愚者の夜・賢者の朝 [Kindle]

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  • アドレナライズ
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  • 全く知らない作家のハードボイルドミステリ長編。電子書籍のみで出版されているらしい。

    4年前に、銃撃の流れ弾で娘を失った外村。ひょんなことから、その娘によく似た女性と仕事をするようになり、興味を持ったところ、新たな事件に巻き込まれていく。

    「十河」が「そごう」と読めず、聞いたことのない作家だと思ったら、どうやら映画評論家のようだ。道理であちこちで映画のシーンを引き合いに出すような表現が見られる。また、デザイン業界などにも知り合いがいるのか、本人がいたのか、かなり詳しく、話の深みが出ているところは、評価されるポイントであろう。

    一方で、ストーリー展開は、主張強めのキャラクターばかり出してしまったせいもあり、若干都合か良すぎると思うところもあるが、なかなか裏の世界が見えない部分を解明していくというのは、爽快感がある。

    難点といえば、途中1/3くらいまでやたら出てくる、実在の会社名や商品名をもじった名前が、中途半端に実在すぎるもんで、高村薫「レディ・ジョーカー」同様に読むリズムを崩してくれること。もう少し突飛な物に出来ないものか。

    また、1つの章が数ページと本読みにとっては細切れになりすぎている感があるが、こちらはよくよく考えると電子書籍初心者にはありがたいのかもしれない。

    最終的に、ものすごいどんでん返しがあるわけでもないものの、緩急はそこそこ付いているので、後半1/3くらいは飛ぶように過ぎていくだろう。

    小説専門ということではないようだし、ちょっと野暮ったい気がする部分もあるが、電子書籍でも割と低価格で出ていることが多いようだ。5ページくらいのたたき売りコラムなどが多い詐欺電子書籍が多い中、ちゃんと書かれた作品という意味でもオススメの部類に入ると思う。

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著者プロフィール

1951年香川県生まれ。中央大学仏文専攻卒業後、出版社に勤務する傍ら映画コラムを執筆。エッセイ集「映画がなければ生きていけない1999-2002/2003-2006」により第25回日本冒険小説協会特別賞「最優秀映画コラム賞」受賞。大沢在昌氏著「天使の爪」(角川文庫)、矢作俊彦氏著「マンハッタン・オプ3」(SB文庫)、香納諒一氏著「梟の拳」(徳間文庫)の解説を書くなどハードボイルド・ミステリにも造詣が深く、自らも「キャパの遺言」で第62回江戸川乱歩賞候補となる。

「2023年 『映画と本がなければまだ生きていけない 2019-2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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