『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』は、ソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されている3Dアクションアドベンチャーゲームのシリーズ第3作。シリーズ世界累計出荷数は1,300万本を超える。
今週の『週刊ダイヤモンド』特集は「さよなら!伝説のソニー なぜアップルになれなかったのか」だけれどw、アンチャーテッドは、文句なしですごい。数々のゲームアワード受賞も納得の高品質。日本のソニーではなくSCEアメリカの開発だけれど。アクションゲームファンなら、プレイせずに済ますのはもったいない。
プレイ開始当初は、いつも通り『インディ・ジョーンズ』を連想させる一昔前のハリウッドアクションアドベンチャー超大作的な展開、そんな趣味じゃないんだけどなあと思いながらやる。そのうちグラフィックは繊細美麗だし、演出は迫力あるし、作品世界に飲み込まれてゆく。前作は、ゲーム冒頭、雪山で列車が脱線した後のアクションシーンが一番印象深かった。今作のゲーム冒頭は、それほど印象強くない。シナリオを進めるにつれて、だんだん記憶に残るsアクションシーンが増えてくる。
ハリソン・フォードが「すげえ」と驚いているテレビCMのシーンに来た時は、本当にすげえと唸った。CM映像では伝わらなかったけれど、実際にあの砂漠上空、飛行機から落下するシーンをプレイすると、自分自身本当に飛行機から落下した気分になって、テンションが上がりまくる。
映画は、視聴する芸術だ。観客である自分自身は、座って映画を視聴している。ゲームは、体感する芸術だ。自分自身は虚構の作品世界の中でプレーヤーとなり、仮想現実を体感する。映画よりもゲームの方が、体験する感覚が強くなる。面白い映画や小説なら作品世界にのめりこんで、さも自分がその世界の中で現実を体感している気分になるが、ゲームはそのような仮想現実没入体験に導かれやすい。『アンチャーテッド』は、そのような有意義な体験、現実世界の人生とは異なる、別の人生体験の創造に成功している。
PS3でグラフィック機能が向上して、ゲームの画面は美麗になった。やりすぎ感があるくらい美麗、世界最高品質を追求することが、アップルや任天堂とは異なるソニーの企業哲学だけれど、『アンチャーテッド』は、美麗を通り越して、世界の汚さを表現している。スラム街のごみ、がれき、町の人々の薄汚れた服、洗われていないごつごつした肌、古代遺跡に群がる雑草、瓦礫、石くず、砂ぼこり。よくここまでごみを表現するなというくらい、粘着気質で世界の汚さ、ノイズ、カオスっぷりが表現されている。
現実世界は、仮想現実よりノイズで溢れている。人間の思考の通りには、現実世界はまわらない。現実では、様々な生物の思惑が衝突しており、ノイズとダストと放射性物質がぐるぐる踊っている。ゲームは、現実の汚さを表現するリアリズムの域に達した。うっとりするほどごみだらけの美しい世界。それが『アンチャーテッド』の虚構世界だ。