経営パワーの危機 会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫) [Kindle]
- 日経BP (2003年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (443ページ)
感想・レビュー・書評
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企業家は作れる。
起業家は天性のもの、ただ企業家は人を選び鍛えれば後天的に作れる。
■概要
プロ経営者である著者の体験を基に、経営パワー=経営者としての胆力、能力に焦点を当てた小説調のビジネス本。
とある大企業が多角化、子会社投資に失敗した所から、子会社再建を社内ミドル(30半ば)の主人公に任せる所から始まる。
・短期の止血(キャッシュイーブン)と長期の飛躍の両方をミッションに
短期の方は資金、とにかくキャッシュが回るようにコストカット、改善、粗利をあるべき所まで戻すこと。一方で会社本来の強みまで削りとると、長期の飛躍のタネを消しかねない。
長期の戦略はまず市場、そして競合(潜在含む)の認識から。セグメンテーションは単なる細分化ではない。自ら(自社)が市場と競合をどう認識し(軸出し)、どのようなステップでどこに行くのかを決めること
★またその短期、長期の話が全社として一つのシンプルなストーリーになって組織は動く
・戦略的企業家精神とMachiavellism
「戦略的企業家精神」には戦略論的、分析的な束ねの手法が不可欠だ。その時の状況に照らしてカギだと思われる経営要素をロジックで繋げ、なるべく数字で裏をとりながら、これからの行動とそれによって予測される結果の因果関係を組み立てる。常に競争と市場の動きを背景に置く。そのロジックを社員に見せて彼らを論理的に納得させ、皆の行動の方向性を束ねていくのである。
一方でこの考え方は独裁者を生みやすい。論理でも権力でもリーダーに逆らえなくなるからだ。論理で組織を抑える分、人情(浪花節)で組織からリーダーにもの言える余地を残しておくことが求められる。そうしないと組織が会社の成長に追いつかなくなったり、それ以前に後ろから刺されたりされかねない
■所感
2000年ごろに書かれた本だが現代2022年になってもそのまま活きてくる、本質中の本質を突いた内容である。
・経営者論と典型的な日本企業
分業、職能組織の一部を担うのと経営者とでは全く違うのだと、職能部門長から経営者になるくらいなら、小さな子会社社長や事業部の損益責任者を経ることが経営者を育てるというのは恩師から聞いていたが、すでに1980年代に見抜き世に提唱してきた三枝さんの眼力は想像もつかない。
大企業もようやく社内ベンチャーなどに舵を切っているが、40,50のミドルを押し当てるのではなく、30前半のイキイキした人材に戦略思考を叩き込み、早くトップに据えるべきだろう。
MBA上がりの人が経営企画という名の社内調整に留まっている大企業を見ると、ブレークスルーは厳しいように思える。
・経営パワーを自分がどう持つのか
機会を伺う。損益責任を担う機会にチャレンジできる環境に身を置くこと、後見人となる尊敬できる企業家(経営者)の下で働くこと。
まずはキャッシュ、とにかくキャッシュを死守する施策と行動を学ぶ。その中でビジョンと、常に長期収益の最大化のための"束ね"となる「戦略」を適切な時間軸で描けるか
短期は行動してなんぼの世界かもしれない。ただし"戦略"という思考から経営者は逃げてはいけないことをあらためて痛感する三枝節ストーリーだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
木下斉推薦(twitter)
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<きっかけ>” -
部下とのスキンシップと後見人(伊達の場合は財津)へのコミュニケーションを絶やさないこと、そして部下が同じ動機で働いているとは限らないことを知る必要がある
動機は違っても成果は同じ。成果があやふやだから、動機を重視してしまう、するしかない。まずは、成果の厳密化だと思います。
知財の成果ってずっと掴みどころがないと感じていました。しかし、そんな職種は他にも山ほどあって、様々な指標を参考にすれば、成果めいたものは定義づけられそうです。
個々人に動いてもできることなどたかが知れています。いかに組織として共通の成果に目を向けられるか、そして、それに一緒になって進めるかどうか。まずは、それを実行するので組織として第一の目標であって、それを実行する本人が納得するかどうかは次の問題ではないかと思います。 -
尊敬する上司に紹介してもらった本第2弾。いわゆる働き盛りの中堅が、いきなり子会社の社長に抜擢され、七転八倒しながら成長していくストーリー。第1弾に続き、小説チックに経営とは何ぞやを学べる。金言が多いので、2つたけピックアップ。
不振が深刻化し、ダメ症状が出始めたら…
『「弱いところを直そう」は悪手、「残された強みは何か」ということだけを考えて、その強みを利用して救える部分だけを引っ張りあげることだけにひたすら集中する。
全ての経営者に送る…
『失敗したっていいじゃないか。日本中で増殖してしまった評論家たち、つまり自分はチャレンジをせずに他人の評論ばかりをしている連中が何と言おうが、失敗しても前に進み続ける者の方が、たとえ失敗してもよっぽど立派じゃないか。』 -
30代後半の今、やはり厳しいチャレンジをしていかないといけないな、と思った。
この本の主人公のように「自分の人生、これでなんとかなりそうだ」と感じられるような苦しさを乗り越える経験を積むことが必要なんだろう。
前作に比べ、戦略論的な部分は少なかった印象。
その分、小説部分が面白かった。
少し量が多かったけど、一気に読み終えることができた。
オレももっともっと頑張ろう。 -
新米の経営者が直面する様々な試練が小説形式で面白く分かりやすくコンパクトにまとまっている。どの試練もとても共感でき、また、解決への道筋に示唆を与えてくれる。
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