日記 [Kindle]

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  • 2012年10月4日発売
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  • 知里幸恵さんについて興味を持ち、Kindleで無料だったので軽い気持ちでなんとなく読んでみたら、旧字体なので少し読むのが大変だけど、数ページ読むだけでなんとももはや、クリスチャン文学で、日記文学としてとても美しく名作‥!

    知里幸恵さんは心の綺麗な方で、また、心を綺麗であろうとセルフアジャストメントをする聡明さが19-20歳の若さで備わっている素晴らしさ。

    "喜びも悲しみも苦しみも楽しみも、すべてが神様の私にあたへ給ふ事なのだ。私に相応しくない物を神様は私にあたへ給ふ筈はない。だから私はあたへられる物を素直に喜んでいたゞかなければならない。不平、それは、神を拒否する事ではないか。感謝、感謝!"
    "真心から与へられたものを真心から有難いと思ふ――それでいゝのだ。何でお礼が返せるかなどゝ思ふのは、かへって与へた人の真心を無にする所以かも知れない。私だって人に物をあたへる時、価を貰はうとして与へるか。それでは押売りではないか。"
    "人を呪っちゃ駄目。人を呪ふのは神を呪ふ所以なのだ。神の定めたまふたすべての事、神のあたへたまふすべての事は、私たちは事毎に感謝してうけいれなければならないのだ。そしてそれは、ほんとうに感謝すべき最も大きなものなのだ。"

    そして、なんとアイヌとシサムの両方を知り、健康不安の中、苦悩されていたことだろう。

    "岡村千秋さまが、「私が東京へ出て、黙ってゐれば其の儘アイヌであることを知られずに済むものを、アイヌだと名乗って女学世界などに寄稿すれば、世間の人に見さげられるやうで、私がそれを好まぬかも知れぬ」と云ふ懸念を持って居られるといふ。さう思っていたゞくのは私には不思議だ。私はアイヌだ。何処までもアイヌだ。何処にシサムのやうなところがある⁈  たとへ、自分でシサムですと口で言ひ得るにしても、私は依然アイヌではないか。つまらない、そんな口先でばかりシサムになったって何になる。シサムになれば何だ。アイヌだから、それで人間ではないといふ事もない。同じ人ではないか。私はアイヌであったことを喜ぶ。私がもしかシサムであったら、もっと湿ひの無い人間であったかも知れない。アイヌだの、他の哀れな人々だのの存在をすら知らない人であったかも知れない。しかし私は涙を知ってゐる。神の試練の鞭を、愛の鞭を受けてゐる。それは感謝すべき事である。アイヌなるが故に世に見下げられる。それでもよい。自分のウタリが見下げられるのに私ひとりぽつりと見あげられたって、それが何になる。多くのウタリと共に見さげられた方が嬉しいことなのだ。それに私は見上げらるべき何物をも持たぬ。平々凡々、あるひはそれ以下の人間ではないか。アイヌなるが故に見さげられる、それはちっともいとふべきことではない。"

    日記が途中で切れているのは、亡くなったから。
    知里幸恵さんが長生きできていたら、どんな美しい言葉をもっとたくさん紡げたことだろう‥。

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著者プロフィール

1879(明治12)年
6月25日、幸恵の母ノカアンテ(ナミ)、北海道幌別村のカンナリ・ハエリリ(金成恵里雄)とモナシノウク(茂奈之)の娘として生まれる。ナミは姉のイメカナ(1875年生まれ。マツ)とともに早くから函館に出て、英国人宣教師ジョン・バチラーの創立した愛隣学校に修学。日本語・英語を習い、敬虔なクリスチャンであった。
1884(明治17)年
4月15日、幸恵の父の高吉、北海道登別村のチリパ・ハエプト(知里波ヱ登)と加之の息子として生まれる。
1902(明治35)年
4月、知里高吉と金成ナミ結婚する。
1903(明治36)年 0歳
6月8日、幸恵生まれる。
1904(明治37)年 1歳
幸恵の祖父ハエプト、熊狩りの仕掛矢(アマッポ)に誤あたり死亡。その時、父高吉は日露戦争に出征中であった。
1909(明治42)年 6歳
2月24日、弟真志保生まれる(旧制一高、東京帝大出身、アイヌ語を研究する言語学者となる。『分類アイヌ語辞典』など著作集六巻がある)。この秋、幸恵は旭川近文の聖公会伝道所にいる金成マツのもとに領けられる。伯母マツ(金田一京助『アイヌ叙事詩ユーカラ集』の伝承者)とナミやマツの母であり、金田一京助をして”私が逢ったアイヌの最後の最大の叙事詩人ユーカラクル〃

「1992年 『銀のしずく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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