仕事をするので、好きな監督。
      2014/04/03
  • どこかしら日常的にある、人のいやらしい負の、悪の、部分。
    嫁姑のなんとか。おせっかいが過ぎる母親。プライドだけ高い頑固親父。見栄を捨てきれない息子。かわいさの欠片も持たぬ子ども。
    不在の人に生きている人がひきずられている。

    余計なお世話だと思う。うっとおしくて吐き気がする。憎んでいるのにいつの間にか自分だって似ていたり、同じことに加担していたり。

    それらすべての面倒なしきたりを、習慣を、嫌悪すべきではないのだ。嫌悪すべきことじゃない。

    歩いても歩いても、悩みは減らないし、新たに出現するし、海はそこにある。

    「いつもちょっと間に合わない」に実感がこもりすぎていた。

    観ていてそんなことを思った。

    (20130403)

  • 劇的な起承転結をつけることなく、久しぶりの実家で過ごす一泊二日を淡々と描く2時間弱の物語で、濃密な喜怒哀楽を描いている見事な映画。どこにでもありそうな他愛ない家族の会話の中で、家族が積み重ねてきた歴史や、それぞれの間に横たわる感情を、温かいだけでなく刺の部分まで巧みに描き出す。GONTITIの叙情的なギターの音色も、映画のゆったりとした時の流れを際立たせ非常に効果的。特に、何気ない台詞で可笑しさも毒気もさらりと表現する樹木希林の演技が素晴らしい。少し前にTVドラマ「ゴーイングマイホーム」を観て、非常に魅力的を感じつつ、ちょっと薄いというか何かが足りない気がしていたが、物足りない気持ちが全て埋まった気がする。

  • 一家族の時間が淡々と流れて行くのを淡々と見ていた。
    是枝監督のどの作品でも感じられる透明感それにのせた音楽がそっと琴線に触れてくるとても心地いい。優しい残酷さ。
    ラストも何が起きたわけでもない、当たり前の事が過ぎて行っただけ。
    最後の数分 言葉も出ず涙が止まらなくなっていた。美しい。

    一人暮らしをしていると思う事も多いかもしれない。
    実家へ帰るのが億劫だ、嫌だ、
    嫌っている訳ではないけれど っていう感覚どこからくるんだろう。
    自分は家族が亡くなった時後悔はしなかったけれど
    その後に帰省するたびに違和感がある。
    それは日常が少し変わっただけ。いつか慣れてくるものだろうか

  • 淡々とした生活の中に近しい人への愛とちらりと見える憎々しい思いを絶妙な分量で描き出している秀作。

  • ざわざわするタイプの映画。
    みんな、なにかを隠していて、それを隠してはすり寄ってみたり、突き放してみたりする。
    それが、どうしてこんなに寂しいんだろう。
    仕方が無いとは分かっているのに。
    残酷な正直さを、隠すのは仕方が無いことだのに。
    寂しくて、寂しくて、虚しくて、哀れで、それでも、それをわかっていても、ひとりを選ぶこともない。
    死者は、ずるいと感じるようなこと。
    是枝監督の作品は、穏やかな家がずるい。
    穏やかな家、庭、手料理。
    色や、音や、風景が穏やかでずるい。
    優しくなんかない。
    歩いても歩いても、交わらない。
    この世では、交わることができない?
    孤独だ。
    みんな、孤独。
    家。暮らす。生きる。歩く。
    歩く。

  • 15年前に亡くなった兄の命日に実家に集まる家族の物語。両親の兄への思い、次男の再婚相手と連れ子、長女の将来的同居、父と息子のわだかまり…色々な家族の問題が少し可笑しみを含みながら描かれています。日本人が共通して感じるような懐かしい夏休みのおばあちゃん家。そこで繰り広げられる大人な会話は何とも日本的!嫁、姑、小姑、息子、孫たち。どうしてこんなに共感できるんでしょう。
    何気ない一日を描きながら、普通に暮らしていても、ずっと悲しみ(とやりきれない怒り)を抱いているおばあちゃん(樹木希林)の姿がとても重々しく、怖いくらいでした。そして、連れ子の死へ対する気持ちの変化も静かに描かれていて好きでした。おじいちゃん(原田芳雄)、次男(阿部寛)、長女(YOU)みんな肩の力が抜けていて、とても自然な家族に見えました。樹木希林とYOUの会話が楽しかったー。そして、料理をする樹木希林の手元が美しかった。今の年齢になってしみじみ共感したり笑ったりできるのだなぁと思いました。

  • 10月1日のエンディングノートの予習?も兼ねて。

    いますぐ帰省したくなる映画。
    もううちの母が「長男の嫁」としてあくせく動いていた「ばあちゃんち」はなくなったんだよなぁと思うとなんか寂しくなった。時の流れって残酷。。

  • 家族っていっても一枚岩じゃないのよね。
    みんなが何を考えてるのか本当のところはわからない。でも、すごく近くにいる。
    嫌な感じとか、楽しい感じとか、あぁ、家族だなぁって思います。

    自分の家族について考えたくなる、会おうと思えるかもしれない映画。

  • ある家族の物語。
    お盆に息子家族、娘家族が帰省する元個人病院だった老夫婦の家。

    冒頭は娘のYOUと樹木希林がお喋りしながらみんなの分の
    昼食を用意しているところから始まる。手さばきの鮮やかさ
    お喋りの軽妙さ、そこから、これは良い映画だって、ピンときた。
    予想ははずれず、最後までじっくりと細部まで楽しめた。

    あまりにも平凡なありきたりの日常を見せる映画にうんざりという
    レビューもあったので、多少用心してみたけれど、この映画に
    最近流行りでけなしやすい、淡々とした映画への批判を
    あてはめるのは間違っていると思う。

    細部まで作りこまれた秀逸な作品だと思う。流行りは関係ない。
    小津映画や成瀬映画が大好きでたくさんの作品を見ているけど
    昔の映画はそんな大仰なエピソードがなくても最後まで飽きさせない
    映画が多かったと思う。人とのやりとり、そのやりとりをしている時の
    空気、人の表情、語り口、楽しめるところはたくさんあった。
    この映画はまさにそれで、YOUと樹木希林の親子の掛け合いから
    阿部ちゃんと夏川結衣の夫婦のやりとり、YOUと高橋和也の夫婦の
    やりとり、おじいちゃんの頑固さをもてあます家族のやりとりなど
    いたるところに見どころ満載だった。

    おじいちゃんがずっと自分の病院の患者だった御向いのおばあちゃんが
    具合悪くなった時、何もすることが出来ず、救急車の周りを
    おろおろとする無様な様子。それを後ろから眺める息子。
    切なさが伝わってくるのと、今まで偉大だと思っていた親が
    みっともない部分を見せていることへの悲しさと時間の流れの
    残酷さが感じられた。

    家族のあるエピソードをお嫁さんたちに面白おかしく話すこと、
    その話がもう何度めでもあること。まさにどこにでもある家族の
    一風景だと思う。

    病院の跡取り息子だった長男が、子供を助けて死んでしまっているのだけど
    母親である樹木希林が、助けられた子供が(もう成人)御線香を
    あげにくるのを息子を死なせたその子供だった大人への罰として
    やめるつもりはないと言う表情の怖さに、人間臭さを感じた。
    物事はきれいごとではすまされない。家族って生臭い。

    最後、蝶々のエピソードを聞いた時に涙が出た。
    そうやって人は死んでからも生きていく、家族が繋がっていくんだなぁって。

    とっても良い映画だった。言葉を二ヶ国語を選択出来る意味がわかる。

  • 登場人物ひとりひとりの中に自分を見るようでした。実はエゴだらけの中で生きていて、例に漏れず自分もその冷酷な一言を持っているのだと第三者になってようやく気付く。
    歩いても歩いてもちょっと間に合わない。でもたどり着く先は一緒。

  • 当時 百万円と苦虫女をミニシアターに観に行った時に 
    同じように公開されてた作品。

    コレもみなきゃって思ったけど結局DVDになっちゃった。

    『いつもそうなんだ。ちょっとだけ間に合わないんだ。』

    この台詞にすべて詰まってると思います。

    こーゆー映画を集中して、なおかつ、見終わって『良かった』と

    言えるぼくは 気付かないうちにちゃんと大人になってんだって思った。

  • 日本映画チャネルで『歩いても 歩いても(英題:STILL WALKING)/2007』を放映していたので、嫁さんと一緒に観ました。

    嫁さんのオススメ映画です。

    -----story-------------
    夏の終わりの季節。
    高台に建つ横山家。
    開業医だった「恭平」はすでに引退して妻「とし子」とこの家で2人暮らし。
    その日、久々に子どもたちがそれぞれの家族を連れて帰郷した。
    その日は、15年前に亡くなった長男の命日だったのだ。
    次男の「良多」は、もともと父とそりが合わなかった上、子連れの「ゆかり」と再婚して日が浅かったこともあって渋々の帰郷。
    両親がいまだそれぞれに長男の死を受け止めきれずにいることが、「良多」の心をますます重くする。
    いつも陽気でソツのない長女の「ちなみ」は、そんな家族のあいだを取り持ち、家の中に軽い空気を持ち込むが…。
    -----------------------

    淡々とした物語。

    長男の命日のために、老いた両親に家に久々に顔を揃えたある一家の一日をスケッチしたホロ苦くも温かな家族ドラマで、観終わったあとに「小津安二郎」作品を思い出すような、そんな作品でした。

    母親「とし子」の発言が辛辣で毒を含んでいますが、それはそれでイイ味が出てましたね。
    「樹木希林」が、やっぱ巧いなぁ。

    自分が一人の子どもの親なので母親の気持ちもわからないことはないのですが、、、
    それ以上に、息子「良多」の気持ちが痛いほどわかった。

    「良多」の立場に感情移入しながら、そして自分の立場に置き換えながら観ちゃいましたね。

    家族のつながりを客観的に観ることで、何気ないひと言が相手を傷つけてしまっていることに改めて気付かされました。

    「是枝」監督の体験も反映されているようですが、、、
    親子間のわだかまりや思いやり等がごちゃ混ぜになった複雑な感情模様、揺れ動く心の機微が、とてもリアルに、そして巧く描かれていましたね。

    うまく説明できませんが、好きな部類の作品です。

    「いしだあゆみ」の歌う"ブルー・ライト・ヨコハマ"が効果的に使われていて、、、

    頭から離れなくなりました。




    -------------------------------
    監督: 是枝裕和
    企画: 安田匡裕
    原作: 是枝裕和
    脚本: 是枝裕和
    撮影: 山崎裕
    美術: 磯見俊裕
        三ツ松けいこ
    衣裳: 黒澤和子
    編集: 是枝裕和
    音楽: ゴンチチ
    照明: 尾下栄治
    録音: 弦巻裕
        大竹修二
    出演:
     阿部寛 横山良多
     夏川結衣 良多の妻、ゆかり
     YOU 良多の姉、ちなみ
     高橋和也 ちなみの夫、信夫
     田中祥平 横山あつし(ゆかりの連れ子である良多の息子)
     寺島進 小松健太郎(松寿司店長)
     加藤治子 西沢ふさ(横山家の隣人)
     樹木希林 横山とし子
     原田芳雄 横山恭平

  • 日本/2008年/是枝裕和監督/樹木希林出演

    この映画も是枝裕和監督だったんだ。2008年だと『そして父になる』よりも前だから、日常映画の原点に近いのでは。すでにこの段階で完成されていることに驚く。ことさらドラマを求めるのではなく、日常、家族のディテイルを追い詰めることで、大きいドラマを見出す。ここでは田舎の実家に帰るときの家族の心のありようが細かく丁寧に描かれる。まるでどの家庭でもあるような日常だが情報量は豊かなのでちっとも退屈しない。というよりずっと緊張してしまう。あるあるでもある。この映画を見て、家族のと会話をしているとここにカメラがあれば人の心の綾はあるわけでそれがドラマになるという客観的視点を持てることになりありがたい気分になる。それはドキュメントだが、それをスクリーンで表わすとなると繊細な演出、演技がなる。それを樹木希林とYOUの丁々発止のやりとり、夏川結衣は気を使ってばかりで自分の地を出すことを警戒している様子などうまいなぁ。あるあるだ。

    演出は、相変わらず子どもたちにどういう演技指導をさせているのやら、また、料理を作るシーンを丁寧に撮ることでリズムを整えていくのもうまい。

    そしてところどころに「10年くらいで忘れてもらっちゃ困るの」「死んじゃってもいなくなったゃうわけではないのよ」「いつもこうなんだ。ちょっと間に合わないんだ。」と少し深い言葉を入れていく。

    キネ旬ベストテン2008 5位

  • 跡継ぎの息子が助けに行ったことで死んで、そのことの悔やみがいつまでも消えないかわいそうな老齢の夫婦とその息子夫婦の物語であった。


  • 是枝監督の作品を観るのは、「誰も知らない」、
    「ゴーイング マイ ホーム」に続いて3作目。

    家族を題材にした作品が多いようだが、
    今回観た作品は「ゴーイング マイ ホーム」と
    主人公の名前やキャスト、音楽が被っていたりして
    ちょっとしたクロスオーバー作品にも思える。
    しかし、この作品は特に役者の演技力が凄い。
    本当の家族なのでは、と疑うほど
    絶妙なテンポとバランスで会話が進んでいく。
    特に大きな事件や問題が発生するわけではないが、
    親世代・子世代の世代間のギャップ、
    家族だからこそ向き合って話せない些細な縺れが
    役者の細やかな表情、話し方に表れている。

    所々クスッと笑ってしまうシーンも
    散りばめられているが、
    まるで自分の家の中を俯瞰しているようで
    少し恥ずかしくて、醜くて、時に切なくて、
    途中から自分を省みるような気持ちで観ていた。

    なかなか急に素直になれるものでもないが、
    家族と過ごす時間、家族を想う気持ちを大切に、
    できるだけ後悔のないよう生きたいと思った。

  • 夏の終わりに家族で実家に帰省。父とそりがあわない主人公だが、今日は15年前に事故でなくなった兄の命日だった。

    114分、特に大きな事件が起きるわけではなく淡々と物語は進んでいきます。父子のギクシャクした関係性や、嫁姑の微妙な距離、いつもお節介を焼きたがる母が時折見せる闇の部分。そのどれもが他人事とは思えず、とてもリアルでした。出演者全員の演技も素晴らしい。

    大きな展開はないにもかかわらず、ここまで面白くできるのか。それに非常に驚かされました。

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著者プロフィール

著者)是枝裕和 Hirokazu KORE-EDA
映画監督。1962 年東京生まれ。87 年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオン に参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。14 年に独立し、制作者集団「分福」を立ち 上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そ して父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画 祭パルムドール、第 91 回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、『真実』(19/ヴェネ チア国際映画祭オープニング作品)。次回作では、主演にソン・ガンホ、カン・ドンウォ ン、ぺ・ドゥナを迎えて韓国映画『ブローカー(仮)』を 21 年撮影予定。

「2020年 『真実 La Vérité シナリオ対訳 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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