水滸伝 十八 乾坤の章 (集英社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 集英社
4.25
  • (4)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 36
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (342ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふいー

  • 呉用と童貫の一騎打ちを描くラス前の18巻。楊令の活躍。秦明 、解珍 、郝思文、林冲の戦死。一気に読めた。

  • この巻とあと1冊で終わる水滸伝。
    私なりに、楊令伝に繋がる落としどころを考えていた。

    童貫の戦死。
    これで宋軍の戦意は確実に喪失する。
    休戦または停戦の勅命が下りる。
    ほぼ壊滅状態に陥った梁山泊は、楊令が成長するまでの時間をそれで稼ぐことができる。
    童貫を斃すことができるのは、林冲ではないか?

    しかし、やはり私の予想は、あくまで素人の見立てであった。
    楊令、もう梁山泊に入っちゃったよ。

    新たな拠点として揚州に非戦闘員を移し、自立の手段を与え、北方にも燕青、武松、李逵などを配置しているので、彼らが次世代を率いていくのかと思う。
    しかし、あっという間に上級将校になってしまった楊令を、どうやって梁山泊から引
    き離すのか?
    だって、童貫が将軍でいる限りは、絶対梁山泊を壊滅させるでしょう?
    そこにいない人だけが生き延びるんじゃないかと思うんだ。
    まさか捕虜にされちゃう?楊令。
    何か暗い運命を背負っているらしいので、それもありか。

    本筋とは関係ないが、聞煥章の扈三娘への昏い望みは叶うのか?
    なんてことも考えながら、頭の中をフル回転させたまま物語世界へ入り込む。

    今まで梁山泊を支えてきた大物たちも、ここにきて戦死が相次ぐ。
    「生涯に一度ぐらい、女を助けた男になりたい」
    最後まで癒えない傷を抱えて死んでいったのか、あの男は。

  • 楊令が入山。
    いよいよ最終巻に突入。

  • まずは恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

    天敗の星: 活閻羅・阮小七
    地獣の星: 紫髯伯・皇甫端
    地速の星: 中箭虎・丁得孫
    天哭の星: 双尾蠍・解宝
    地奴の星: 催命判官・李立
    地平の星: 鉄臂膊・蔡福
    地角の星: 独角龍・鄒潤

    童貫さん、相変わらずありえないほど強いです。  でももっとビックリなのは楊令君です。  この段階でいくつなのかよくわからないのですが、王進スクールを卒業しいきなり梁山泊の新兵養成所に姿を現したと思ったら、入門試験で試験官をなぎ倒し、挙句あっという間に上級将校扱いです。  そして戦に参加したらいきなり相手の大将を討ち取ってしまうという活躍ぶりです。  もちろんこの手柄は手柄であるのと同時に規律を重んじる軍隊では許されることではない越権行為だったんですけど、その罰を受けるといきなり今度は正規の指揮官に、そしてふと気が付けば梁山泊本体の騎馬隊を任されちゃっています。

    おまけに梁山泊入りして早々に林冲と手合せ、騎馬での駆け比べをしちゃってあの林冲をして「老い」を感じさせ焦らせちゃうというこれまたありえない成熟ぶりを示してくれちゃいます。  ますますもって世代交代を意識させられるストーリー展開にちょっと苦笑い・・・・・。  ところが苦笑いしている暇にふと気が付けば二竜山がいよいよもって危なくなっていて、楊令の養父といってもいいような梁山泊第7位、霹靂火・秦明が命を落とします。

      

    で、そのまま楊令君は童貫元帥との戦になだれ込んでいくのかと思いきや、それこそ「楊令伝」の布石とばかりに北方へお出かけです。  そしてあの「楊家将」で楊業さんが戦った遼国内で決起したばかりの女真族の完顔阿骨打と意気投合。  幸いなことに童貫さんとの最終決戦が行われていない時期だからよかったようなものの、「梁山泊の戦はどうした??」という感じもなきにしもあらず・・・・です。  もちろん観光旅行に行ったわけじゃないけれどそれでもねぇ・・・・・。  

    梁山泊軍の糧道である「塩の道」に関係している大事なお勤めだとか、北の国境付近に緊張状態を生み出し大国宋の目を梁山泊に集中させないとかいう周辺状況も描かれているし、そこ(遼国)に張り付けられている蔡福・蔡慶兄弟のお話を語る必要があるというのもわからないじゃないけれど、どこか間延び感を抱かずにはいられません。

    で、ふと気が付けば楊令君は遼国出張から無事帰還され、何もなかったかのように童貫戦に突入していきます。  その戦の緒戦で窮地に陥った扈三娘を救うためにあの林冲が死亡。  林冲を失ってもほぼ丸々残された林冲騎馬隊を多くの上級将校が「あんなものは俺には扱えん。」というなか引き継ぐのもこれまた楊令。  ここまでいくといくらなんでもちょっとできすぎの感が拭えません。  しかも「いくらなんでも、まだ若すぎる」と危惧する呉用(& KiKi )に双鞭・呼延灼の言い放つ一言が

    「戦には、経験も必要だが、もっと必要なものがある。  それが何かは口では言えん。」

    とのこと。  感覚的にはわからないじゃないけれど、その一言でお終いですか、北方さん?という感じです。  う~ん、何とはなしにここへきてお話の進め方がちょっと乱暴になってきているような気がしないでもありません。

    実は初読の際にはその林冲の散り方とか彼を失った公孫勝の悲しみ方なんかに気を取られて、このストーリー・テリングの強引さはさほど気にならなかった KiKi ですが、今回は2周目の読書ということもあって、何となく批判的な読み方になってしまいました。  もちろん童貫さんが出てきた辺りから「あとは滅びるだけ」が運命づけられている梁山泊なので、秦明さんや林冲さんが亡くなるのは仕方ない流れであるとはいえ、どこか雑さ加減が散見されるような気がするんですよね~。

    「楊令伝」も既に読んじゃっているせいもあるかもしれないけれど、どこかに「童貫軍 vs. 梁山泊の決着は次の『楊令伝』でね~。」って言っている匂いみたいなものを感じちゃうんですよね~。  ま、何はともあれ残されたのはあの1冊。  とにかく最終章の第19巻へ進みます。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北方謙三の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
北方 謙三
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×