- Amazon.co.jp ・電子書籍 (318ページ)
感想・レビュー・書評
-
二作目、三作目と読んだので一作目に手を伸ばした。結論から言うとマジで面白い!まさに殺し屋たちの狂想曲。物騒な人ばかりだけど妙に人間臭い。唯一鈴木の正常さが作品全体の均衡を保たせています。その鈴木をめぐる殺し屋「鯨」「蝉」「槿」たちの人生がどんどん交差していくのにワクワクが止まりませんでした。刻々と経過していく時間の中で、彼らの思惑や行動が急接近していく。伏線回収はあっと驚く鮮やかさ。
「蝉」のナイフ捌き、バトルシーンは何度みても面白い。それに比べて「鯨」は幻覚をよくみてるのだけれどサイコパスでなんか暗い。「槿」は紳士で洞察力や仕事の仕方が図抜けている。
平和な日常を送っている私たちからすると、本書は刺激的。日常を離れたストーリーが心地よい。そう思える登場人物たちのキャラクターが本当に立っていて物騒だけど面白い。自分があまりみないジャンルもやはりみるべきだなぁとつくづく思いました。それにしてもマンガの「ブラックエンジェルズ」のキャラが被って仕方ありませんでした(^-^;詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「殺し屋」シリーズの一作目がキンドル・アンリミテッドで読めることに気づいた。「AX」が頭に少し残っているうちに読むことにする。
押し屋vs自殺屋「鯨」vsナイフ使い「蝉」。
三つ巴、最後まで生き残るのは?っていうストーリーだけど、メチャクチャ面白いじゃないですか!
手に汗握る展開。ページを繰るスピードも上がります。
鯨の初登場場面でノックアウトされる。
恐ろしく残虐なのにユーモアもあり、ほどほどに知的でクールだ。「殺し屋」シリーズの真骨頂とも言える部分なのではないか、と思った。
個人的には、鯨、好きだな。
ドストエフスキーの「罪と罰」を繰り返し読んでいる。僕はまだ最後まで読めていないから、それだけで尊敬する。
ー これだけ個体と個体が接近して、生活する動物は珍しいね。人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いんだよ。
主人公の鈴木が、学生の頃教授から聞いた言葉。
ウィズ・コロナの生活の最中、含蓄がある言葉として胸に響く。
ー 「同じ場所に置かれた物は腐る』って言葉知らねえのかよ。同じ奴がずっと政権を握ってたら、腐るに決まってんだ。どうせ、誰がなっても一緒なら、それこそ、定期的に入れ替えねえとやべえだろうが。
蝉に上司の岩西が言うセリフ。
なんかねぇ。タイムリーに響きますよね。
伊坂さん、バッキバキな感じ。
登場人物の軽快な会話が、たまに欝陶しく感じるくらいに、キレキレの小説です(笑)
シリーズ2作目の「マリアビートル」を即購入してしまいました。
ホントにどうでもいいけど、小説に登場するロック・ミュージシャン、ジャック・クリスピンの名言(笑)「死んでるみたいに生きたくない」は、まんま渡辺美里の初期のシングル(小室哲哉作曲だけどまだそれほど売れてなくて鼻につかない頃の曲で名曲!)のタイトルで、僕はそちらの方が頭の中で自動再生されてしまって困った(笑)
映画版ではジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(!)が「Don’t Wanna Live Like The Dead」という曲を書き下ろしている。こちらも結構カッコいい。-
映像と音楽
言葉と小説
それぞれの持ち味が融合するそれは
まるで、セッションに、似ている。
いつもその躍動を見る度に、心が躍...映像と音楽
言葉と小説
それぞれの持ち味が融合するそれは
まるで、セッションに、似ている。
いつもその躍動を見る度に、心が躍る。2020/06/21 -
2020/06/21
-
-
殺し屋シリーズの第一作目。タイトルの通り、虫にちなんだニックネームの殺し屋が出てくる。始めはいろんな人たちの目線で話が進むため、これがどうからんでくるのかと考えながら読む。
終盤に一気に進んでおもしろくなった。 -
逆順にAX→マリアビートル→777ときて、最後になってしまった殺し屋シリーズ第1弾。もっともらしい〝ジャック・クリスピンの名言〟で繋がる蝉と岩西の絆とか、鯨が見る幻影とか、終わらせ方(特に最後の1行)とか…伊坂さんらしいセンスに溢れていて、文句なしの面白さだった。改めて順番通り読んでみたいと思うし、「777」が出てさらなる続編も期待してしまう本シリーズ。ぜひ成長した健太郎&孝次郎メインで…。
-
「対決ですよ、精算ですよ」
醜き業の塊が、イナゴの如き群れが、地鳴りと共に1人の男の人生を襲う。
男は拳を上げ、殺戮の旋風に抗った。
やがて嵐が過ぎるなら
それは
握りしめた光を守ったと言えるのか?
それとも
その光に護られたのだろうか? -
グラスホッパー訳すとバッタのような昆虫
殺し屋と登場人物が魅力という情報だけで読み始め、正直ページが進まなく仕方なく最後まで読み切ろうて感じだったかな、たぶん深刻な場面とかに落ち着きすぎてる鈴木がそうさせたのかも
どのジャンルのくくりの小説なのか分からなく読後感は不思議な感じだった倫理学みたいに人間がいかに人間らしく生きるかを考えたりもした
解説見てサスペンスの常套手段にシャンデリアの吊り下がってる描写から次に首吊りの描写が来るそんな技術がそもそもあるんだと知れたりもした
好きなフレーズ引用
君を信じよう槿の言葉に鈴木は目をしばたたいてしまう
亡き妻のことを一回消化するのだ -
おもに東京都心部を舞台に、妻の復讐を誓う男と二人の殺し屋の一日あまりを描いた作品。タイトルの由来は、通常の孤独相から群生相に変化した際に凶暴化するバッタの生態を、都会にくらす人間になぞらえたもの。
【鈴木】元教師。妻を轢き殺した男の父が経営する違法取引を扱う会社に潜入し、復讐の機会を窺っている。
【鯨】「自殺屋」とされる殺し屋で、依頼に応じて対象を自殺に追い込む大男。依頼人は政治家や官僚が多い。
【蝉】零細組織に属する二十代前半の殺し屋。上司にあたる岩西に反抗心をもつ。短絡的な性格。
上記の三人が順繰りに語り手となる多視点の一人称小説。鈴木が復讐するはずだったフロイラインという会社の御曹司が「押し屋」によって唐突に殺害され、鈴木を含めた三人がその渦中に巻き込まれていく。三人のうち唯一殺し屋ではない鈴木が真の主人公にあたり、作中もっとも無防備な人物ともいえる。各パートが10ページ程度で切り替わり、作品のテンポの良さの源となっている。カバーの裏表紙には「疾走感溢れる筆致」とあるが、多視点で同じシーンを描く必要性からリプレイのような箇所もあり、物語全体の流れはそこまで軽快でもなく、中盤はやや中だるみする。
エンタメ作品とはいえ、あまりに死を軽く扱いすぎるなら抵抗があると考えていたが、殺した人間たちの亡霊によって常に悩まされている鯨だけでなく、蝉の終盤の展開にも殺人への咎めが描かれており、要らぬ心配だった。ポップな作品を予想していたが、現代社会に対するネガティブな視点も交え、思っていたよりシックな作風だった。かといって過剰に重くもなく、サスペンスとして楽しめた。