毒入りチョコレート事件 (創元推理文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 久々に電書で再読。
    シェリンガムが創設した犯罪研究会の人々が、毒入りチョコレートで人が亡くなった事件の解決に挑む。
    それぞれが推理した結果を一晩ずつ順番に披露し、読者はそのたびに納得しそうになるが、次のメンバーの推理がそれをひっくり返していくという見事な多重解決ミステリの古典。ミステリの解決の恣意性についてこの時代に提示してみせたバークリーはやっぱりすごい。

  • 面白かった。夫がもらってきたチョコレートを食べて妻が亡くなった事件について、犯罪研究会のメンバー6人がそれぞれの解釈を述べる「多重解決」もの。1929年の作品でいろいろとこっている。指紋採取などはできなかったつまり科学的証拠がないという形で、さまざまな推定がなされる。

  • 推理が何度も覆されたり、推理を行う者の背景や視点によって推論が無限に変化するといった指摘など、いわばミステリの瑕に切り込む視点は面白いと思うが、最終的な結論にはガッカリした。最後に至ってもやはりそれは一面的な推論でしかなく、それがたまたま真実だったということを匂わせて終わるが、確証はない。結局最終的な解決は存在しないのだから、むしろこの作品はアンチミステリと言った方が正しいのではないか。証言や物的証拠も虚偽や偽造として覆されるので後期クイーン的問題をクイーンよりも見つけ出したという価値はあるのかもしれないが。

  • 少ない登場人物の中で、上書きされる犯人。

  • 多重解決ミステリーのおすすめを検索したところ出てきたので、読んでみた。
    https://susumutomaru1999.blog.jp/archives/1069721377.html

    https://honcierge.jp/articles/shelf_story/8558

    https://300books.net/tajukaiketsu-osusume/


    男の元にチョコレートの試供品が届く。チョコレートを食べる気がなかったので、隣の男に差し上げることにした。隣の男は妻と賭けをし負けたので、チョコをプレゼントすることになっていたのだ。
    チョコを持って帰り、妻にプレゼントし、二人で食べた。かなり味が強かったがお互いいくつか食べ続けた。
    夫は外出先で具合が悪くなり医者の診察を受け、命をとりとめるが、ほぼ同じ頃、妻は死亡した。
    警察が捜査するが犯人は分からず、迷宮入りしてしまう。

    ミステリー研究会の面々はこの事件を調べて、それぞれの真相を語り合うことになる。


    古い書籍であることと、外国語を翻訳した内容であるためけっこう読みにくい文章だった。
    実際の事件でも何を重視するか、証言に嘘が含まれている可能性、知っていても黙っている可能性があり、なかなか真相にたどり着くのは難しなと感じた。
    ランダムに討議すると誰が探偵役かわからないのだが、順番に自説を語っていくので最後の人物が真実を語るのだろうと予想がついてしまうのは残念な点ではないかな。
    自分の予想した筋とは全く違うオチだった。

  • シェリンガム長編5作目、チタウィック1作目▲毒物が仕込まれたチョコレートを試食した夫人が死亡した。迷宮入り寸前の難事件を一晩ずつ披露する「犯罪研究会」の推理は▼語りは会長シェリンガム視点、いつもの饒舌振りからの予想通りファシリテートもお上手。一癖も二癖もある会員たちが活き活きと、一喜一憂する感情の高ぶりや場の雰囲気も良く分かる。プロットが素晴らしく、発言の順番も良い、地の文も秀逸です。発刊順に読み、ユーモア小説から多重解決への進化や、ロジャー達のメンタルの捻くれ系ラノベ主人公との近似を感じた(1929年)

  • 海外古典(翻訳もの)×多重解決=読みづらそう
    と敬遠していたけれど、全然そんなことなくめちゃくちゃ面白かった。
    もちろん、時代がかった演説口調だとか、回りくどい言い回しだとかには多少苦戦したけれど、話の筋が面白いのでするする読める。

    推理はめまぐるしく変わっていくけれど、おおもとの事件自体は比較的単純で、密室も入れ代わりも何にもなく、要点が分かり易いし、登場人物も少なく(事件関係者はメインが3人!)、証拠なんかも丁寧に提示されていて理解しやすかった。
    推理も、変わるとはいえ推理ごとに担当者がいる上に、それぞれが個性的なので、一つ一つの検討もそれをつぶすのも面白くて、とっても良かった。
    チタウィックの推理の前くらいに、現代ミステリの読者はうっすらと犯人が見えてくると思う。ミステリの形に慣れているから。でも、そんなのかすんでしまうくらい楽しい。これが嚆矢だと思えばなおさらに。

    こういうかたちでミステリの可能性の広がりを示したのはバークリーが最初だったのかな。最初の人がこんなに完成されて面白い作品を書いたというのがすごい。
    シェリンガムとチタウィックそれぞれが探偵役の作品が別にあるようなので、そちらも読んでみたい。

    ほんと、ビビッてこれまで読まなかったのがもったいなかった。
    臆せずどんどん読んでいこう!

  • 名作と言われる作品なのかもしれないけれど、私にはまったく理解できなかった。

  • 僕も大したミステリ読みではありませんが、確かにこれは斬新。初めて経験する感覚でした。
    名探偵全盛時代の作品でありながら、明確な主役が不在のまま進む展開には驚きを禁じ得ませんでしたが、読み終えてみると、仮説と反証の丁寧な繰り返しは謎解きにかかる模範的思考実験の流れのよう。
    あたかもこの一冊が名探偵の脳内を覗いたものかと錯覚するような作品でした。
    分かり辛い内容で一見さんお断りな雰囲気が難かな。
    読解力が足りない僕は「このネタの伏線ってあったっけ?」と逆転ネタが悉く後出しで加えたものに見えてしまって残念。
    再読必須か。

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