水滸伝 九 嵐翠の章 (集英社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ぼちぼち折り返し

  • ここまであっという間に読んだ。

    あと半分。

    壮大なスケールで梁山泊と宋国との戦いが繰り広げられていく。

    どちらにも正義があり、人物の描写がすごい。

  • まずは恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

    天空の星: 急先鋒・索超
    地佐の星: 小温侯・呂方
    地微の星: 矮脚虎・王英
    地走の星: 飛天大聖・李袞
    地暗の星: 錦豹子・楊林

    さすがにここまで進んでくると、似たような名前の人たちが頭の中でこんがらがってきて、誰が誰だかわからなくなり始めました(苦笑)  もちろん、間違えようもないほどに印象に残ったエピソードがあって頭に定着しちゃった好漢もいるんだけど、同じ漢字が使われた名前の人はいけません。  特に「李」が付く人・・・・。  黒旋風・李逵と青蓮寺の切れ者、李富の2人だけはちゃんと頭に残っているんですけどねぇ・・・・・(苦笑)

    さて、物語の方はあの「祝家荘の戦い」が終わり、ちょっと一段落。  梁山泊側も青蓮寺側も先の戦の総括やら反省やら体制立て直しに余念がありません。  梁山泊は首都である東京開封府を攻めるための戦略拠点であり、既に構築されている二竜山・双頭山・梁山泊の大三角地帯をさらに南西に押し広げて梁山泊の砦の役割をも果たす「流花寨」の建築に踏み切ります。

    「大きな戦の直後だから・・・・」、「もっと大きな戦に備えて軍費を蓄えなくちゃいけないから・・・・・」と色々な言い訳はあるらしいけど、この「流花寨建築」に対して官軍側(青蓮寺)がほぼ無反応なのがちょっと不思議です。  ここまでの戦ではほぼずっと負け続けでもあるわけだし、「可能な限り巨大化する前に潰す」な~んていうことも言っていたはずなのに、なんで放置なんでしょうかねぇ。  せいぜいが青蓮寺が新しく作ろうとしている「潜水部隊」の調練を兼ねた攻撃ぐらいしかしてこないとは・・・・・。  ま、「流花寨」よりも梁山泊の糧道、「闇の塩の道」を潰すこと、さらには梁山泊の要となる人材(特にこの段階では林冲)の暗殺の方がプライオリティが高いということで、一応納得しておくことにしましょう。  



    さて、それはさておき、この巻で KiKi の印象にもっとも残ったのは宋江 & 呉用の会話の中で語られた以下のセリフです。

    「袁明は袁明で、志を持っている。  いまは強くそう思う。  宋との戦は、志と志の戦でもある。  まことの正義など、誰にも見えておらん。  自らが抱いた正義を、まことと思うしかないのだろう。」

    そうそう、そうなんですよね。  梁山泊も青蓮寺も現状の問題点の認識という意味では結構近いものをそれぞれが思い描いています。  でも、「じゃ、どうする?」というその問題解決のためのアプローチ法が異なるだけとも言えるわけです。  片や現在の体制を、宋という国家そのものをぶっ潰して新しい理想郷を新たに構築することを目指しています。  片や国家をぶっ潰すなんていう暴挙(?)には走らずに、国家の枠組みだけは生かしながら「行政改革」を目指しています。

    KiKi はね、個人的にはどちらかというとこの段階では青蓮寺側の考え方の方がまっとうだと思っているんですよね。  って言うのは、今の梁山泊からは「宋をぶっ潰してその後、どんな国を作るの?」というビジョンみたいなものがよく見えてこないんですよ。  「民のための国を作る」と言えば聞こえはいいけれど、「民のための国ってどんな国??」というのが見えてこない・・・・・。  もっと言うなら「民って誰のこと?」というのも見えてこない・・・・・・。  まあひょっとしたらこの物語の中で名前だけは出てくるけど内容は詳らかにされていない「替天行道」に書かれているのかもしれないけれど、それがわからないとねぇ・・・・・。   

    でね、このセリフ(↑)を吐いた宋江さんに一言だけ KiKi が意見させていただくとしたなら、

    「まことの正義な~んていうものが本当にあると思いますか??  見えていないだけだとでも???」

    っていう感じでしょうか?  恐らく宋江さんの志というのは「民のための国を作る」ことにあって、それこそが「まことの正義(自らが抱いた正義)」だと思っているんだろうけど、国家の枠組みを変えたらそれで万民平等・貧富の差のない誰もが幸せを感じられる状況になる・・・・というほど社会というのは甘いもんじゃない。  新しい枠組みを作れば作ったでそこには又、別の力関係が生まれてくるだけ・・・・・とも言えるわけで。  



    さて、この巻では大きな戦はなかったので、梁山泊の好漢から死者は出ないだろう・・・・と高をくくって読み進めていたのですが、最後の最後に又、惜しい人材を1人失ってしまいました。

    地闔星: 火眼狻猊・鄧飛

    単身遼に潜り込んで捉えられていたオーガナイザー魯達を1人で助け出してきた人物で、もう1人、「闇の塩の道」の実力者、王家に繋がる血統に生まれながら梁山泊に同心していた「天貴星: 小旋風・柴進」を救い出そうとして犠牲になってしまいました。  まだ晁蓋さんはピンピンしています。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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