前巻の最後、暗殺されてしまった晁蓋(ちょうがい)。
それが梁山泊の面々に与えた影響は、目に見えないものだけに大きかったと言える。
徹底的に慎重だった宋江が、全軍を率いて北京大名府へ出動するなど、晁蓋が生きていた時には考えられなかったことだ。
扈三娘(こさんじょう)や韓滔(かんとう)、呼延灼(こえんしゃく)らも、それぞれに晁蓋を救えなかったことで自分を責める。
特に韓滔は食事もとらず痩せ衰え…と思ったら…。
その一方で、梁山泊は戦いだけではなく、ひとつの国家のように体制を整え、法を整備していく。
“「とにかく、やらねばならぬことが、次々に出てくる。人の営みとはすごいものだと、改めて考えさせられる」
その営みの中で、人は悲しんだり怒ったり、そして喜んだりしているのですね」”
名もない庶民が安心して生きられるように、法を整備していく裴宣(はいせん)。
しかし裴宣(はいせん)は、法の限界も知っている。
“「法は、いつでも人のために作られる。どんな法も、最初はな。それから、少しずつ執行する者が都合よく解釈するのだ。そういうことができないようにしても、時が経つとそうなる」”
拷問のシーンなども読んでいてつらく、燕青の張りつめた想いに読んでいて息がつまるほどだったが、最後、楊令が真っ直ぐに育っている様子に、ようやく安堵の息をついた。