- Amazon.co.jp ・電子書籍 (418ページ)
感想・レビュー・書評
-
1993年初出の浅田作品ですね。戦争の無意味さと如何にもありそうなお宝話と女学生たちの一途さなどが盛られた小説で 懐かしいような少し古めかしいような浅田さんらしい作品です。回顧部分のほうが現代部分より勝っていますよね♪
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
年の瀬の競馬場。
全財産を会社の運転資金のために賭けようとする男がいる。
購入締め切りまであと10分。
絶対の自信を持って列に並ぶ男。
ところが列の前に並んでいた老人がもたもたしているうちに、締め切り時間になってしまった。
買うはずだった馬券。
予想は大当たりで万馬券になったが…。
老人のおごりでやけ酒を飲んでいたら、古い手帳を渡され、老人は心臓発作で亡くなってしまう。
老人は何者なのか。
手帳に書かれていることは、一体。
老人=真柴司郎の手帳の謎を解き明かしていく現在のパートと、昭和20年8月10日から戦後復興の頃を書いた過去のパートが交互に語られる。
圧倒的に過去パートの方がいい。
秘密の任務を遂行する3人の軍人。
若きエリート将校の真柴、大蔵官僚から軍に出向していた小泉。たたき上げの軍曹。
立場は違えど、命を懸けて作戦を遂行する姿勢が実に真摯。
どう頑張っても勝てるはずのない戦争を、されでも降伏を是としない軍部のクーデター。
実体のない国の面子にこだわり、死ぬために闘い続ける。
真柴たちは、戦後復興のための資金を秘密裏に隠す。
時が来るまで隠し通すことが、任務なのだ。
命令した5人と実行した3人しか知っていてはならない秘密。
しかし、財宝を隠すために集められた20人の勤労奉仕の少女たちの運命は。
真柴の、小泉の、愚直なまでの誠実さが苦しい。
命令違反はできない。
だけど非人道的なことも出来かねる。
これは戦争なんだ。
いや、もう戦争は終わったではないか。
事実として、そんな隠し金などなくても日本は短期間で復興したわけで、日本人の集中力だったり向上心だったり勤勉さが、まさに「日輪の遺産」なのだろう。
あの時代を美化するとか、戦争を賛美するというのでは全然なく、真柴や小泉の行動が胸を打つ。
軍人として死にたかったのに、任務を全うするために歯を食いしばって生き続ける真柴。
大蔵官僚として国の復興のために力を尽くしたかったのに、出来なかった小泉。
軍曹だけが、私の中では戦中と戦後がつながらなかった。
一応彼も「日輪の遺産」を守り続けていたわけだけど、どうしてあんな人になってしまったのかわからない。
少女たちの決意。
マッカーサーの決断。
書き込みすぎると陳腐になるところを、言葉足らずなくらいの描写にとどめているのはさすが。
抒情的になりすぎず、解釈に頭を使う余地があるところがよかった。 -
2017_10_19-93
-
旧日本軍が終戦間際に残した莫大な財宝に関する話。いわゆるM資金。
今まで読んだものと違って殺伐とした展開はなく、隠した経緯等の回想シーン中心。ラストも戦争中の悲劇を美談にまとめたかんじ。 -
まさに浅田次郎らしさのある作品で、小説の世界にぐいぐいと入り込める。