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感想・レビュー・書評
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オーディブルで聴了。夏の宿場の一コマ、街まで向かうため、まだかまだかと出発を待っている、危篤の息子に会いたい農婦、若者と娘、田舎紳士、母親と息子の5人の乗客。出発までの苛立ちが伝わってくるような時間の経過。やっと乗客を馬車に乗せた馭者の居眠りでまさかそんな運命になるとは。誰も思ってもみなかった展開に対して、蠅の視点での淡々とした描写に、じわじわと恐怖が伝わる。
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小説の神様と言われていた横光利一。
影響を与えた作家が、坂口安吾、太宰治、織田作之助、三島由紀夫、大江健三郎、他多数。
私は横光文学は、はじめて読んだ。
この『蠅』は、人間の何気ない日常生活は平穏であることのほうが神秘であり、ちょっとしたことで命を落としてしまうという強烈な印象を受ける。
田舎の、のどかな風景と普通の人々が登場するだけなのに、作者からのメッセージは強烈に感じる。
馭者のちょっとしたミス(居眠り)で乗客が死んでしまう。
けれど小さな一匹の蠅は、余裕で危機から脱出してしまった。
のんびりした田舎風景からのインパクトが衝撃的で、私は続けて再度読んだ。 -
新感覚派……なるほど確かにシュールな感じがクセになりそうだなぁ。登場人物の扱い方がすごい記号的で、形式主義の真髄を短い本文に蝟集させててすごくアバンギャルドなお話でした。蠅と題がついていたので何となく予想していましたが、随所に愚かである人間に対する皮肉が込められていて、結果蠅だけがのうのうと生き延びる終わり方はなんだかスカッとしたような、けれどもしこりを残した終わり方で、深いです。殊に、倅のことを心配する農婦と、子供をあしらう母親の御二方にかなりの皮肉を感じました。
それにしても、この人もまた文章が上手い! グイグイと読めてしまう……!! -
蠅と人の群像劇
脳内でカメラが寄ったり引いたりするのを感じました。
匂いや音、気配、光…臨場感があります。 -
第6回(古典ビブリオバトル)
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蠅視点で世の中を見る
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映画のような眼に浮かぶ情景を優雅に飛ぶ全知の蠅。
西洋では画家が自分の画力を示すために精緻な蠅を書き込んだというが、それを彷彿とさせる「巧さ」が心地いい。