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感想・レビュー・書評
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※(2023.11.24
久々の映画鑑賞)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新婚の一般女性を主人公とした長編ミステリ小説。連載時期は1958~1959年頃。金沢を中心に石川県がおもな舞台となっている。
主人公である26歳の板根禎子は、広告社に勤める10歳年上の鵜原憲一との見合い結婚を決めたばかりである。憲一はここ数年、北陸の出張所勤務で月に20日が金沢、残り10日で東京の本社に戻るという暮らしをつづけている。新婚旅行も無事終わってしばらくのち、会社の辞令により憲一の東京勤務が決まり、禎子は憲一の最後の金沢行きを見送る。しかし予定の一週間を過ぎても戻らない憲一を心配する禎子のもとに憲一が勤める広告社の社員が訪ねてくる。憲一の失踪が決定的になったことを知った禎子は、急きょ12月の金沢へと向かう。
おもな登場人物は禎子夫妻、憲一の兄夫婦、憲一の金沢での後任にあたる本多、憲一が金沢で懇意にしていた地元名士である室田夫妻、禎子の母など。本作での舞台となる冬の金沢は、憲一の不可解な失踪による重苦しさをそのまま投影するようにきわめて陰鬱に描かれている。470ページほどの長編だが、憲一のもっていた謎の写真の存在や意外な前歴、ある登場人物の不審な挙動など少しずつ明るみに出る事実に興味を引かれ、実質的な文字数がそれほどでもないこともあって飽きずに読み通せた。
特別な能力をもたない素人の禎子が主人公であり、作中にはいわゆる"名探偵"にあたるような登場人物も存在しない。"普通の人びと"による推理小説である。それゆえに犯人当てタイプのミステリのように特定のポイントで答え合わせというわけではなく、物語が進むとともに徐々に謎がほどけていく過程を禎子とともに体感する。読み終えても結局わからないような複雑なミステリとは対極で、一般人の目線で楽しめるようにつくられている。意図されたものではないかもしれないが、当時の時代の雰囲気を感じることができる点にも好感をもった。 -
近頃、川端康成の本をしっかり読み直そうとしているのだが、読んでいるとすぐに眠くなってしまうし、どうもテンポが会っていかない。
それでたどり着いたのが推理小説であり本書である。
松本清張、そしてゼロの焦点。
明らかに聞き覚えのある固有名詞である。
本書がいかに有名で期待すべき本であることは知っていた。しかし結論から言うと退屈だった。
盛り上がりに欠ける。もっと仰天させられるような瞬間があってよい。淡々とした捜査を追っているという印象だった。 -
2009年公開の映画を観たたので、改めて読んでみた。原作小説通りでは確かに映画化しにくかったのかもしれないが、後半はオリジナル要素が入り過ぎたと思う。
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砂の器以来 久々の松本清張さん
個人情報ダダ漏れの役所には笑ってしまったけど
まぁ楽しめました。
自分の中で理由は謎ですが笑
松本清張ブームがやってきているので
次は、球形の荒野を読みます! -
代表作、東西ミステリーベスト国内37位▲縁談、結婚、新婚旅行から戻ってすぐに悲劇。金沢へ足を向け、夫を探し、北陸の灰色の空の下、行方を尋ね歩く▼見事な「社会派推理小説」です。なるほど、リアリズムが一般読者を魅了したことが理解できるクオリティー。「洞察力キレキレの新妻が個人情報の漏洩もゆるゆるな時代に北陸の地で美人度を生かして失踪した夫を探す旅情派ミステリー」なのだが、計算しつくしたリアリズムとファンタジー感を覆い隠す見事さで読ませるのです。『点と線』と違ってこちらは色褪せない名作と言えようか(1959年)
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昭和33年の金沢などが舞台のミステリー。テレビドラマを観たことないはずなのに、筋も知ってるし犯人も知ってる。しかし、今頃初読。ミステリーの古典と言われるだけあって面白い。後半はヒロイン禎子(広末涼子)の推理が古臭い言葉遣いのせいか、いつしか松本清張氏の顔になってしまうことに閉口しました。(^ ^)
金沢の路面電車も羽咋からの汽車も実物を覚えているだけに、すべてが懐かしく。 -
アガサクリスティに続き松本清張へ。
2024年初めに能登半島地震があり、正にど真ん中のエリアの話。
広告代理店の金沢に勤務する男とのお見合い婚、新婚旅行を終えて東京転勤が決まってから失踪事件が起きる。
男の兄と後任者の本多は毒殺され妻が事件の真相を追う。戦後の米兵向けパンパンのその後の対比(室田夫人と田沼弓子)、北陸の描写(低い雲や雪国)、事件の真相に迫る事実の考察が見事。
映画も見てみたい。