勝手にふるえてろ (文春文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「蹴りたい背中」が私のなかで不発で、しばらく積読していた本作。
    早く読まなかったことを後悔した。
    とっても面白かった!

    表現力、言葉の使い方がユニークで(ちょっと川上未映子みがある)、読み始めはうまく何が起きているのか、どんな主人公なのか掴めないんだけど、情景から心情や主人公のへそが曲がったところとかがジワジワ浮かび上がってくるのが読んでいてとても気持ちがいい。にやけてしまう。

    読者は、(いわゆる、オープンになっていないひと昔まえの内向的な)オタク歴が長く、間が悪く、思い込みが激しい主人公目線からものをみることになるので、コイツやなヤツだな、とか素敵だなとか、つい、主人公と一緒になって思ってしまう。とても上手い。
    一歩下がって俯瞰するとおかしいことに気づけそうなものなのに、それができない。
    してやられた。振り回されてもはや清々しい。

    綿矢りささんは、ストーカーを描くのが好きなのか?と思ってしまったけど、他の作品にも出会ってみたくなりました。


    後半に収録されている「仲良くしようか」は抽象表現が多すぎて、最後までほとんどわからない詩のような文章体だったけど、言葉の使い方が面白くてあっさり読めてしまった。

  • 珈琲店タレーランでも感じたこと。
    どんな小さな行動でも言動でも、理由がある。
    「あれは悪意だった・・・」
    とても難しい環境に置かれているけれど、よく考えてこの結論に達しています。善意があるなら、ほんとうの友達ならあり得ないですね。距離を置くことも仕方のなかったことなのでしょう。
    イチとニも気になったけれど、↑についてもとっても気になったのでした。逆の立場で考えてみるとやっぱりあり得ない。理由(目的・狙い)は何だったのか、二なのか?そんなに魅力的ではないけれど。。。と考えていくと面白い。

  • 綿矢さん初読み。

    おたくの江藤良香に押しの強い彼(二)が現れる。

    中学の頃から想っていたイチとヨシカを想う会社の同期の二。
    ヨシカはどちらを選ぶのか……

    主人公のヨシカのキャラが苦手で読むのに手こずった。キュートな恋愛小説とは?となった。

  • 面白くて一気読みでした。妄想に生きる女子の恋愛小説。
    といってもキラキラした可愛らしいものでなく、中学時代からの妄想に基づく片思いを抜け出せないまま、大人になり、ずっと恋人もいないままアラサーになったOLが主人公。
    そんなタイミングで同期の男「ニ」に告白され、若干舞い上がるも、片思いの中学時代の同級生「イチ」を忘れられず。そんな日常で死にかけたことをきっかけに、一念発起して片思いの男に会う為同窓会を開く、、

    ヨシカは結局捨てきれずにずっと生きてきた、捨てなきゃいけないものも含めて。
    それで抱えきれず色んなものをこぼし、遠回しに自分が傷ついてきたんだと思います。
    思春期の妄想癖とコンプレックス、それを捨てきれず「いい歳」になり、わがままな自尊心との間で動けなくなった姿。どうにもならなくなって会社に、周りに嘘をついて、捨てる寸前になって、その醜い自分に気づき、それでも手を差し伸べてくれる人がいることを知る。
    繊細すぎる(これも実は妄想なんだけど)イチへの想いと、「勝手にふるえてろ」とその妄想を捨てる決意をする場面の転換。
    自分を見直し、現実と向き合う決意ができた、ヨシカはとてもいい「ズル休み」の使い方をしています笑

  • 学生時代読書経験が少なかったからなのか感受性が今より鋭敏だったのかよくわからないけれど読後「うわぁ〜良かったぁ〜」と深く感動したのを覚えている。

  • ひー!と声に出してしまいそうなくらい狂人に片足突っ込んだ被害妄想女が主人公だった。

    恋愛経験なし、学生時代は片想いの男子を主人公にした漫画をひっそり描いていた所謂陰キャの26歳経理の主人公。
    会社の同僚に告白された事をきっかけに、今も思い続けている学生時代の初恋の彼とどちらを選ぶか迷い右往左往する。

    被害妄想が凄い!でも少しでも主人公と似た所がある人間なら、自分を傷付けたい時に凄くオススメの小説かもしれない。

    特にイチ君に名前覚えられて無かったシーンや、勢い余って妊娠したと嘘をついて休職したものの誰からも連絡が来ていなくて自分から電話をかけるシーンなどは凄く良かった。

  • 映画を見て原作が気になり読んだ。内容はほぼ映画と同じ。

  • 人間の醜い描写をまるっと書いてて、共感することもあるし、驚愕することもあるしで非常に面白い作品でした。なにより心情描写が面白い。

  • 勝手に自分はイチか二か感情移入しながら読んだ。始めは二だな俺って思いながら読んでたけど、最後らへんは俺はイチだったんじゃないだろうかと思うようになった。勝手にふるえてるだけなのかも。二の覚悟が俺にはないから。
    でも性は違えど、女性の主人公にも共感できる。どの登場人物にも感情移入できる作品だ。

  • 虚構の域にまで理想化されているが実際の関わりはほとんどなかった高校時代の同級生への淡い初恋と、嫌悪感を感じるほど俗人的だが自分に愚直な好意を示してくれる会社の同僚との間で揺れ惑う主人公の心が、とてもリアルで生々しい恋愛小説。ストーリーはもちろん、葛藤や心情の吐露がほどほどに詩的ででも気取りすぎてなくて、読んでいてとても心地よかった。妥協や諦めと端的にまとめることもできてしまう「高い理想ではなく現実的な相手に愛情を見出すようになるまで」が、優しくあたたかな一編の曲のように紡がれている。この作者さんの文体、好きだ。

    「私はつめたい大理石のうえに寝そべり、石の表面に自分の体温がほんのりと移っていくようにニのことを好きになるかもしれない」

    さぁ私は、愛してもいない人を愛することができるのか? ううん違う、私はいままでとは違う愛のかたちを受けとめることはできるのか?

    最後の最後でイチとニという仮称で呼ばれていたうちの片方が本名で書かれるところ、モノクロの世界に色がついたような演出で上手い。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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