大地の子(一) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 日本は今のロシアのように悪いことをしました。また、中国は変わっていません。

  • 戦争の過酷さを感じた。

  • 1巻目から凄まじい程の絶望・どん底感。V・E・フランクルは「いい人は帰って来なかった」と言っていたが、どこまで好転して行くのだろう。 文化大革命期の中国、その空気感に飲み込まれつつ、次巻へ。

  • 毛沢東の文化大革命の頃の話。
    主人公は中国残留孤児である日本人、陸一心。

    終戦時、中国・韓国に取り残された日本人達の苦労は、敵地に置き去りにされたという点で、沖縄戦とはまた違う形の悲劇だ。

    米軍基地問題もあり沖縄については今なお注目度が高いのに比べ、中国残留孤児問題は風化しているように思える。

    養父と一心の親子以外の何物でもない強い絆は、文革を乗り越える力となる・・・

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「文革を乗り越える力となる・・・ 」
      山崎豊子の作品は、腰を据えて読まなきゃって思いつつ手付かず。「大地の子」と「沈まぬ太陽」の、どちらを...
      「文革を乗り越える力となる・・・ 」
      山崎豊子の作品は、腰を据えて読まなきゃって思いつつ手付かず。「大地の子」と「沈まぬ太陽」の、どちらを先に読もうか悩んでいる(変な言い訳)。
      「子供たちの王様」「活きる」「中国の小さなお針子」etcを観ると、生きる力を保つことが、とても大変な時代だったんだと、ビビッています。。。
      2014/04/22
  • 残留孤児、隆一心の過去と現在を行きつ戻りつしながら進行する第一巻。

    日中戦争や文化革命は世界史の授業で習って、知ったつもりでいましたが、ここまで壮絶だったとは。。(もちろん小説ではありますが)

    第一巻は本当に救いがなかったです。ここから、一心は幸せになれるんだろうか。山崎豊子の作品なので、ハッピーエンドはないと思いつつも、彼の未来が少しでも良いものであることを願い、読み進めます。

  • インテリジェンスが1ナノミリグラムも存在しない職場で、唐突に「大地の子」を読んだことある?と聞かれ、そういや山崎豊子の代表作「白い巨塔」「華麗なる一族」「沈まぬ太陽」とかは読んだけれど、「大地の子」は読んでないなと思ったら、そのとたんに読みたくてしようがなくなり、すぐに地元図書館にリクエストして読み始めたものです。

    昭和38年生まれの私、小学校高学年頃から中国残留孤児という言葉を聞き始め、当時の私は昭和4年生まれの父に尋ねたのだった。

    なんで中国人は日本人の子供を育てたの?

    父の答えはこうだった。(私の記憶が間違っていなければ)

    日本人の子供は優秀だったから、みな欲しがったんだ。
    (農作業を効率的にやらせるという意味だと思う)

    この答えはいかなるものだったのか。父は既に故人。子供を悲しませないために言ったのだろうか。それとも、父自身異国に残った邦人について無知すぎたのか。答えは風に舞っている。

    もう数十年前になるけれど、「大草原に還る日」というやはり在留邦人のドラマを見たことがある。そば畑で見つけた日本人女児を農村の夫婦が育て、優秀な彼女はモンゴルで先生になるという話だったと思うが、このときも父の言葉を思い出した。

    この「大地の子」も優秀な邦人の子供のお話。さてどうなるやら。

    しかし1巻目の収容所の話は心が痛む。戦争はかくも人の心をむしばむ。侵略した国への残虐な行為、また侵略された国が戦争が終わると、近隣自治区へ同じような行動を繰り返す。ほんのちょっと前まで、こうやって人類は残虐行為を繰り返してきたのだから、今更平和を謳っても、先祖たちの好戦の遺伝子は消えはしないのかも。

    時の権力者が無理くり戦争させていたのかもしれないけどさ。しらんけど。

  •  大地の子 山崎豊子著を読んで

     大地の子は、中国残留孤児:陸一心(ルーイーシン)の波乱極まる半生。戦後の日中合同ビジネスである宝華製鉄所。二つの切り口で中国の現状を巧みに表現した1987年から1991年にかけての長編小説である。

     この作品を執筆するにあたって、著者のたゆまぬ努力が背景にあった。中国への取材の申し込みは困難を極めた。諦めかけていた時、当時の総書記との会見が実現した。我が国の欠点、暗い影を正直に書いて下さい。それが真の日中友好である。と背中を押してもらった。国家機関、労働教養管理所、労働改造所の取材。戦争孤児と養父母の家への訪問。農村でのホームステイ。三年間に及ぶ忍耐と努力の日々であった。さらに、参考文献は百六冊。想像を絶する彼女の学びの上で準備を整え、執筆には五年間の道のりがあった。二度の病で倒れながらも書き上げた。祖国の体質、犯した罪、沢山の人々が犠牲となった戦争を忘れないで欲しい。という彼女の強い信念からであった。

     著者は、戦中戦後の度重なる社会問題が人々に与えた影響を細部まで執筆した。日本政府に見放された満州開拓団の悲劇とそこから生まれた戦争孤児の壮絶な苦しみ。狂気をはらんだ文化大革命の嵐。労働改造所の実態。日中共同プロジェクトの製鉄所建設をめぐる日中双方のすれ違いや葛藤。中国政府、中国という国のいつ足元を狙われるか分からない複雑な体制と制裁。

     孤児である一心は社会問題の荒波に揉まれ、苦しんだ。日本人という理由で多々の差別を受け続けた。いとこや学友にいじめられた。学生時代は、努力を惜しまず優秀な成績であったが、共青団の入団への道のりは険しかった。大学卒業後の職務は納得いく行先ではなかった。恋人には日本人という理由で別れを告げられた。職務でも真面目で熱心に取り組んでいたが、差別を受けた。労働改造所で囚人として5年半を過酷な環境に身をゆだねることになった。職務復帰後も僻地への左遷が言い渡された。しかし、二年後に意外な人物が彼の為に政府へ働きかけた。彼は古巣である宝華製鉄所に復職した。

     様々な差別から彼を救い出してくれたのは、多くの愛情に恵まれたからだと痛感した。教師であり教育まで受けさせてくれた中国の養父:陸徳志(ルートウチ)と日中合同ビジネスで奇遇にも再開できた実父:松本耕次との親子愛。7歳で生き別れとなり、中国の貧しい農家の嫁となった妹:あつことの兄妹愛。一心と共に逃亡を計らい、その後も苦楽を共にした袁力本(ユウンリーベン)との友愛。大学時代知り合った丹青(タンチン)との恋愛。労働改造所で知り合った妻:月梅(ユメエイ)と娘:燕々(イエンイエン)との家族愛。どの愛情に惹かれるかは、読者次第であると思う。

     一心の妹、あつ子のことは頭から離れない。5歳の時、中国で兄と生き別れてから貧しい農家に引き取られ、その生涯は壮絶なものだった。学校には無縁の畑仕事の毎日。夫からの暴行の連続。悲しすぎる5回の出産。愛情を注いでもらうことがない暗黒の生活。感情さえも奪われていった。 兄との再会が実現した時、長年の過酷な労働で彼女は病床に伏せていた。ただ、兄との時間は、彼からの愛情を思いきりかみしめることができた。そう思う。記憶が蘇り、兄ちゃんと叫び、抱きついた。これまでの苦悩な思いをを吐き出すかのように号泣した。日本に帰って家族に会いたい。と言った。最愛の人に感情を受け止めてもらえた喜びが感じられた。
     二度目に会ったのは病院であった。あつ子は兄の訪問を待ちわびていた。日本に帰って家族と話をすることを夢見ていた。兄から日本語を教えてもらった。
     



     三度目に出会えた時、彼女の命の灯は消えかけていた。兄に付ききりで看病してもらい、41歳で静かに息を引き取った。兄からの愛情で、彼女は人としての存在を認めてもらえ、守ってもらえた。そう感じる。兄は甘えることが許される唯一の人であったと思う。意識がもうろうとする中であったが人生に幕を下ろす時、最愛の兄が傍にいてくれたこと。溢れる温もりを受け取ることができたと思う。短期間であったが、互いを思い合えた奇跡。兄妹の深い愛情は、国境を超えた日本へもこだましたに違いないと切に願った。
     
     丹青の一心への想いは、紆余曲折もありながら、感慨深いものだった。彼女は高級官僚の娘であり、その特権を利用している卑怯な女性だと思われていた。大学時代の恋人で、日本人ということだけで彼を捨てた。パートナーには恵まれたものの、やはり自分の心の人は一心である。とじわじわと気づいてくる感情に共感できるものがあった。一心を宝華製鉄所に復職させた要の人物であった。愛する人の幸せを願い、いつまでも忘れないであろうその心境が胸に刺さった。

     実父である松本耕次に情がわいた。彼の自責の念と孤独感は耐え難いものであったであろう。開拓民として家族で満州へ渡ったのち、軍からの招集があった。戦後、家族は亡くなったと伝えられた。
     娘のあつ子とは死後の再会。息子の勝男とは宝華製鉄所で再会。彼らは、お互い離れ離れでいた時の苦労を語り合った。自分は1人で寂しい。日本に帰って来て欲しい。中国では日本人という差別が今後いつ起こるか分からない。素直に気持ちを伝えた。勝男からは後に「私はこの大地の子です。」と中国人として生きることを告げられる。自らも父親となった勝男は、彼の胸中に熱いものを感じた。親愛なる我が子との距離は遠くなった。
     しかし、勝男は人に温かく誠実な人柄である。自分は1人ではない。自分を忘れる事は決してない。離れて暮らしていても、心は通じ合っている。と息子からの愛情を受け止めながら暮らして欲しいと心から思う。

     毎年、八月になると戦争関係のニュースが流れる。日本は世界で唯一の被爆国である。広島、長崎の原爆で多くの犠牲者が出た。自分達は被害者という立場の報道に疑問を感じるようになった。日本政府は加害者である。他国へ戦争をしかけた。国内、海外に想像を絶する犠牲者を出した。その反省は決して忘れてはならないと思う。戦争と向き合う機会を与えてくれた著書に感謝したい。

    令和5年6月16日  

  • 日本人として生まれながらも、中国人として育てられた主人公の壮絶な人生が想像出来る。
    日本人であるが故の壮絶な体験の中で、信念を持って生きようとする主人公やそれを支えてくれる中国人の姿に心を打たれた。

  • 特に育ての親と主人公の関係は感動。

  • この作品は全ての人が読むべきではないでしょうか。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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