周囲に心を閉ざすセックス依存症の兄ブランドンと、愛に飢えて誰彼かまわず依存するリストカッターの妹シシーの2人を巡る話。
センセーショナルなプロットですが、実際の中身は非常に深く、真正面から人間の不器用さ、歪つさを描いた素晴らしい作品でした。
主人公がこんな設定なので当然R18指定で、そういうシーンも沢山出てきますが、観ていても嫌らしさは無く(そしてセクシーさもほぼ皆無…)、むしろ虚しさが募ります。
ブランドン自身、セックスはあくまでもその場の別の感情を紛らわす手段でしかないことは明らかです。行為に意味(相手に対する何らかの気持ち)が伴ってしまうと彼は行為ができなくなってしまいますし、肉親である妹が自分の上司とベッドインすると、途端に平常心を失ってしまいます。
そして、ブランドンとは対照的に、シシーはすぐに恋をしては相手に依存をします。ブランドンとシシーはまさに陰と陽の関係であり、やっていることは正反対でも、人間関係・性的関係を巧く構築できないという点では全く同じです。彼らの不器用さに痛々しさを感じるばかりです。
印象的なのが長回しの多さ。これでもかという程にカメラで登場人物を追い回すことで、登場人物だけでなく、観客も追い詰められた気分になります。
なおこの作品は、最後まではっきりとした「原因」や「答え」は示されず、解釈は全て観客に投げ出されています(その余韻がまた良い)。
とはいえ、シシーの最後の言葉や、2人がアイルランドから移住してきたことなどを考えると、2人の間に近親相姦的な感情があることに加えて、幼少時に性的虐待を受けていたことはなんとなく推察されます。
長くなってしまいましたが、最後に、主演のマイケル・ファスベンダーとキャリー・マリガンの演技が凄まじく良かったです。特にファスベンダーは、空ろな表情も下卑た目つきも純真な眼差しも全て演じ切ってて本当に素晴らしかった。