道化の華 [Kindle]

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  • 2012年10月1日発売
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感想 : 10
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感想・レビュー・書評

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  • 「人間失格」の公開講座を受講しようと思って。再読。人間失格の主人公、大庭葉蔵は、1935年26歳の作品「道化の華」に既に登場している。
    こちらは、全く覚えていないので初読かなと思う。

    太宰治は、21歳の時、銀座のバーの女性と鎌倉で心中を図り、女性は亡くなり、自分だけ生き残る。
    その時の過ち、入院生活を綴った小説。
    入院生活は、4日間。
    1日目、心中後、肺結核患者の多い病院で入院生活。中学からの友人の彫刻家と、親戚の小菅が見舞いに来る。
    2日目、友人達と、無理して笑って話す。不甲斐なさは、道化で誤魔化す。兄が、警察、病院、心中相手の夫の諸事情を片付けてくれる。
    3日目、雪が降る。友人らとトランプなどする。付き添い看護婦に心中の詳細など話して聞かせる。
    4日目、退院となり、看護婦と葉蔵葉は、二人、江ノ島の海を眺める。
    と、入院中の話に“僕”という作者としての太宰治が、何度か顔を出す。大庭葉蔵は、心中当時の太宰。それに現在の太宰が、意見する感じ。
    本人も、作中で、この小説が上手くいかないと嘆いている。新しい作風に挑戦と思うけれど、しっくりしてないと思う。

    心中の要因は、虚傲、懶惰、等々何もかもが原因という。女にも生活苦は、あったとしても、道連れに過ぎない。過去の自分を今の自分が語るのだけど、心中そのものへの罪悪感は、かなり深そう。
    自分の罪であるとか、恥ずかしさを道化で誤魔化し、それで、わずかに社会と繋がっていく。

    人間失格では、この手法がバージョンアップされていると思う。

    • 1Q84O1さん
      おびさん、お疲れ様でした!
      これからは自分の好きなことに没頭しましょう(≧∇≦)
      おびさん、お疲れ様でした!
      これからは自分の好きなことに没頭しましょう(≧∇≦)
      2023/12/08
    • おびのりさん
      ありがと。
      まだ、動ける間に、こんな時間が来て嬉しい。
      少し前まで、何もできずに終わるのかなって思ってたんです。
      コロナ禍は、社会にとってマ...
      ありがと。
      まだ、動ける間に、こんな時間が来て嬉しい。
      少し前まで、何もできずに終わるのかなって思ってたんです。
      コロナ禍は、社会にとってマイナスの面が多く、知り合いにも後遺症に苦しむ方もいて良くない事とはわかっているのですが。
      先日、歳上の従姉妹とちょっとしたお出かけする時間ができて、二人で話したのですが、今までは、誰かが入院すると交代で付き添いに入ったり、葬儀があると、学校や仕事などの事は理由にならず、手伝いの呼び出しがあったりと、中堅どころの女子は、家事育児仕事介護地域行事と、寝る暇がない時代が長かったんです。それが、減ったから、お出かけできるんだね!って納得したんです。
      自分が発熱していても、親戚も隣組も許してはくれませんでした。今は、体温を測ってくれるので、体調が悪ければ、許されます。
      そして、お出かけできます。
      もう少し、お遊びできます。
      2023/12/08
    • 1Q84O1さん
      今まで頑張ってきたので、これからは遊べるときに遊んで好きなことをしてもバチは当たりませんよ^_^
      いっぱいお出かけ、お遊びですね!
      今まで頑張ってきたので、これからは遊べるときに遊んで好きなことをしてもバチは当たりませんよ^_^
      いっぱいお出かけ、お遊びですね!
      2023/12/08
  • 旧仮名遣いで現代人には少し読みにくくいくつかは意味が取れなかったものの、さすがに太宰ならではの散文の心地よさ。

    太宰自身の一回目の心中を下敷きにしていると言われている。最後の一文はその後の展開が2通りとれて気になる。
    主人公は人間失格と同じ大庭葉蔵という名前で人間失格のスピンオフのようと評されることがあるようだが、書かれたのはこちらの方がかなり先らしい。

    ストーリーの中に紛れて、自我というのか、作者の思いがぽろっと語られていることは文学によくあるが、本書は自我・メタ視点がストーリーを食うほどの割合を占めている珍しい一冊。書評も読んでみてからまた読み直したい。

    全体通して、マニア向けかも。

  •  井上ひさしが戯曲「人間合格」に関連する作品として「ロマネスク」と本作のタイトルを挙げていた。そこで読む。
     深刻な題材のせいで正面きって書きようがなかったのか、戯作っぽくなってしまった。笑っちゃいけないのに笑えてしまう。
     ポンチ絵も描ける大庭葉蔵、ということは「人間失格」の前日談と捉えてよいのだろうか。太宰初心者なので、よく判らない。
     余談:fire タブレットの読み上げ機能は旧仮名遣いに弱いこと。

  • 若いときの不安もやる事も、たいして変わらないということか

  • 道化を演じてる3人の奇妙な空気感は悪くなかった。

  • 著者の独り言が入るという構成はユニークだ。

  • パンドラの匣を思い出しました。
    時期的にはこちらの方が古いのかな?
    こちらは、女性と心中を試みて自分だけ生き残ってしまった主人公の、運び込まれた病院で交わす友人や家族との会話を通じて、作者の思いを読者に伝えようとした…という物語。
    作者ならではの題材です。
    当然その解釈は僕個人のものではありますが、この物語に関して言えば三分の一くらいは作者自身の物語へのつぶやきで占められていますので、これほど作者の考えや執筆中の感情が伝わる作品はないでしょう。
    ツイッターの文面の差し込まれた小説という所。
    新しすぎです太宰先生…。

  • 太宰治はいう
    『友はみな、僕からはなれ、かなしき眼もて僕を眺める。
    友よ、僕と語れ、僕を笑へ。
    ああ、友はむなしく顏をそむける。

    友よ、僕に問へ。僕はなんでも知らせよう。
    僕はこの手もて、園を水にしづめた。

    僕は惡魔の傲慢さもて、われよみがへるとも園は死ね、
    と願つたのだ。
    もつと言はうか。
    ああ、けれども友は、ただかなしき眼もて僕を眺める』

    田部シメ子 17歳 1930年11月28日
    太宰治の 第1回目の 心中相手。
    太宰は 田部シメ子とあって、3回目。

    太宰治は その頃から カルチモンを常用していたという
    そのために、カルチモンでは 死ねなかった。

    道化という言葉の意味を知ったのは 太宰治からだ。

    そして その主人公の名前が、大庭葉蔵 オオ バカ ゾウ。

    この作品は 読んでいて痛々しくなる。
    自分の体験を小説化して、
    言い訳を あれこれと考える 書き綴る。
    結局 体験よりも たいしたことは かけない。

    痛々しい小説である。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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