- Amazon.co.jp ・電子書籍 (334ページ)
感想・レビュー・書評
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中学を中退した次郎は東京へ出て、朝倉先生が開いた塾の助手を勤めることに。そんな中、日本は次第に第二次世界大戦に向かい、次郎、朝倉先生たちは外部からの圧力により閉塾に追い込まれる。その後は、全国各地にいる卒塾生のもとをまわり、塾の精神を深めて行く…、というところでこの第五部は終了、未完となっている。
戦中・戦後、次郎や朝倉先生、卒業した塾生たちがどうなったのかとても気になるが、その先が読めないことは残念でならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いよいよ次郎物語も最終。次郎は多感なティーンエージャーになった。結果的に最終章となっただけで、著者は更に成長した次郎を第6、第7と続けるつもりだったんだ・・・次郎の成長を追うことができずに残念だが、それは読者が想像する機会が与えられたと思う事にしよう。
五部は最も読みごたえがあった。恩師朝倉先生の教えに影響を受け、自分なりの正義や社会への考えも持ち始めると並行して、世の中は軍国主義に進む。
愛する人への気持ちに気づきつつ、兄への遠慮からその気持ちも閉じるどころか、自分にも兄にも彼女にも嘘をつく葛藤。彼の気持ちの揺れに、私も伴走するように読み進めた。葛藤を大友に吐き出す事で、尊敬する友の気持ちに触れた次郎はこの後どうする?道江や兄に書いた手紙を訂正し、愛する道江に気持ちを届けに行くのか?それともこのまま若い初恋は封印する事にするのか?どっち?どっち?の結果も、読者に委ねられた。そうか、では、私は次郎は道江に告白しに行った、と思っていよう。
世の中は軍国主義で教育、思想もそれに力ずくで洗脳させるようとする。朝倉先生の指導は普遍的で深い。強いパワーを持った政治に抗うことはできなくとも、自分達の信念は消えることはない。自分たちの仲間を増やしていき、その絆を深めていこう。最後の旅のシーンは明るい未来を予測させて心が澄んできた。
思想や気持ちが受け継がれていく、しかしこれは良い面も悪い面もある。例えば悪の集団を戦いで滅ぼしたとしても、負けた側の怨念は消えたわけでなく、どこかでその分子が残っていて、人も教えも引き継がれていく。今のロシア・ウクライナを見ていても、この戦争が終結したところで、痛みを負った人からその傷が消えることはなく許すことができるだろうか。そんなことを考えていた。
時代を超えて多くのことを教えてくれる小説だ。次郎物語完読できた!
#夏の読書感想文