闇金ウシジマくん(9) (ビッグコミックス) [Kindle]

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  • 闇金ウシジマくん9 2007

    『闇金ウシジマくん』(やみきんウシジマくん)は日本の漫画家である真鍋昌平による漫画。2004年から2019年まで『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で不定期連載された。
    2010年10月より、山田孝之主演で毎日放送(MBS)の制作によりテレビドラマ化され、その映画版が2012年8月25日より公開された。また2014年1月にはドラマの新シリーズが放送された他、5月16日には新作映画が公開された。詳細はテレビドラマの記事ならびに映画の記事参照。

    概要
    10日5割(トゴ)の超暴利闇金融『カウカウファイナンス』の経営者である丑嶋馨とその従業員の日常と、カウカウファイナンスに訪れる客、およびその関係者の様々な人間模様と社会の闇を描いたストーリー。物語は各エピソードの中心となる人物の視点で進み、丑嶋はそれらの人物に接触する狂言回し的存在である。そのため丑嶋が全く登場しない回も多い。なお「○○くん」というタイトルは、当時流行した「むじんくん」(アコム)、「お自動さん」(アイフル)などのサラ金の自動契約機のネーミングから着想を得ている。
    2022年3月時点で累計発行部数は2100万部を記録している。
    第56回(平成22年度)小学館漫画賞一般向け部門受賞作品。
    連載を終了した理由として、作者は「闇金業者という犯罪者の視点で描く話に限界を感じていた。『突き詰めて描けば描くほど読者が離れる』」と述べている。その後、弁護士を主人公とした『九条の大罪』を連載開始した

    「フリーターくん」編
    宇津井優一(うつい ゆういち)
    本エピソードのキーパーソン。宇津井家の一人息子。35歳。相模原市在住。最終学歴は高卒。
    両親と同居し、日雇い派遣とパチスロで金を稼いでは使い、一般の消費者金融で借金を重ね、そんな退廃的な自身の生活やその日起きた不快な出来事などを「鬱ブログ」というブログで記している。
    自己中心的で幼稚且つ怠惰な性格の持ち主であり、社会常識も著しく欠如している。それ故、接した相手の大半からは強い悪印象を持たれており、親族からも前述の借金から母親共々縁を切られたがる程。
    生活費の件で母と喧嘩の上実家を勘当され、ネットカフェで生活の後、ゲストハウスに入居するも孤立。日雇い労働の中で椎間板ヘルニアを患ってしまったことでゲストハウスの部屋代を払うことができなくなり、果ては、不良少年たちにお金を盗られ殺されかけたことで、両親に電話で謝ろうとした際に母が倒れたことを知らされる。命辛々母の入院する病院へ行き、両親と和解。その後、搾取されながら丑嶋に縋り続ける両親の悲惨な姿に痛嘆し、丑嶋に啖呵を切りながら両親を自分が守ると宣言。その成長ぶりに丑嶋から興味を持たれ、借金を軽減される。
    自己破産後は訪問介護の仕事やパン工場で働き始め堅実に借金を返済していき、これまでのような稚拙な振る舞いも無く、寧ろ自身の経験から安易に仕事を辞めようとする同僚を諭すなど、人間的にも大きく成長。皮肉にも自己破産して家を奪われた後の方が家族仲も良くなり、幸せな生活を送ることになった。

    宇津井美津子(うつい みつこ)
    本エピソードの債務者。優一の母。好物は団子と落花生。早期退職に無断で応じた夫や、無気力な無職である上にギャンブル狂な一人息子に愛想を尽かしており、家族間の交流はほぼ皆無に近い。だが、自身も後述のように借金のリスクがある行為に安易に手を出すなど、息子同様に短慮な一面が見受けられる。
    家族が当てにならない状況の中で、自分がなんとかしなければいけないというプレッシャーから株の信用取引に手を出すも、追証が原因で借金をしてしまう。さらに丑嶋と樺谷の策略に乗せられ借金が莫大な金額まで膨れ上がる。親族に借金の申し込みをするもにべもなく断られた上に見放され、結局は自身の母親を道連れにする形で金を作るも、丑嶋のペーパーカンパニーによる支払督促を受けた裁判所からの特別送達を優一が渡し忘れていたために異議の申し立てが出来ず、財産も家も全て取り上げられた。破産後は何もかも失ったショックから心理的な過労で倒れるがそれをきっかけで優一と和解。その後は自身が徴収されているだけに過ぎないことを薄々理解しながらも、必死に丑嶋を肯定的に考えながら縋る毎日を送っていたが、その丑嶋に対して優一が家族を守ると啖呵を切った際には、憑き物が取れるかのように感涙を流した。

    宇津井優作(うつい ゆうさく)
    優一の父。サラリーマンだったが、早期退職を妻に無断で行ったことから仲が険悪になり、日中は公園で時間を潰していた。典型的な仕事人間で優一の育児は妻に任せきりだった。しかし、自己破産後は再奮起し、スーパーマーケットでパートを始め、今までの愚行を詫びる優一に「過ぎたことはどうしようもない、大切なのはこれからだ」と諭すなど、父親らしさを見せた。

    優一の祖母
    本名不明。優一の母方の祖母で、彼からは「大好きなおばあちゃん」と慕われている。美津子の借金のために家を失い、優一たちと同居することになる。高齢もあってやや認知症が進行しており、著しい記憶の混乱が見られるも孫と一緒に生活ができるようになり生活に張りができる。

    樺谷(かばや)
    丑嶋の知人で株式売買詐欺師。発売前の週刊誌のスクープを入手していたりする情報通。偽名を使う時は「樺野」と名乗る。日本橋人形町が好きらしい。
    「フリーエージェントくん」編では天生翔が愛人に預けており、再起の資金と話題作りに使うはずだった2億円を愛人から騙し取り、天生に間接的にとどめを刺していた。

    木都根(きつね)
    大勝証券の営業マンで樺谷の知人。樺谷から紹介され美津子の前で株を購入したように見せるが、実際は伝票を偽装しただけの工作である。樺谷や丑嶋に比べると堅気の仕事についているためか小心で、詐欺がばれることや警察沙汰や裁判沙汰になることを恐れていた。

    栄枝英一(さかえだ えいいち)
    没落した宇津井家を追い出された優一が「法テラス」で自己破産について相談した弁護士。
    万一途中で逃げ出されないために住所不定の債務者を受け入れないなどの保身の欲求もあるが、それ以外は業務に忠実な人間で、この期に及んでも自分に不都合なことを屁理屈や笑うことで誤魔化そうとする優一を一喝し『破産は更生のためにある』と強調する。
    優一には闇金の対処法についても教えるが、彼に対して「借り手が闇金をべったり信頼している限り解決しない」と釘も指しており、優一が最終的に精神的に成長する大きな後押しとなった。

    幸(さち)
    宇津井家を追い出された優一が身を寄せたゲストハウスのオーナーの愛人で、美人であるために優一は恋心を抱く。
    飄々としてつかみどころのない性格で、優一を『どうして坊や』と呼んだのは彼女。その一方、ゲストハウスにいるニートを受け入れたりする包容力をもつ。

    橋本(はしもと)
    優一の小学校時代の同級生で中学からは私立中学に通っている。大卒のサラリーマン、所帯持ちで息子が二人いる。優一ととあるショッピングモールのフードコートで偶然再会する。初めは優一との再会を素直に喜んでいたが、自堕落な生活を送りながらも見苦しい自己弁護や卑屈な言動を繰り返したり、真面目に生きている人間を負け惜しみ同然に蔑もうとする彼の幼稚な態度に呆れて愛想を尽かし、優一が去った後、彼のことを「大人子供(フリークス)」「自分を守るのに必死なお子ちゃま」と散々扱き下ろす。去った宇津井は小学校の同級生とも大きな差をつけられたことを認識し、自信だけを欲しがりながら慟哭した。
    しかし自身も金銭的に余裕がなく、妻には頭が上がらずに尻に敷かれるなど、決して幸せとは言い難い生活を強いられている。

    橋本結花(はしもと ゆか)
    橋本の妻。宇津井や橋本の小学校時代からの同級生で、宇津井の初恋相手でもある。旧姓は水野。
    産後太った体格に変わっており、再会した優一から出会い頭に失礼極まりない言葉を吐かれたことを根に持ち、夫と共に優一を扱き下ろす。


    以上のようにWikipediaで紹介される作品。
    真鍋昌平氏による著作。
    週刊ビッグコミックスピリッツ2007年第20号〜第25号、第27号〜第32号掲載作品。
    2007年9月4日初版第1刷発行
    電子書籍制作会社 株式会社昭和ブライト

    フリーターくん編16~26

    ローンの返済に行き詰まり団地暮らしになった宇津井家が描かれる。
    宇津井優一は些細な事で喧嘩になり、団地を出るが・・・
    東京に行き、相模原へ戻ってきた後の河原で地元のヤンキー4人に襲われた場面は殺される結末なのかとビビった。
    ただ自分の借金を整理しウシジマに食い物にされていた家族の借金も何とかしようと立ち上がった場面は胸に来る。
    フリーターくんも詐欺手法で自宅を奪われたものの、終わり方はまだ救いがある。
    救いのある終わり方は闇金ウシジマくんでは珍しい。
    宇津井優一もまじめに訪問介護で働き、週一でパン工場で夜勤を行っている。
    豊かになるためには真面目に働く必要がある。
    それを体現しただけでもこのフリーターくん編は良い話だ。
    ただこの手の良い終わり方を迎えた話の方が少ないから闇金ウシジマくんはやはり恐ろしい。


    印象に残った点

    引っ越しはキツイんだよなあ・・

    何をするにも金がかかる。
    金を使わない日は1日もない。

    日払いの人材派遣は毎日違う現場で疲れる。

    毎日違う仕事仲間で心底疲れる。

    自分の事を知っている人間がいない職場はとても辛い。

    まるでモノ扱いされてるみたいだ。

    みんな帰る家があっていいなあ。

    (ホームレスは)少しでも優位になるための嘘に恥はなく

    自分の金じゃないから無駄にしちゃうんだよな。
    自分の金だったら300円のCDレンタルだって必死に選ぶだろ?

    破産てのは要するに更生のための制度だから、一度やったのはしょうがない。
    一度くらいは許してあげようってのが、今の日本の破産の制度だからね。

    よっぽどの事がないと2度目はないよ。

    あなたさ、一生、今の生活でいいなら自己破産する必要ないよ。
    住所不定で5年逃げ切れば時効だし、ケータイの番号変えれば消費者金融は調べられない。
    ただし、もう普通の生活に戻れない。

    (ホームレスは)年を取れば取るほど職が無くなって抜け出せなくなっちゃうんだ。

    汚いカッコしてっと警察に職質されっからよ!

    世の中には弱い人間を食い物にしようとする奴がいっぱいいるから気をつけろよ!

    自立支援センターが駅の清掃の仕事見つけてくれたんだ。
    でもそこ、聞いてたのと違って実際は仮眠3時間で24時間労働だったよ。
    身体壊して倒れそうだったけど、頑張ったんだ。
    他に仕事なんてないからな。
    その仕事、何が一番嫌かっていったらさ、女便所の掃除だよ!
    トイレの汚物なんてまだマシだ。
    何あの人って女の目。
    あの目、あの目で見られるのが嫌で嫌でたまらなかった。
    ふざけやがって 俺だって好きで女便所に入ってるんじゃないんだ
    あの目は一生、忘れられない。

    逃げれば逃げた分だけ、居心地の悪い所へ落ちていく。

    人は誰かに強く関心を持って欲しいんだ・・

    俺はお前みたいな奴は、男として認めてねえ。
    だが、今の態度は気に入った。
    毎月5万円を1年間、事務所に持ってこい。
    そしたら、それで完済扱いにしてやる。

    脅すばっかじゃ、疲れちまうからな。

    人生の落とし穴がそこらじゅうにあいている。

    2023/08/12(土)記述

  • 「フリーターくん」編完結。
    家を失ない、痴ほう症の祖母とともに公団に移った宇津井家だったが、優一はひとり家を出て日雇いで生計を立てようとする。ネットカフェ難民になるも資金が続かず、ホームレスにもなり切れず、腰を痛めて路頭に迷う。自己破産するにも住所不定では信用が得られず、さらに不良少年たちに襲われ全財産を奪われる。これでもかというくらいの辛酸を舐め、ついにこれまでの人生を清算して父親に謝る。
    そこに田嶋を名乗る丑嶋が現れる。優一は自己破産して家も奪われた両親が、闇金にすがる姿を見て決意し、自分が家族を守ると宣言する。自己破産の末、介護サービスなどで少ない稼ぎながら日々を誠実に生き、借金を返済しつつ家族円満に慎ましやかに生活する優一の姿は、最高に眩しい。優しい丑嶋くんの姿にブラックジャックの影を見た気がする。

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著者プロフィール

漫画家。神奈川県出身。1998年、『憂鬱滑り台』で「アフタヌーン」(講談社)四季賞夏のコンテスト四季大賞を受賞、同誌同年9月号に掲載され商業誌デビュー。2011年、『闇金ウシジマくん』(小学館)で第56回小学館漫画賞一般向け部門を受賞。その他著書に『スマグラー』『THE END』(講談社)などがある。

「2017年 『THE END クライマックス編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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