勝敗 [Kindle]

著者 :
  • 2012年10月1日発売
4.00
  • (0)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 6
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (19ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この作品は三人の男女のもつれた恋愛話。
    それも、兄弟で一人の女性を好きになってしまったのだから、ややこしい。

    兄の晃一は、父親の遺した資産と家業を引き継いだ当主。
    弟の旻は、肺を患って海辺で気ままな暮らしをしている。
    その兄弟と家族同然に育ってきた幸子。
    幸子は、幼い時から晃一の許嫁だったが、女学生時代に旻とかけおち。
    晃一は罪を責めず、揉み消して幸子と結婚、にも拘らず幸子は病弱な旻を看病したいと、別荘でつきっきりでお世話をしているのであった。

    この流れで行くと、幸子は旻を愛しているのかな?と思うが、そうでもないようなのだ。

    幸子は旻と口論の末、崖から落ちて死んでしまうのだけど、それが自殺か他殺か過失致死なのかわからない。

    後を追うように旻は病死し、遺された晃一は、「とにかくこの勝負は、どうやらお前の勝ちらしいね...安心して眠るがいい。」と、海に向かってつぶやく。

    晃一は妻も弟も愛していたことは確かなようだ。

  • 「勝敗」
    兄弟の間に生まれた勝敗。


    表題は「勝敗」とあるけど、何故かエッセイか歴史ものだろうと当初は想像していました。しかし、これは推理ものではないだろうか。最後の最後にある仕掛けがそれを物語っている。


    登場人物は、弟と兄、そして、兄嫁。弟は弟で兄に挑み、兄は兄で弟を疑う。若い頃、弟と駆け落ちしたが、許婚であった弟の兄と結婚した嫁は、完全に被害者ではないだろうか。しかし、実際どうだったのかはちょっと分からないw


    病に倒れ、もう命僅かの弟は、兄を困らせる為に、兄嫁に一芝居うってくれるように頼みます。その芝居とは、自分と恋人関係に戻ること。そう、弟は、結局、昔恋人だった兄嫁といちゃいちゃしたかっただけ。そして、兄嫁は弟にキスをする。この部分が、後の兄の話との大きなずれのきっかけになります。


    次第に、芝居であったはずが、兄嫁を独占したくなる弟(そもそもその気だったはずだけど)。しかし、芝居であったことを理解した上で、弟に付き合ってやった兄嫁。当然、兄嫁は、弟に拒絶反応を示す。もう良いだろうと。そして、トラブルに発展し、兄嫁は、崖から落ちてしまう・・・。


    しかし、兄嫁はこの転落では死んではいなかったです。止めを刺したのは兄。兄は、弟と兄嫁が昔駆け落ちしたことを未だに覚えており、このことをきっかけか分からないけど、兄嫁と弟は繋がっていると疑っていたんです。そして、病に倒れた弟を看病するという兄嫁の様子を、家の者に監視させ、例の目撃現場の証拠を掴みます。そう、兄嫁が弟の芝居の依頼を受け、キスをするところです。


    その報告を受けた兄は、すぐさま彼らのもとへ駆けつけ、弟と兄嫁が崖のそばで揉め、自分の嫁が崖から落ちるのを確認。一時は、気を失って木に引っかかっている兄嫁を助けようとするが、兄嫁を殺すことと犯行を弟に擦り付けることが出来ると踏んだ兄は、そのまま兄嫁を突き落とします。


    そして、兄嫁は遺体で発見され、弟は更に体を悪くし、兄に懺悔をします。そして、弟の懺悔を聞いた兄は、真実を語り始めます。これで、結末かと思いきや・・・。


    果たして、弟と兄、どちらが勝つのか。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

一九〇二年(明治三十五)、北海道生まれ。本名温(ゆたか)。推理作家渡辺啓助の実弟。慶應義塾高等部卒、博文館で雑誌『新青年』の編集者として横溝正史のもとで働くかたわら、推理小説、幻想小説を執筆した。博文館の映画プロットのコンテストに応募し、審査員だった谷崎潤一郎の目にとまり小説家デビュー。三〇年(昭和五)二月十日、谷崎のもとに原稿催促にいった帰り、タクシーが踏切で交通事故を起こし、死亡。享年二十七。

「2019年 『ポー傑作集 江戸川乱歩名義訳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

渡辺温の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×